リーグ連覇を達成したオリックスだが、その道のりは決して平坦ではなかった
2022年10月2日、オリックスが2年連続となるリーグ優勝を達成した。だが、シーズンを通して一度もマジックを点灯させずに優勝した事実が示す通り、シーズン中に離脱者が相次いだこともあって、その道のりは決して平坦なものではなかった。
今回は、「先発投手」「リリーフ」「野手陣」という3つのセクションにおける、各選手の成績をもとに、今季のバファローズが見せた戦いぶりを振り返っていきたい。
昨季の主力投手たちに加え、復活の右腕とドラフト1位ルーキーが輝きを放った
まずは、2022年のオリックスにおける主な先発投手たちの成績を見ていきたい。
エースの山本由伸投手は、史上初めて2年連続で最多勝、最高勝率、最多奪三振、最優秀防御率の投手4冠を総なめにするという快挙を成し遂げた。6月18日の埼玉西武戦ではノーヒットノーランを達成するなど、今季も支配的な投球を披露。一人で10個の貯金をチームにもたらしたという点でも、連覇の最大の立役者の一人と言えよう。
昨季は13勝を挙げて新人王に輝いた宮城大弥投手は、2年目のジンクスに陥ることなく今季も2桁勝利を記録。投手としての能力を示す指標の「K/BB」は3.50を上回れば優秀とされるが、宮城投手は山本投手と同じく4点台という抜群の数字を残して成長を示した。
また、田嶋大樹投手は自己最多の9勝を挙げ、防御率も前年の3.58から2.66へと大きく改善。山崎福也投手も2年続けて防御率3点台中盤を記録し、今季のK/BBは3.37と一定以上の数字を記録した。計算の立つ左の先発投手が3名も存在する点が、オリックスの大きな強みとなっている。
それに加えて、昨季は故障に苦しんだ山岡泰輔投手が、今季は中盤戦まで防御率ランキングのトップに立ち、8月終了時点で防御率1.98と快投を披露。9月に防御率7.53と調子を崩したものの、最終的なK/BBも3.67と優秀。チームの状態が上がらない序盤戦に、山岡投手が果たした貢献は大きかった。
実績ある投手たちが安定した働きを見せる中で、ドラフト1位ルーキーの椋木蓮投手も鮮烈な輝きを放った。プロ初登板となった7月7日の試合で6回無失点と好投して初勝利を挙げると、7月20日の試合ではプロ2試合目にして9回2死まで相手を無安打に封じ込めた。9月末に受けたトミー・ジョン手術を乗り越え、再びマウンドで躍動する姿が見たいところだ。
序盤戦を支えた投手が離脱を強いられても、新たな投手がその穴をカバー
次に、主なリリーフ投手の成績を確認しよう。
昨季の優勝メンバーから28ホールドを挙げたタイラー・ヒギンス投手が抜け、まずは勝ちパターンの再構築が命題に。序盤戦で活躍を見せた新外国人のジェシー・ビドル投手が交流戦を境に調子を落とすと、5月からは近藤大亮投手がセットアッパーを務め、黒木優太投手と共にトミー・ジョン手術からの鮮やかな復活を示した。
近藤投手と黒木投手が新型コロナウイルスの影響で離脱を余儀なくされて以降は、今季途中に育成から支配下に昇格した宇田川優希投手が防御率0.81とブレイク。ルーキーの小木田敦也投手や5年目の本田仁海投手も台頭し、終盤の試合運びに安定感をもたらした。
その中でも、プロ2年目の阿部翔太投手が見せた活躍は出色だった。ルーキーイヤーはわずか4試合の登板にとどまったが、今季は44試合で防御率0.61、K/BB4.20と大躍進。22ホールド3セーブと勝ちパターンに定着し、10月2日のシーズン最終戦では9回を締めくくって“胴上げ投手”となった。
巧みな配置転換やベテランの奮闘も、シーズンを乗り切る原動力に
また、来日1年目のジェイコブ・ワゲスパック投手は先発ではやや安定感を欠いたが、リリーフに回ってからは198cmの長身から投げ下ろす快速球が大いに威力を発揮。山崎颯一郎投手もリリーフ転向後の10試合・15イニングで僅か1失点という圧巻の投球を見せるなど、個々の選手を見極めた適材適所の起用も光った。
また、長年にわたってチームを支えてきたベテランの貢献も見逃せない。比嘉幹貴投手は32試合で防御率1.77だった昨季に続いて活躍し、奪三振率10.13、K/BBに至っては12.00という驚異的な数字を記録。39歳で迎えた今季も、随所で卓越した投球術を見せつけた。
そして、抑えの平野佳寿投手は28セーブ、防御率1.57、K/BB3.50と優秀な数字を記録。新型コロナウイルスの影響で複数回の登録抹消を経験し、9月には2度のセーブ失敗を経験するなど終盤は苦しんだが、古巣復帰から2年連続でチームがリーグ優勝を果たした事実が、その存在価値を如実に物語ってもいるだろう。
山本投手という大黒柱をはじめ、主戦級の投手が比較的安定していた先発投手陣に比べて、リリーフ陣はシーズンを通して多くの変遷を経てきた。それでも、同じ投手の3連投を避ける先を見据えた運用と新たな選手の台頭により、見事にシーズンを乗り切っている。
離脱者が相次ぐ中で、大黒柱をはじめとする昨季の主力が意地を見せた
最後に、今季60試合以上に出場した野手陣の成績を紹介したい。
昨季は打率.301、32本塁打でホームラン王に輝いた杉本選手が不振に陥り、T-岡田選手も36試合で打率.149と絶不調に。それに加えて、新型コロナウイルスがチーム内で流行し、実績のない若手がスタメンの大部分を占める事態に陥るなど、序盤戦では非常に難しいやり繰りを強いられていた。
それでも、大黒柱の存在感は別格だった。吉田正選手は惜しくも3年連続の首位打者こそ逃したものの、打率.335(リーグ2位)、21本塁打(同4位)、88打点(同2位)と、打撃三部門全てでトップクラスの数字を記録。2年連続で最高出塁率のタイトルを獲得し、OPSもリーグで唯一1.00を超える数字を残すなど、圧巻の打棒で文字通りチームをけん引した。
昨季の主力組では、宗佑磨選手と紅林弘太郎選手がチーム最多の130試合に出場し、離脱者が続出する中で懸命にチームを支えた。福田選手は不振で二軍落ちも経験したが、9月30日にサヨナラセーフティスクイズ、10月2日には逆転打と最終盤に貴重な働きを見せ、連覇に大きな貢献を果たしている。
不振や離脱で綻びが生じかけても、文字通りの全員野球で最後まで乗り切った
捕手陣では若月健矢選手が打率.281と課題の打撃で長足の進歩を見せ、攻守にわたって昨年以上の活躍を見せた。伏見寅威選手もチーム最多の75試合でマスクを被り、盗塁阻止率.324と強肩を発揮。シーズン最終戦では2安打3打点と打撃でも存在感を発揮しており、昨季に続いて捕手の併用策が効果的に作用したといえよう。
また、中川圭太選手は過去2年間は打撃不振に陥っていたが、今季は自身初の規定打席に到達し、シュアな打撃でクリーンアップの一角を担った。頓宮裕真選手も本職の捕手ではなく一塁手として出番を増やし、時には4番を務めるなど自己最多の11本塁打と台頭した。
先述した2選手が調子を落とし、今季も堅実な働きを見せていた安達了一選手も故障離脱した9月には、西野真弘選手が月間打率.382と状態を上げてカバー。最後の最後まで、文字通りの全員野球を見せ続けた。
チームスローガン通りの戦いで、王者としての“チーム力”を見せつけた
今季のチームが掲げたキャッチフレーズは、『全員でW(笑)おう!!』。チームが一丸となって苦境を乗り越え、V2を達成した今季の戦いぶりは、まさしくこのスローガンに相応しいものだった。新たな戦力が次々と台頭して苦境を乗り越え、大逆転で歓喜のゴールテープを切った今季の戦いぶりは、王者が誇る“チーム力”を示すものだった。
文・望月遼太
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