今季と同じく2014年も、「10月2日」がペナントの行方を決める日となった
2022年のパ・リーグは、リーグ最終日の10月2日にオリックスが逆転優勝を飾るという劇的なかたちで決着した。1位のオリックスと2位の福岡ソフトバンクの成績は76勝65敗2分けと全くの同率で、直接対決の結果によって順位が決まるという、史上稀に見る大接戦だった。
今からさかのぼること8年、2014年シーズンにおいても、オリックスと福岡ソフトバンクは激しい優勝争いを繰り広げていた。同年は直接対決で福岡ソフトバンクがオリックスを下して優勝を勝ち取ったが、その天王山が行われたのは偶然にも、今季の優勝チームが決まった日と全く同じ、「10月2日」という日付だったのは運命的だ。
今回は、そんな2014年に一軍の試合で出場した経験を持ち、今シーズンに至るまで両チームに在籍してきた選手の顔ぶれを紹介。運命の一戦が「10.2決戦」と形容されるほどのドラマを生んだ、8年前のペナントレースを体験した選手たちの当時のプレーぶりを、今だからこそ振り返っていきたい。
当時から在籍する5名の投手は、いずれも長年にわたってチームに貢献
まずは、福岡ソフトバンクの投手陣について見ていこう。
森唯斗投手は2014年がプロ入り1年目だったが、58試合に登板して防御率2.33と安定した投球を披露。新人ながら勝ちパターンの一角に加わり、24ホールドポイントを挙げた。また、プロ3年目だった嘉弥真新也投手も32試合に登板。40試合で防御率2.32を記録した前年に比べるとやや数字を落としたが、貴重な左の中継ぎとして奮闘した。
現チームのエースである千賀滉大投手の当時の持ち場は中継ぎで、前年には51試合に登板して防御率2.40、奪三振率13.58と見事な活躍を披露。2014年は故障の影響もあって19試合の登板にとどまったものの、防御率1.99、奪三振率11.12と、登板した試合では優れた投球内容を見せていた。
武田翔太投手も故障の影響で登板はキャリア最少タイの7試合だったが、先発として防御率1点台を記録し、戦線に復帰した終盤戦には抜群のピッチングを展開した。また、東浜巨投手はシーズン途中までは先発、終盤戦からポストシーズンにかけては中継ぎを務め、防御率3点台と一定の数字を残して、翌年以降の飛躍に繋げている。
当時から主力を務める選手に加え、育成出身の若手もチームの柱へと成長
次に、福岡ソフトバンクの野手陣の顔ぶれを確認していきたい。
野手では今宮健太選手と柳田悠岐選手が全144試合に出場し、中村晃選手も143試合とほぼ全ての試合に出場。今宮選手はパ・リーグ歴代最多タイの62犠打を記録し、自身初のベストナインと2年連続となるゴールデングラブ賞をW受賞した。柳田選手は自身初の規定打席に到達して打率.317、33盗塁と活躍し、翌年のトリプルスリー達成の礎を作った。
中村晃選手はトップバッターとして安定した活躍を見せ、2年連続の打率.300超えに加えて、自身初タイトルとなる最多安打にも輝いた。松田宣浩選手は故障で規定打席には到達しなかったものの、キャリア最高の打率.301を記録。そして、優勝を決める10月2日の大一番では、チームに劇的な優勝をもたらす値千金のサヨナラタイムリーを放っている。
2022年限りで現役を引退する明石健志選手は、内野の全ポジションをこなせるユーティリティとして93試合に出場。ポストシーズンではスタメンを張ってチームの日本一に寄与するなど、バイプレーヤーとして随所で活躍を見せた。高田知季選手は打率.300を記録しながら、厚い選手層に阻まれて出場は12試合のみ。育成出身の牧原大成選手と甲斐拓也選手(当時の登録名は「拓也」)の2名も、まだ一軍定着は果たせていなかった。
当時からフル回転の2名のベテランは、今季も安定した投球を披露
続いて、オリックスの投手陣についても確認しよう。
平野佳寿投手はクローザーとして62試合に登板し、パ・リーグ史上初となるシーズン40セーブの快挙を達成。防御率こそ前年の数字(1.87)から悪化したものの、奪三振率は10.44と前年以上の数字を記録。現在と同様、当時も守護神としてフル回転の活躍を見せ、チームを支える存在となっていた。
比嘉幹貴投手も平野投手と同じく62試合に登板し、防御率0.79という抜群の投球を披露。ピンチの局面で登板してチームを救う火消しの役割を担い、自己最多の20ホールドを記録した。強力なブルペン陣の中でもとりわけ優れたパフォーマンスを発揮した投手の一人となり、名実ともにキャリアハイのシーズンを送った。
海田智行投手はチームの勝ちパターンが右投手に偏る中で、貴重な左腕として19試合に登板したが、防御率7点台と結果を残せず。それでも、この苦い経験を活かして翌年から2年連続で48試合以上に登板し、防御率2点台と好投。優勝争いに伴うフル稼働の反動で、主力が疲弊したブルペンを懸命に支えた。
当時を知る2人のベテランに加え、伏見選手も後に主力の座をつかむ
最後に、オリックスの野手陣の顔ぶれを紹介したい。
この年がプロ3年目だった安達了一選手はチーム最多の143試合に出場し、126安打、29盗塁、45犠打はいずれもキャリア最多の数字に。6月以降は機動力と小技を活かして2番打者として活躍し、守備範囲の広い遊撃守備でもチームに貢献した。その後も2016年に潰瘍性大腸炎を発症しながら主力として奮闘し、2021年からのリーグ連覇にも貢献している。
T-岡田選手は本塁打王を獲得した2010年以来、4年ぶりに20本塁打超えを達成。シーズンでは主に5番を務め、クライマックスシリーズでは年間32本塁打のウィリー・モー・ペーニャ氏に代わって4番も務めた。チーム内で2桁本塁打を記録したのはペーニャ氏、糸井嘉男選手、そしてT-岡田選手の3名のみ。貴重な長距離砲として、その存在は貴重だった。
現在は主力捕手としてリーグ連覇に貢献している伏見寅威選手だが、プロ2年目の2014年は一軍で1本もヒットを放てず。二軍では63試合で5本塁打、打率.310と活躍したものの、ベストナインとゴールデングラブ賞に輝いた伊藤光選手と、堅実な働きを見せた山崎勝己氏の牙城を崩せず。将来の飛躍に向けて、研鑽を積むシーズンとなった。
8年前の「10.2決戦」を知る選手たちは、今もなお両チームで躍動している
福岡ソフトバンクでは、森投手、嘉弥真投手、柳田選手、今宮選手、中村晃選手といった面々が、現在に至るまで一軍で活躍を続けている。また、当時から一定の登板機会を得ていた千賀投手、東浜投手、武田投手に加えて、当時はほぼ出番がなかった牧原大選手と甲斐選手も後に成長を遂げ、現在のチームの屋台骨を支える存在となっている。
オリックスでは平野投手と比嘉投手が好投を見せてリーグ連覇に貢献し、安達選手も難病と闘いながらベテランとしてチームを支えている。T-岡田選手も和製大砲として長年にわたって存在感を発揮し、伏見選手も現在は主力として活躍。2014年の激闘を経験した選手も徐々に少なくなってきたが、当時の経験をチームに還元するベテランたちは今も健在だ。
福岡ソフトバンクは2014年の激闘を勝ち抜き、その後も常勝軍団と呼ばれるほどの黄金時代を謳歌した。その一方で、オリックスは長きにわたる雌伏の時を経て、リーグ連覇を成し遂げるほどの強豪に成長した。そして10月12日から「パーソル CS パ」のファイナルステージにて両者が対決することとなる。8年前とは真逆の結果となった今年の「10.2」の原点としても、死闘となった8年前の記憶は、今も両チームの中に息づいているのかもしれない。
文・望月遼太
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