常勝軍団の礎を支えた鷹のレジェンドが、退団を申し出た
9月28日、福岡ソフトバンクの松田宣浩選手が退団を表明した。一軍抹消の前日(9月7日)にチーム関係者から来季の構想外の話を受け、自ら退団を申し出た。ホークス一筋17年、不動の主軸として三塁のレギュラーを務め、常勝軍団の礎を築いてきた鉄人。球団史に残る活躍を見せてきた鷹のレジェンドが、志半ばでチームを離れる。
持ち前の豪快なフルスイングと「熱男」のパフォーマンスで、幾度となくファンを沸かせてきた松田選手。今回は、その球歴をあらためて紹介するとともに、松田選手が見せた数々の印象的な活躍について、パーソル パ・リーグTVの映像とともに振り返り、今後の進路を応援したい。
入団3年目にレギュラーに定着し、その後は不動の主力として活躍
松田選手は2005年の大学生・社会人ドラフト希望枠で福岡ソフトバンクに入団。入団から2年間は一軍定着を果たせなかったが、3年目の2008年にはキャリア最多の10本の三塁打を記録するなど、走れる長距離砲として存在感を発揮し、三塁手のレギュラーに定着した。
翌2009年は相次ぐ故障で46試合の出場にとどまったが、2010年にはケガで戦列を離れる時期がありながら主力として優勝に貢献。その後は故障の時期を除いて主力として活躍し続け、長きにわたってチームを支える存在となった。
とりわけ、2011年は統一球導入の影響で極端な投高打低となる中で、その影響を感じさせないバッティングを披露。リーグ2位の25本塁打を放ち、打率.282と確実性も向上。自己最多の27盗塁を記録するなど、異彩を放った。続く2012年には故障がありながら打率.300を記録するなど、統一球をほとんど苦にしなかった点は特筆に値する。
30代になってから更なる進化を遂げる、まさに“鉄人”
若手時代は故障に泣かされるシーズンも少なくなかったが、2011年、2013年、2015年は全試合フルイニング出場を達成。また、2014年8月から2020年9月まで6年以上にわたって休むことなく出場し、815試合連続出場という記録を達成。年を経るごとに故障に強い選手へと進化していった点も、松田選手の特異な点と言えよう。
また、自己最多の35本塁打を記録した2015年を筆頭に、32歳を超えてから3度のシーズン30本塁打を記録。2015年のホームランテラス設置に伴う打撃改造が奏功し、ベテランの活きに差し掛かってから長距離砲としての真価を発揮している点も、松田選手の飽くなき向上心の表れだ。
2020年以降は不振で徐々に出場機会を減らしていたが、2021年9月29日に通算300号本塁打を達成。あと169本となっていた通算2000本安打をはじめ、通算1000打点までは残り9、通算2000試合出場まで残り90と多くのマイルストーンを目前にしている。
ここからは、松田選手がこれまで残してきた記憶に残る活躍を、映像をもとにピックアップしていきたい。
伝説の試合でリーグ優勝を決めるサヨナラ打(2014年10月2日)
2014年シーズンは、福岡ソフトバンクとオリックスが最終盤まで熾烈な優勝争いを繰り広げた。この10月2日の試合は、勝てば福岡ソフトバンクが優勝、逆に負ければオリックスにマジック1が点灯するという、まさに優勝の行方を決める大一番となった。
運命の一戦は両チームともに一歩も譲らぬ接戦となり、同点のまま延長戦へ。そして10回裏、1死満塁で打席に入った松田選手は値千金のサヨナラタイムリーを放ち、パ・リーグ史に残る熱戦となったペナントレースにピリオドを打った。松田選手の17年間にわたるキャリアの中でも、このシーンは最大のハイライトの一つといえよう。
熱男ポーズの変遷(2015年)
今では松田選手の愛称の一つとなった「熱男」は、元々は2015年と2016年にホークスのチームスローガンとして用いられた単語だった。2015年当初にホームラン後のパフォーマンスとして取り入れた直後は現在とはポーズが異なったが、シーズンが深まるにつれて形が確立していったことがわかる、今となっては貴重な映像だ。
通算1500安打を本塁打で達成(2019年3月29日)
松田選手は2018年シーズンが終了した時点で通算1499安打と、節目の1500安打まであと1本に迫っていた。そして、2019年の開幕戦第1打席で、さっそくシーズン初安打となるソロ本塁打を放って通算1500安打に到達。通算1000安打に続いて節目の記録を本塁打で達成するところも、松田選手のスター性の表れといえよう。
通算3000塁打を本塁打で達成(2020年10月11日)
「塁打」という数字は取り上げられる機会こそ少ないものの、選手にとっては長年の活躍によって到達した金字塔の一つだ。甘く入ってきた変化球を逃さず捉えて4つの塁打を積み上げた松田選手は、これで通算3000塁打の快挙を達成。1000安打、1500安打、そして1500試合出場に続き、またしてもキャリアの節目を本塁打で飾ってみせた。
投手4冠を達成した山本由伸投手からシーズン6安打(2021年)
今や球界を代表するエースとなった山本由伸投手に対して、松田選手は2021年に好相性を示していたことをご存じだろうか。バットを折られながら安打を記録したシーンが2度も存在するなど、1シーズンで6安打を記録。山本投手の多彩な変化球を巧みにヒットコースに飛ばしている打席内容からも、松田選手が持つ優れた対応力が見て取れる。
三塁手としての出場試合数がパ・リーグ史上最多に(2021年06月10日)
松田選手は若手時代からベテランとなった現在に至るまで、キャリアのほぼ全てにおいて三塁手として出場を重ねてきた。三塁手としての出場数がパ・リーグ新記録となったのも、長きにわたって攻守にわたって一線級の実力を保ち続けたことの表れだ。
通算300号本塁打(2021年09月29日)
通算300号本塁打という記録は、長いNPBの歴史でも44人しか達成していない大記録だ。松田選手は38歳となった2021年に14本の本塁打を積み上げ、シーズン終盤の9月29日に快挙を達成。外角高めのストレートを強く振り抜いた一打は、松田選手が築いてきたキャリアを象徴するような力強い打球でもあった。
守備力の高さを示す2つの好プレー(2017年)
見た目としても派手な横っ飛び以外にも、松田選手の守備力の高さを示すシーンは数多く存在する。この動画に見られる球際の強さや、小フライに対する目測の合わせ方といったプレーにも、そうした松田選手の技術の高さが集約されている。
ネクストバッターズサークルや打席で見られたケンケンの動き
最後に、ネクストバッターズサークルや打席でのスイング後に見せる「ケンケン」のような動きをまとめた動画を紹介したい。豪快なフルスイングを信条とする松田選手ならではの動きは、そのパフォーマンスとともにファンの印象に残るものでもあった。
記録にも記憶にも鮮明に残る、文字通り「絵になる選手」だった
通算1831安打、301本塁打、991打点。815試合連続出場に、8度のゴールデングラブ賞。ホークス一筋17年間で記録してきたこれらの数字は、松田選手の貢献度を如実に物語るものだ。しかし、松田選手が残した功績は、それらの数字だけで推しはかれるものではない。
そのパフォーマンスに加え、勝負強い打撃と鮮やかな守備でもファンを喜ばせ、どんな時でもチームを熱く盛り上げてくれたムードメーカー。節目の記録の多くを本塁打で達成し続けたことも含めて、記録にも記憶にも残るような、文字通り「絵になる選手」だった。会見ではあくまでもNPB球団での現役続行にこだわると話した松田選手の、今後の去就にも注目したい。
文・望月遼太
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