ホームランの減少で重要性が増大? パ6球団の「二塁打・三塁打を狙える選手たち」とは

パ・リーグ インサイト

2022.7.22(金) 22:29

北海道日本ハムファイターズ・石井一成選手(C)パーソル パ・リーグTV
北海道日本ハムファイターズ・石井一成選手(C)パーソル パ・リーグTV

打撃成績の大半が低下するなかで、大きく変化していない数字が2つ存在

 投高打低の傾向が強まる中で、各チームの打撃成績にもさまざまな変化が生じている。2021年のパ・リーグにおける打撃成績と、2022年7月10日の試合終了時点の数字を143試合に換算した数字は、それぞれ下記の通りだ。

2021年 パ・リーグ打撃成績(C)PLM
2021年 パ・リーグ打撃成績(C)PLM
2022年 パ・リーグ打撃成績(C)PLM
2022年 パ・リーグ打撃成績(C)PLM

 2021年に比べてリーグ全体の打率は低下し、143試合換算の本塁打数も130本以上減少。その影響で長打率も低くなったが、二塁打の数は143試合換算で36本の減少と、母数を考えれば微減といえる幅にとどまっている。そして、打撃系のスタッツが軒並み減少に転じる中で、三塁打に関しては、逆に20本ほど増える見通しとなっている。

 すなわち、良い当たりの打球がスタンドに届く可能性が低くなった一方で、グラウンド内に落ちたそれらの打球が、二塁打や三塁打になるケースが増えている、とも考えられる。そして、本塁打が少なくなったからこそ、二塁打や三塁打といった、“グラウンド内の長打”の重要性も、より高まってくるはずだ。

 そこで、今回はパ・リーグにおける「二塁打と三塁打が期待できる選手たち」について、各球団ごとに紹介していきたい。(※成績は7月10日の試合終了時点)

北海道日本ハム

 昨季はリーグ最下位だった打率が今季はリーグ4位、6球団で唯一100本未満だった本塁打もリーグ1位タイと、今季は打線が活発だ。リーグ2位となる20本の二塁打を記録している清宮幸太郎選手をはじめ、野村佑希選手が同3位の19本、松本剛選手が同5位の17本と、多くの選手が二塁打ランキングの上位に顔を出しているのが特徴的だ。

 さらに、三塁打ランキングにおいても、石井一成選手がリーグトップタイの6本を記録。2021年にリーグ最多の37二塁打を記録した近藤健介選手が、故障で約2カ月にわたって戦列を離れたにもかかわらず、二塁打・三塁打の双方でリーグ上位の成績を残している選手を輩出している。こうした傾向も、チーム全体で積極的な姿勢を共有していることの表れと言えよう。

東北楽天

 昨季は自身初の打点王に輝いた4番・島内宏明選手が、今季は二塁打部門でリーグトップの数字を残している。また、西川遥輝選手と浅村栄斗選手もそれぞれ12本の二塁打を記録しているが、チーム二塁打数がリーグ最下位であることを考えれば、そのうち約24%を一人で稼いでいる島内選手の存在は、とりわけ大きなものとなっている。

 チーム三塁打数もリーグ5位と現状では多いとは言えない数字だが、西川選手はリーグ5位タイとなる4本の三塁打を記録。また、小深田大翔選手と武藤敦貴選手も、それぞれ2本の三塁打を放っている。そのなかでも、わずか70打席で2本の三塁打を記録している21歳の武藤選手は、今後要注目の若手の一人と言えそうだ。

埼玉西武

 来日1年目のブライアン・オグレディ選手が、リーグ5位タイの17二塁打を記録。打率こそ.236ながら、11本塁打に加えて長打率.442と、チームに多くの塁打をもたらす存在となっている。また、外崎修汰選手も打率.223と不振が続いているが、二塁打に関してはリーグ8位タイの14本と、キャリア最多の27本を放った2019年に近いペースを記録している。

 三塁打の面では、源田壮亮選手がリーグトップタイの6三塁打を記録。故障で1カ月以上にわたって戦列を離れたものの、7月9日には1試合で2本の三塁打を放つなど、ここに来て大きく状態を上げつつある。また、外崎選手も今季は3本の三塁打を残しているだけに、リーグ連覇に貢献した二遊間の本格的な復調と、両選手の躍動に期待したいところだ。

千葉ロッテ

 昨季はリーグ2位タイの36本の二塁打を放った中村奨吾選手が、今季もチームトップ、リーグ7位の15二塁打を記録。しかし、2桁の二塁打を放っているのはその中村選手と、安田尚憲選手(11本)の2名のみ。三塁打に関してはさらに深刻で、ここまでチーム全体でわずか4本。リーグトップの233二塁打を記録した昨季とは、まさに雲泥の差となっている。

 そんななかで、5月末から一軍に復帰した荻野貴司選手が、32試合のみの出場で二塁打7本、三塁打1本と、持ち前のスピードを十分に発揮している。昨季は中村選手に次ぐチーム2位の33本の二塁打を記録した韋駄天の復帰が、チームに不足していた長打力を補うことになれば、チーム全体の数字もこれから是正されていく可能性は大いにありそうだ。

オリックス

 個人としてはリーグ10位の13二塁打を記録している中川圭太選手がチーム最多ながら、全体の二塁打数111本はリーグ3位。離脱者の多さによってメンバーの固定が難しかったことも影響しているだろうが、数字的に突き抜けた存在こそ少なくとも、12本の宗佑磨選手、11本の吉田正尚選手をはじめ、多くの選手が二塁打を記録していることがわかる。

 一方で、中川圭選手がリーグトップタイの6本、福田周平選手がそれに次ぐ5本の三塁打を記録。5三塁打以上の選手を2名擁するのは、12球団でもオリックスただ1チームだ。とりわけ、50試合・202打席と決して出場機会が多くはなかった中で、二塁打と三塁打のどちらもチーム最多の数字を記録している中川圭選手は、まさに出色の存在となっている。

福岡ソフトバンク

 今宮健太選手はリーグ2位の打率.299と打撃好調で、リーグ3位の18二塁打を記録。今季はここまで1本塁打と、2016年から4年連続で2桁本塁打を放ったパンチ力は見せられていないが、別のかたちでその長打力を発揮している。また、牧原大成選手と柳町達選手の2名も、それぞれ現時点では規定打席不足ながら揃って11本の二塁打を放っている。

 また、牧原大選手は三塁打数もリーグ5位タイの4本と、柳町選手も同7位の3本と、この2名は二塁打と三塁打の両方が多い。両選手の活躍によって、昨季リーグ6位の32二塁打を放った栗原陵矢選手と、2018年に歴代4位タイの14三塁打を記録し、今季は復活を感じさせていた上林誠知選手の長期離脱という痛手も、ある程度カバーできているといえよう。

本塁打も安打も少ないだけに、二塁打・三塁打の重要性は増す一方

 得点数リーグ1位の福岡ソフトバンクと、同2位タイの北海道日本ハムには、いずれも二塁打と三塁打の双方において、優秀な成績を記録している選手が多く在籍。従来のシーズンよりも安打と本塁打が生まれにくいだけに、二塁打・三塁打の重要性は、得点に直結するという意味合いにおいても、これまで以上に高くなっていることがわかる。

 投高打低と呼ばれる状況だからこそ、例年以上に輝きを増す打者たちもいる。今回取り上げた、二塁打や三塁打への期待値が高い選手たちの打席には、残るシーズンにおいても、ぜひ注目してみてはいかがだろうか。

文・望月遼太

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