3月7日に開戦したワールド・ベースボール・クラシック2017(以下WBC)のプールBは、侍ジャパンが過去の大会から通して初となる1次ラウンド全勝を飾り、2次ラウンドへ駒を進めた。それでも選手が相好を崩さなかったのは、もちろんそこが今大会の目標ではないからだろう。加えて、プールBの3試合では手応えをつかみ切れなかったのではないだろうか。
侍ジャパンの強みが「投手力の高さ」であることは、常々そう公言している小久保監督のみならず、選手やファン、対戦チームを含めた多くの野球関係者が認める共通認識に違いない。それだけに、初戦の勝利は思い描いた理想とはかけ離れたものだったはずだ。侍ジャパンは5回裏に松田選手の3ランなどで大量5得点を奪ったが、7対1のリードを守りにマウンドへ上がった救援陣がピリっとせず。キューバ相手に点を取り合い、最終スコアが11対6と打ち勝つ展開は想定外だったのではないだろうか。
続くオーストラリア戦では、1回表に1番・山田選手と2番・菊池選手が幸先良く連打で出塁したが、後が続かずに無得点。1回表から4回表まで12者連続でアウトを築くことになった。試合は7回表に5番・中田選手のソロアーチで勝ち越し、8回表には4番・筒香選手の2ランで突き放して4対1でオーストラリアを破った。主砲2人の活躍は頼もしい限りだが、空中戦に持ち込んでの勝利はもちろん「ジャパンウェイ」ではない。
中国戦は先制、中押し、ダメ押しと小刻みに加点し、危なげなく勝利を収め、3戦目で侍ジャパンらしい野球が展開された。この一戦での収穫は、小久保監督が試合後の会見で口にしたようにこれまで起用できていなかった選手を試せたことが大きく、チーム全体で見ても、状態が上昇してきているように感じられた。
続く2次ラウンドの相手はメジャーリーグのタレントが複数名を連ねるオランダ、国際試合の雄・キューバ、1次ラウンドで旋風を巻き起こしたイスラエルと、相手にとって不足はない。「短期決戦は結果がすべて」である。だが、投手の能力を綿密に計算に入れながら戦うのが前提の侍ジャパンにとって、その結果を得るために重要なのはやはり中身だ。1次ラウンド以上に実力の拮抗したプールEを侍ジャパンが勝ち抜く鍵は「日本野球の日本化」になるのではないだろうか。大会優勝を果たした2006年、2009年はそれぞれ2次ラウンドの戦いを3試合で7失点、4試合で6失点にとどめて勝ち抜いた。強豪とのしびれるような僅差の争いを、最少失点でしのいで制す。自分たちの土俵でそれができた時、チームは自信と一体感を持ってアメリカへ進めるはずだ。
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