「左に弱い」は過去の話。東條大樹が万能のセットアッパーへ飛躍を遂げた理由とは?

2022.6.10(金) 00:01 パ・リーグ インサイト 望月遼太
千葉ロッテマリーンズ・東條大樹投手(C)パーソル パ・リーグTV
千葉ロッテマリーンズ・東條大樹投手(C)パーソル パ・リーグTV

前年から様変わりしたブルペン陣にあって、出色の安定感を発揮している

 リーグ最多タイの28試合登板、同2位の15ホールド。この数字からも、そのフル回転ぶりがうかがい知れよう。千葉ロッテの東條大樹投手が、開幕から抜群の安定感を発揮。佐々木千隼投手、唐川侑己投手、国吉佑樹投手といった昨季のセットアッパーたちが苦しむ中で、昨季は不振で5試合の登板に終わった男が、見事にその穴を埋めている。

 東條投手は右のサイドハンドという特性を生かし、長年にわたって右打者封じの役割を担ってきた。しかし、今季はそうした前提条件を覆すようなデータが残っている点も興味深いところだ。今回は、「年度別指標」「左右打者別成績」「結果球における球種割合」という3つの項目をもとに、プロ7年目を迎えた東條投手の進化に迫っていきたい。(※成績は6月8日の試合終了時点)

2018年以降は右打者封じとして、一軍で存在感を発揮してきた

 東條投手がこれまで記録してきた、年度別成績は下記の通り。

東條大樹投手 年度別成績(C)PLM
東條大樹投手 年度別成績(C)PLM

 東條投手は桐光学園高校、青山学院大学、JR東日本とアマチュア球界の名門を渡り歩き、2015年のドラフト4位で千葉ロッテに入団。大卒社会人でのプロ入りということもあり、即戦力としての活躍が期待されていたが、プロ入りから2年間は結果を残せなかった。

 それでも、東條投手は2018年の終盤に一軍で登板機会を得ると、11試合で防御率1.54と好投。続く2019年はその勢いのまま一軍に定着し、鋭く曲がるスライダーを武器に右打者封じの役目を全う。自己最多の16ホールドを記録し、確かな存在感を示した。

 続く2020年も120試合と短いシーズンながら39試合に登板し、防御率2.54と前年以上の安定感を発揮。貴重な戦力としてチームの2位躍進にも貢献したが、2021年は3.1回で5四球と制球に苦しみ、わずか5試合の登板に終わる苦しい1年を過ごした。

 2022年は再び自らの立ち位置を確保するためのシーズンとなったが、開幕から好投を続けて序列を上げていき、1イニングを任されるセットアッパーへと成長。2018年の時と同様に逆境を跳ねのける活躍を見せ、あらためてブルペンの貴重なピースとなっている。

積年の課題だった制球面に、大きな改善の兆しが見えつつある

 次に、東條投手が記録した年度別の各種指標を見ていきたい。

東條大樹投手 年度別指標(C)PLM
東條大樹投手 年度別指標(C)PLM

 キャリア通算の奪三振率が8.34と、ピンチで三振を奪えるという点は大きな長所だ。その一方で、与四球率はキャリア通算で4.41と、明確な課題も示されている。右打者に対してボールゾーンのスライダーを振らせて三振を奪う、という配球を生命線にプロの世界を生き抜いてきただけに、見極められると四球となってしまうのは致し方ない部分でもあろう。

 しかし、今季の与四球率は2.36と、キャリア平均に比べて大きく改善されている。すなわち、ゾーン内で積極的に打者と勝負しているということでもあるが、それでいて被打率もキャリア平均を下回っている点は特筆ものだ。

 その結果、制球力を示す「K/BB」に関しても、今季は初めて優秀とされる3.50を上回り、4.00という素晴らしい水準に達している。キャリア通算の1.89という数字を大きく上回っているだけに、課題の制球面で向上が見受けられるのは明らかだ。自滅する割合を減らしつつ、相手に痛打を浴びるケースも多くはないという点に、東條投手の好投の理由の一端がある。

長年にわたって左打者を苦手としてきたが……

 続いて、直近の5年間における、東條投手の左右別成績を紹介しよう。

東條大樹投手 左右別成績(C)PLM
東條大樹投手 左右別成績(C)PLM

 2018年は対戦打数こそ多くはないものの、打者の左右を問わずに非常に優秀な被打率を記録。同年に防御率1.54という抜群の数字を残したのも納得と言えよう。ただ、続く2019年は、対右打率.228に対し、対左打率が.311と、大きな差が生まれていた。

 翌2020年も対左打者のほうが被打率が高いものの、前年に比べればその差は小さかった。また、対左における三振の割合が大きく増加し、左右どちらの打者からも三振を奪えるようになっていた点は注目に値する。

 2021年は右打者、左打者ともに被打率と四球のどちらも多く、不振に陥った理由が端的に示されていた。そして、2022年は対右の被打率が.326と従来よりも高いものの、対左の被打率が.196と劇的に改善。打数と三振数も対左のほうが多くなっており、首脳陣の起用法にも変化が生じているのがわかる。

 総じて対右の打数が多くなっていたのは、右打者対策としての起用が中心だったことの表れでもある。そんな中で、今季は左打者が並ぶ場面であっても送り出されるケースが増加。現在は相手の並びに関わらず7回に起用されており、右の変則派という従来の役割を飛び越え、1イニングを任せられる存在へと進化を遂げている。

速球の向上と新球の習得によって、投球の幅が大きく広がっている

 最後に、東條投手が活躍を見せた2019年と2020年、そして2022年における、結果球の球種割合を確認していきたい。

東條大樹投手 2019年結果球割合(C)PLM
東條大樹投手 2019年結果球割合(C)PLM

 東條投手の最大の武器といえば、なんといっても大きな変化を描くスライダーだ。2019年の結果球においても全体の半数近くに及び、決め球として多投していた。ストレートが占める割合は全体の約1/3で、スライダーとは逆方向に曲がるシンカーもしばしば使用。カットボールとチェンジアップの2球種の割合は、いずれも1%程度にとどまっていた。

東條大樹投手 2020年結果球割合(C)PLM
東條大樹投手 2020年結果球割合(C)PLM

 スライダーの割合が前年以上に増加し、全体の半数以上を占めた。また、シンカーも引き続きアクセントとして交えていた一方で、チェンジアップを廃して新たにシュートを使い始めている。スライダーと逆方向に曲がる球種のバリエーション増加が、前年よりも対左打率が改善されたことにもつながっただろうか

東條大樹投手 2022年結果球割合(C)PLM
東條大樹投手 2022年結果球割合(C)PLM

 スライダーの割合が、2020年に比べて約11%も低下。代わってストレートの割合が11%増加しており、速球で押す傾向が強まっている。変化の少ない速球はスライダーとは異なり、打者の左右を問わずに頼れる球でもある。対左打率が劇的に改善された理由の一つには、こうした速球の状態の良さが挙げられそうだ。

 また、新たにカーブを交えるようになったのもポイントだ。従来はスライダーとシンカーを用いた横の揺さぶりを主体としていたが、速球の割合が増したことに加えて、緩急をつけられるカーブをレパートリーに入れたことで、いわゆる投球の“奥行き”を使えるようになった点も、今季の成績向上につながっている。

対右打者の成績が従来に近づけば、さらなる好投も期待できる

 ストレートの質の向上と、新球カーブの修得により、課題だった左打者との対戦成績が向上。それだけでなく、キャリアハイの奪三振率を記録しながら与四球率を大きく改善し、投球術の変化で左右を問わずに三振を奪えるようになるなど、キャリアを通じた課題の多くに解決の兆しが見えている点が、東條投手の進化を端的に物語っている。

 ここから伝家の宝刀・スライダーの切れを活かして、右打者への被打率を従来に近いレベルまで戻すことができれば、さらなる好投も期待できるはずだ。対右のスペシャリストから、万能のセットアッパーへ。与えられた役割を堅実にこなしてきた仕事人にとって、今季はその活躍の幅を大きく広げるシーズンとなっている。

文・望月遼太

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