「投高打低」が10年ぶりの水準に? 今だからこそ、“2011~12年”を振り返る

2022.5.13(金) 00:00 パ・リーグ インサイト 望月遼太
東北楽天・田中将大投手、埼玉西武・中村剛也選手(C)パーソル パ・リーグTV
東北楽天・田中将大投手、埼玉西武・中村剛也選手(C)パーソル パ・リーグTV

リーグ防御率、リーグ打率の両方で、昨季とは大きく数字が変化している

 5月11日に福岡ソフトバンク・東浜巨投手がノーヒット・ノーランを達成したことが象徴するように、2022年のパ・リーグは、いわゆる「投高打低」と呼ばれる状況になっている。2021年のパ・リーグ全体の防御率3.48に対して、今季のリーグ全体の防御率は2.93。また、2021年のリーグ打率.241に対して、今季のリーグ打率も.231と、数字にも明確にその傾向が表れている(数値は5月10日時点)。

 ただし、パ・リーグにおいて投高打低の傾向が示されたシーズンは、なにも今回が初めてというわけではない。近年では、いわゆる統一球が導入されて間もない2011年と2012年において、NPB全体で極端な投高打低の状況が続いていた。

 今回は、その2011年と2012年における、パ・リーグの各種個人成績を紹介。「防御率」「打率」「本塁打数」の3つの部門におけるトップ10のランキングをもとに、今だからこそ、当時の状況をあらためて振り返っていきたい。

田中将大投手は2011年と2013年で全く同じ防御率を残したが……

 まずは、2011年と2012年の防御率ランキングを見ていこう。

2011年パ・リーグ防御率ランキング(C)PLM
2011年パ・リーグ防御率ランキング(C)PLM
2012年パ・リーグ防御率ランキング(C)PLM
2012年パ・リーグ防御率ランキング(C)PLM

 防御率1点台の投手は通常であればそう多くは生まれないものだが、2011年は4名、2012年は3名と、この2年間だけで7名がその領域に到達。また、防御率トップ10が全員防御率2点台以下という状況が、2シーズン続いていた点も特異な点だ。ちなみに、この前後の年で規定投球回に到達して防御率2点台以下だった投手の数は、2010年が4名、2013年が3名だった。

 個人成績としては、田中将大投手、武田勝氏、攝津正氏の3名が、2011年と2012年の2年続けて防御率トップ10入り。特に田中投手は2011年が1位、2012年が2位と、まさに圧巻の成績を記録していた。

 田中投手は2013年に24勝0敗という驚異的な成績を残したことでも知られるが、同年の防御率は1.27と、奇しくも2011年と全く同じ水準だった。しかし、防御率1点台の投手が4名存在した2011年とは異なり、投高打低の傾向が終わった2013年における「防御率1.27」は、まさに異次元の数字だった。そうした環境の違いが、シーズンごとの勝利数に反映されているのも興味深い点といえよう。

「投高打低」は打線の援護が少ないことも意味するが、意外と勝ち星は伸びる?

 リーグ全体の打撃成績が低下していたということは、裏を返せば、どの投手も打線の援護がさほど期待できなかったということにもなる。だが、防御率トップ10に入った投手のうち、2011年は10名中8名、2012年は10名中9名と、大半の投手が10勝以上を記録していた。

 また、負け越しを作ったのも2011年は1名、2012年は2名のみ。優秀な防御率を残しさえすれば、最終的に勝ち越しを作る投手が多かったのも特徴だ。2022年も好投を続けていながら勝ち星が伸び悩んでいる投手の数は少なくないが、2011年からの2年間と同様の傾向が表れるのであれば、そうした投手たちもシーズンが終わってみれば、2桁勝利や勝ち越しに手が届いている可能性は十二分にありそうだ。

2012年の首位打者は、パ・リーグ史上2番目に低い打率での戴冠に

 次に、2011年と2012年の打率ランキングを確認しよう。

2011年パ・リーグ打率ランキング(C)PLM
2011年パ・リーグ打率ランキング(C)PLM
2012年パ・リーグ打率ランキング(C)PLM
2012年パ・リーグ打率ランキング(C)PLM

 2011年と2012年の3割打者の数は、それぞれ5名ずつ(打率.2997の2012年・田中賢介氏を含む)。前後のシーズンではいずれも打率.300以上の選手が10人以上存在したことを考えれば、やはり打者にとっては厳しい環境だったことがうかがえる。

 また、2012年の首位打者に輝いた角中勝也選手の打率は.312。1950年のパ・リーグ創設後では、1976年の吉岡悟氏(打率.309)に次いで、リーグ史上2番目に打率の低い首位打者となった。

 しかし、その角中選手は投高の時代が終わった後の2016年に、打率.339という高打率を残して2度目の首位打者を獲得。これだけの数字を残せるだけの高い打撃技術を持つことを証明するとともに、2012年当時の環境が打者にとって厳しいものであったという事実も、あらためて示している。

 ただし、直近3年間の3割打者の数を見てみると、2019年が6名、2020年と2021年はともに4名。3割打者の数だけを見れば、当時と現在でさほど変化がない数字となっているのも確かだ。

2011年・2012年ともに、非常に珍しい事態が生まれる結果に

 しかし、2011年と2012年の本塁打ランキングに目を向けてみると、投高打低の度合いがより鮮明に浮かび上がってくる。

2011年パ・リーグ本塁打ランキング(C)PLM
2011年パ・リーグ本塁打ランキング(C)PLM
2012年パ・リーグ本塁打ランキング(C)PLM
2012年パ・リーグ本塁打ランキング(C)PLM

 2011年は中村剛也選手が、48本塁打という他を圧倒する数字を記録。この数字はパ・リーグ全体で記録された454本塁打のうち、実に10.57%を占めるものだった。同年のリーグ内本塁打の1割以上を1人の選手が放った事実が、当時の環境の特異さを端的に表してもいる。

 同年2位の松田宣浩選手も、25本塁打、OPS.854と、当時の状況を考えれば非常に優秀な成績を残していた。しかし、ランキング3位に入った2選手がいずれも20本塁打未満という状況は、近年のプロ野球では滅多にないレベルの低水準といえる。

 中村選手は翌2012年にも本塁打王に輝いたが、故障の影響もあり、前年から21本も本塁打を減らす結果に。この年は誰ひとりとして30本塁打以上を記録できなかった。これは、小久保裕紀氏が28本塁打で本塁打王を獲得した1995年以来、実に17年ぶりの事態となっている。

 また、2012年には2桁ぎりぎりの10本塁打の選手がトップ10に入ったことも、いかにリーグ全体の本塁打が少なかったかを証明している。2012年は打率・本塁打の双方で、前年以上に打低の傾向が進んでしまっていたと形容できよう。

圧倒的な打棒を見せる「おかわり二世」は、“元祖”と同様の成績を残せるか

 この期間における選手個人の活躍に目を向けると、やはり2年連続本塁打王という抜群の結果を残した中村選手の打撃は出色だった。そして、今季は同じ埼玉西武の山川穂高選手が、故障離脱もあり規定打席未到達ながら、ここまで22試合で14本塁打という驚異的なペースで本塁打を量産している。2年連続で本塁打王を獲得した頃の打棒が戻りつつあるスラッガーの打球に、あらゆる意味で要注目のシーズンとなりそうだ。

 スポーツ医学やセオリーといった観点も含めて、野球というスポーツは、この10年間においてさまざまな面で進化を遂げている。それだけに、最終的な成績が10年前と同様の傾向を示すのか否かも含めて、今季は野球ファンにとっては、非常に興味深いシーズンとなるかもしれない。

文・望月遼太

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