明確な意志こそが業界内でのエッセンス。「ホンネトークVOL.02」ではスポーツビジネスパーソン必携の要素が浮き彫りに

パ・リーグ インサイト

2018.7.5(木) 17:00

(C)PLM
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憧れたスポーツビジネス業界への転職はゴールではなく、あくまで道の半ば。国内初のスポーツ業界合同中途採用イベント「パ・リーグ キャリアフォーラム」では、登壇者の力強い語りに熱を帯びた初回(詳細はこちら)に引き続き、「ホンネトークVOL.02」の舞台でも各スポーツ界の関係者が意見を交わした。前職で培ったスキルを活用するための、具体的なステージはイメージできているだろうか。「即戦力」としてのビジョンに基づいた行動力が、新たなフィールドでは求められることになりそうだ。

――前回に続いて、スポーツの世界へ転職された5名に登壇していただきました。実際にスポーツチームの現場がどのようなものか、まずは自己紹介からお願いします。

長谷川泰伸氏(株式会社千葉ロッテマリーンズ):マーケティング部チケット・ファンクラブグループで、チケット企画の仕事をしています。前職は電機メーカーで、法人営業の仕事をしておりました。IT寄りのシステムを自治体に販売していたのですが、現在はコンシューマービジネスへの転身で、まったく別の仕事になります。前職を8年務めてから30歳で転職し、現職は1年と少しになります。

阿部優輝氏(オリックス野球クラブ株式会社):企画事業部企画グループとリテール営業部ファンクラブグループを兼務しています。前者では新規企画の立ち上げや既存事業のブラッシュアップなどを行い、後者ではファンクラブの現場運営や設計などをしています。前職は百貨店の食器・台所用品担当として、売り場で商品を売っていました。

佐藤克明氏(株式会社横浜ビー・コルセアーズ):ビジネスオペレーション部MD担当ということで、オフィシャルグッズの企画、生産、販売、管理等を含めて全て行っております。前職では大手ECサイトでWEB広告を販売する仕事でした。元々は野球関係の仕事がしたくて前の会社に入ったのですが、現在はバスケットボールの仕事をしています。

江島彰弘氏(一般社団法人Tリーグ):10月に開幕する卓球の新リーグを運営する会社のリレーション部という部署で、チームとメディアに関係する仕事をしています。わかりやすく言うと、広報が含まれている部署になります。元々は広告代理店でも働いていたのですが、長く勤めていたのがbjリーグというプロのバスケットボールリーグでした。当時はリーグの立ち上げに携わり、今回も新しい卓球のリーグを創設することになりました。

安田眞未氏(株式会社栃木ブレックス):WEB制作として現在はHPの更新や画像の作成を行い、広報としてSNS担当も兼ねています。前職では、テレビ局で番組のタイトルデザインやオープニングデザインを担当していました。

既存スキルの深化と、規則的ではないスケジュールへの適応

――多くの業種から転職経験者に集まっていただいたので、まずは用意したテーマの「活かせるスキル、身につくスキル」からお願いします。

阿部氏:前職は百貨店での仕事でしたので、「お客様視点」を勉強してきました。プロ野球の特にファンクラブの部門は、同じく対個人のお客様商売です。お客様が何を求めているのか、何をして欲しいのかを考えて、お客様の需要に応えていく。そうした部分が活かされているのではないかと思います。現在は、百貨店よりも幅広いファンの期待に応えなければならないのが、大きな違いです。

安田氏:SNSを担当していると、まずは流行に敏感になります。テレビ局ではプロデューサーからの要望に沿う形でしたが、現在は他と比べてもチームが小規模なので、自ら考えて制作しなければなりません。

長谷川氏:相手を納得させるための準備や段取り、コミュニケーション力などは、組織の中にいる限り、どのような仕事をしていても同じかなと思います。今の仕事に就いてからはBtoCを始めたので、データ分析や、その分析を基に仮説を立てることなども勉強しています。

江島氏:リーグ立ち上げにあたり、0から1にしなければならないので全てを決めなければいけません。試合の見せ方から、チケット・グッズの価格なども含めて、今までなかったものを作らなければならないのが大変です。前例踏襲もできないのですが、逆に自分がやりたいと思ったことは仲間と話し合った上で実現出来てしまうのが、やりがいだと思います。Jリーグ創設当時の映像はよく見るので、リーグ内で話をしていても「ああいう風になるんだから、恰好悪いことはできないぞ」と。

――実際の「1日の過ごし方」はいかがなのでしょうか。

阿部氏:毎日、違う仕事をしていると感じます。特に試合がない日とある日、オフシーズンとシーズンに入ってからでは大きく違います。試合のない日はデスクワークが中心で、試合のある日はナイターゲームであれば、昼から出勤します。運営のミーティングに参加して、お客様の入りの様子を見て、イレギュラーにも対応したり。とにかく動き回るので、万歩計が凄いことになっています(笑)

佐藤氏:はっきりとオフシーズンがあるのは選手だけですね。フロント側の人間は、オフシーズンこそ忙しい。当然、次のシーズンに向けて、営業であればスポンサー営業、広報であればイベントがあり、グッズ担当もシーズン終盤には来季に向けて動いています。シーズンをこなしながら来季のことにも取り組むので、朝から晩まで走り回っています。

――プロスポーツには全国への遠征がありますが、同行されるのでしょうか。

佐藤氏:セクションによって違いますが、私の場合はホームゲームでの業務がほとんどです。関東近郊のチームと一緒にグッズを売るときなどは帯同します。

阿部氏:ファンクラブグループに所属しているので、ビジター応援デーなどで他球団の主催試合球場にお邪魔することがあります。

――プロ野球は特に試合数が多いと思いますが、週2日は休めるものでしょうか。

長谷川氏:シーズン中は基本的に月曜日が休みです。土曜日、日曜日は試合があったら働いて、試合がなかったら休み。シーズンオフになると、土日が休みになります。

――他の競技も、シーズンオフは土日が休みになるのでしょうか。

(登壇者4名がうなずく)

魅力に溢れる現場が転職者に求めるのは自立心と実行力

――「他競技・チームのここがうらやましい」という要素はありますでしょうか。

江島氏:今までお客様のために何かをすることがあまりなかった競技でして、グッズも定番の物が3、4種類ほど置いてある程度です。そうした部分は他リーグを参考にして、新しい物を作っていきたいと思っています。

佐藤氏:Bリーグは生まれたてのリーグであり、規模も小さくて、プロ野球やJリーグにはまだまだ及びません。ですが、グッズ担当者としての理想は「ニューヨーク・ヤンキース」です。チームやMLBのことを知らない女子高生が、街中で「NY」のロゴが入ったリュックを背負ったり、キャップを被ったり。ファッションとしてとり入れられていることが、日本でも成り立っている。これが理想だと思っていて、バスケットボールチームとして世界に出ていくために、グッズであればブランドとして東南アジアなどに進出できる可能性があります。そこが最終的な目標です。

――トークテーマのいずれか、あるいはこの業界に関心を持って集まった方々へのメッセージなど、一言ずつお願いします。

長谷川氏:「ここが自慢」ということでは、自分が企画した事案が新聞やニュースなどに載ったりして。友達に自慢できるのは、スポーツ業界の魅力だなと思います。

阿部氏:「選手との関係」については、密に接するかどうかは部署にもよります。ファンクラブグループとしては、昨年のドラフト1位で入団した田嶋大樹投手の本拠地デビュー日に、ファンへポスターをプレゼントする企画を考えました。そのポスターデザインを、広報の方を挟んで田嶋投手と直接話し合いながら作ったという絡みがありました。

佐藤氏:私も数年前までは、スポーツの世界で何とか働きたい思いを持って過ごしていました。最近はスポーツ業界へ入るための相談も受けるのですが、「とにかく携わりたい」ということをよく言われます。こちらとしては「何か携わりたい」より、「あれがしたい」「これができます」と言ってもらった方が答えやすい。ですので、この業界を志す方には「何がしたいのか」「どういったことができるのか」を突き詰めてもらうことが、入り口になるのではないかと思います。

江島氏:会社ではなく卓球界に「入ってみて驚いたこと」ですが、お客さんへの意識が十分ではなくて、競技会に近い運営をされていたように見えました。私はバスケットボールの世界から来て、これから卓球を売り出そうとしていますけども、売り出し方はバスケットも卓球も同じです。他のものでも一緒ではないかと感じますので、イベントに参加されている方々も、今の仕事のスポーツ界に生かせることがあるのではないでしょうか。逆にこちらが「そんな方法もあるんだ」ということもあると思いますので、提案型で来ていただければと思います。

安田氏:男性が多い業界ですので、女性ならではの意見というのはすごく重要です。リンク栃木ブレックスは女性ファンが3対7ほどの割合で多いので、SNSにアップする画像なども格好いいと思えるものは女性の方がわかる。女性ならではの目線でファンが、欲しい情報を伝えていくことが大切です。



スポーツシーンもサービスの多様化に伴い、必要とされる職種と能力は細分化が進んでいる。現場のニーズが増えている分だけ、前職との公約数を探し出すのはそれほど困難ではなさそうだ。だからこそ、自分だけの武器が、より重宝される時代とも言える。新天地では、持ち前の能力に磨きをかけることがあれば、新しい能力を開拓する機会にも恵まれるかもしれない。いずれにしても土台と成すのは、業界への強い動機付けであるのではないだろうか。

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