虎から獅子へ。対古巣初登板となった埼玉西武・榎田投手の自己最多5勝目がかかった試合は、初回に出た指揮官の絶妙な采配が利き、勝敗を分けた。
埼玉西武は初回、阪神先発・藤浪投手から安打と敵失などで1死1,3塁とすると、打者・山川選手の4球目に1塁走者・源田選手と3塁走者・秋山選手が重盗を敢行。「足攻」で1点を先取する。さらに2死後にはこの日今季3度目となる5番に据えられたメヒア選手の「カードの勝ち越しと少しでも榎田投手の助けになるように」という思いのこもった左中間を割る適時打で追加点を奪い、初回からいきなり2点の先取に成功する。
榎田投手は27日の前回登板では4回5失点と試合を作れず、移籍後初めて先発では5回持たずに降板という投球。前回は変化球の制球に苦しんだが、この日は初回3者凡退の立ち上がりを見せる。
3回表のピンチは浅村選手・源田選手の堅守で併殺に仕留めると、ガッツポーズを見せるなどこの試合にかける思いがほとばしる。続く4回にも2人の走者を背負うが、決定打を許さず。5回にも死球と安打で得点圏に走者を進められるが、相手のバントミスなど拙攻にも助けられてスコアボードに「1」を灯させない。
榎田投手を援護したい打線は2回以降、150キロ超の直球主体の投球から変化球の割合を多くした藤浪投手をとらえきれず、追加点を奪えずにいたが、5回に金子侑選手・秋山選手の連打で1点を追加し、さらに第1打席・第2打席と大阪桐蔭高校の後輩の前に2三振を喫していた浅村選手が「最近打ててなかったのでうれしい」という5月30日以来の安打となる適時打。貴重な追加点を奪い、榎田投手に4点のリードをプレゼントする。
なんとか耐えしのいできた榎田投手だったが、6回に先頭からの連続四球で走者をため、中谷選手・陽川選手の連打で1点差に詰め寄られてしまう。
阪神時代ならば、ここで交代となっていたかもしれない。しかしマウンドを託され続けた榎田投手はそれに応えるように後続を封じ、同点のホームを踏ませず。かつてまでとは違う姿を見せる。
するとその裏、1死から制球を乱した藤浪投手から満塁の好機を作ったところで藤浪投手をマウンドから引きずり下ろすと、金子侑選手の2点適時打、浅村選手の押し出し四球、山川選手の3点適時二塁打などでこの回一挙6得点。姿を現した「山賊」が虎に襲い掛かり大きなリードを奪った。
その後は継投で阪神の追い上げを封じ、埼玉西武が交流戦2カード連続勝ち越しを決めた。今季自己最長に並ぶ7回を投げ切った榎田投手は、7回111球、3失点。2013年の4勝を超え、自身キャリアハイを更新するシーズン5勝目をマークした。
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