苦しんできた男が、復活のシーズンとできるか。福岡ソフトバンク先発の松坂大輔投手が25日、広島とのオープン戦に先発し、7回無失点。しかも相手打線を無安打に抑える好投でアピールし、開幕ローテーション入りに大きくアピールした。
7回2死、新井選手を二ゴロに打ち取りベンチに戻ると、ホッとしたような笑顔でナインと握手を交わした。102球。昨年のセ・リーグ王者に、安打を許さなかった。3回、先頭のペーニャ選手に四球。中盤前後で、制球が乱れてしまうことが多かった右腕。だがこの日は動じなかった。石原選手、岡田選手、安部選手を打たせて取り、切り抜けた。
直球は140キロ前後だったが、スライダーがコースに決まり、安定感があった。6回は3者連続三振。7回は三ゴロ、左飛、二ゴロすべて味方の好守備と、バックももり立て無安打投球でマウンドを降りた。試合後「オープン戦の最後の最後でいい形が出せた」と納得の表情。当初は5回の予定だったが、当然この内容であれば、と“延長"。「6回終わって 、『どうする?』と(首脳陣から)言われ『任せます』と答えたら、佐藤投手コーチが『じゃあいこうか』と。こういう形がシーズンでも出せればいいですね」と、振り返った。
メジャーから2015年に日本球界へ復帰し、福岡ソフトバンクでプレー。だが2015年の開幕前に故障すると、手術と長いリハビリが待っていた。2016年10月2日、楽天戦で2006年10月以来の日本での登板を果たしたが、1回を投げて3安打4四死球と散々な内容。そのオフにはプエルトリコに出向いてウインターリーグに参加するなど、かつて「平成の怪物」と言われた男がもがき苦しむ日々が続いた。
18日の埼玉西武とのオープン戦、右足に違和感を訴えて緊急降板。開幕は絶望的とみられたが、軽傷と判断されると、きっちりと今回の登板に状態を間に合わせた。もっとも当人は一定の手ごたえをつかんでいたようで「いいきっかけになりそうなボールがあって、それを出していければいいと思っていた」と、気持ちは切れていなかったようだ。
この日はWBCから帰ってきた内川選手、松田選手、新入団のデスパイネ選手がそれぞれスタメンに名を連ねた。内川、松田両選手は23日にアメリカから帰国し、24日は休養したが、疲れも感じさせずベンチでは笑顔も見られた。内川選手は昨年通り4番、柳田選手が3番に座り、千葉ロッテで4番を務めてきたデスパイネ選手は5番に。“熱男"松田選手が7番と、今季の軸となる選手がスコアボードに並ぶと、一気に厚みが増した。
松坂投手の好投に引っ張られるように、8回の五十嵐投手、9回の守護神・サファテ投手も無安打に抑え、3投手での“ノーヒットノーラン"が完成。オープン戦最後の本拠地で、駆け付けた鷹ファンを喜ばせた。
開幕投手の和田投手、WBCから戻ってきた千賀投手、武田投手、バンデンハーク投手らのローテ入りは確実で、東浜投手、攝津投手もいる。その中で首脳陣に嬉しい悩みを植え付ける、松坂投手の快投だった。
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