長期離脱していた選手の復帰は、チームにとっても大きなプラス要素に
不測の事態による主力の故障離脱は、往々にしてどのチームにも起こるもの。主力として計算していた選手の長期離脱は、首脳陣にとっても大きな誤算となってしまう。それだけに、そうした選手たちが万全の状態で復帰を果たせば、それだけチームにとっても大きなプラス要素となるはずだ。
今回の記事では、パ・リーグ6球団それぞれにおける、故障からの復帰が見込まれる選手を1名ずつピックアップ。それぞれの選手に期待される役割を紹介するとともに、2022年シーズンの復活に期待を寄せたい。
石川直也投手(北海道日本ハム)
石川直投手は山形中央高から、2014年のドラフト4位で北海道日本ハムに入団。入団3年目の2017年から中継ぎとして一軍で台頭を見せ、2018年には開幕からクローザーの大役を任された。調子を落として中継ぎに回る時期こそあったものの、シーズン終盤には再び抑えに復帰し、18ホールド19セーブ、防御率2.59とフル回転の活躍を披露。奪三振率も9.80と優秀な水準で、その投球が勝ちパターンでも十二分に通用することを証明した。
続く2019年は自己最多の60試合に登板して21ホールド5セーブを挙げ、奪三振率は12.42と抜群の数字を記録。若くして主力投手としての地位を固めつつあったが、2020年に右ひじを負傷し、トミー・ジョン手術を受けた。その影響で直近2年間は一軍登板がなく、2022年は再起を期すシーズンとなる。
昨年10月のみやざきフェニックス・リーグでは久々の実戦復帰を果たすと、3月23日のイースタン・リーグ公式戦では、復帰後初セーブをマーク。完全復活に向けて着々と歩を進めている。昨季は杉浦稔大投手に次ぐクローザー候補に乏しいチーム事情が顕在化していただけに、守護神の経験を持つ石川直投手が復活を果たせば、チームにとっても大きなプラス要素となるはずだ。
辛島航投手(東北楽天)
辛島投手は飯塚高校から、2008年のドラフト6位で東北楽天に入団。2012年に先発として一軍で台頭を見せて以降は、貴重な左腕として8年連続で10試合以上に先発登板。2013年には日本シリーズでも好投し、球団創設以来初となる日本一にも貢献した。翌2014年には自身初となる規定投球回にも到達するなど、先発陣の一角として長きにわたって奮闘を続けてきた。
2019年には自己最多の9勝を挙げるなど近年も活躍を見せていたが、2020年は防御率4.93で1勝止まり。続く2021年は故障の影響もあり、一軍登板は1試合もなかった。昨季はルーキーの早川隆久投手が9勝を挙げたが、それ以外の先発陣は大半が右投手だった。辛島投手が復帰を果たせば左の先発候補となるだけに、プロ13年目での復活に期待したいところだ。
若林楽人選手(埼玉西武)
若林選手は駒沢大学から、 2020年のドラフト4位で埼玉西武に入団。プロ1年目の2021年は新人ながら開幕直後からレギュラーをつかみ、4月上旬からは1番打者に定着していた。特筆すべきはその脚力で、44試合で20盗塁と圧倒的なペースで盗塁を量産。盗塁の足がかりとなる出塁率も.340と十分な数字であり、パ・リーグ初の「新人での盗塁王」も、十二分に現実味を帯びるほどのブレイクを見せていた。
しかし、5月30日に左ひざの前十字靭帯を負傷して手術を受けた影響で、残りのシーズンは全休に。盗塁王を獲得した4選手の盗塁数が24だったことを考えれば、故障離脱さえなければタイトル獲得の可能性は非常に高かったと言えよう。
今季のキャンプはB班スタートながら、2月20日に行われた阪神二軍との練習試合で実戦復帰を果たしており、完全復活への道筋は見えつつある。若林選手の離脱後も新たに外野のレギュラーを確保する選手は現れなかっただけに、今季こそは故障離脱することなくシーズンを戦い抜き、レギュラー奪取と盗塁王の栄冠に再チャレンジしてほしいところだ。
種市篤暉投手(千葉ロッテ)
種市投手は八戸工大一高校から、2016年のドラフト6位で千葉ロッテに入団。プロ2年目の2018年に一軍デビューを果たしたものの、0勝4敗で防御率は6点台とこの時点では一軍の壁に跳ね返された。しかし、2019年には球速が大幅に向上したことによって台頭を果たし、シーズン途中からは先発ローテーションに定着。プロ初勝利を含む8勝を記録しただけでなく、奪三振率10.41という数字を記録し、本格派としての豊かな才能を示した。
続く2020年も開幕から先発ローテーションに加わり、7月25日にはプロ初完封を達成。若きエース候補として本格ブレイクの兆しを見せていたが、8月に右ひじを痛めてトミー・ジョン手術を受けた。その後は現在に至るまで一軍登板がなく、2022年は復活をかけた1年となる。
1年以上に及んだリハビリを乗り越え、今年のキャンプではB班でブルペン入り。現在は実戦復帰に向けて、着実に調整を進めている最中だ。昨季の千葉ロッテは強力なリリーフ陣を原動力に優勝争いを演じたが、先発陣のやり繰りには苦しんだ。種市投手の復帰が、その課題を解決する可能性は大いにあるはずだ。
山岡泰輔投手(オリックス)
山岡投手は東京ガスから、2016年のドラフト1位でオリックスに入団。ルーキーイヤーの2017年から先発ローテーションに定着すると、順調にエース格へと成長を果たす。2年目の2018年には一時期リリーフに回ったこともあったが、3年連続で規定投球回に到達して防御率も3点台と、常に一定以上の投球を計算できる存在に。2019年には13勝を挙げて自身初タイトルとなる最高勝率賞を獲得するなど、主力投手としての地位を固めつつあった。
2020年は12試合で防御率2点台と投球内容こそ安定していたが、序盤戦でわき腹を痛めて長期離脱を強いられた。続く2021年も右ひじを痛めて長期離脱を経験するなど、ここ2年間はフルシーズンで投げることができていなかったが、SMBC日本シリーズ第5戦で約5か月ぶりのマウンドに立ち勝利投手となった。
今年に入ってからの活躍も怪我からの復帰を印象づけている。2月24日の埼玉西武との練習試合では、2アウト2、3塁のピンチを迎えるも2者連続三振に仕留め、2回無失点のピッチングを見せた。山岡投手が山本投手に次ぐ右の先発として復活を果たせば、投手王国と呼べるだけの先発陣の形成も現実味を帯びてくるだけに、今年のキーマンのひとりに違いないだろう。
ジュリスベル・グラシアル選手(福岡ソフトバンク)
キューバ出身のグラシアル選手は、2018年に福岡ソフトバンクに入団。来日当初は外国人枠の関係でレギュラーという扱いではなかったものの、一軍での出場機会を得てからはその実力を存分に発揮。NPB1年目の2018年終盤に主力に定着すると、続く2019年は規定打席未満ながら28本塁打を記録。キューバ代表への合流もあって103試合の出場にとどまったが、OPS.960という出色の活躍を見せ、同年の日本シリーズではMVPにも輝いた。
2020年は故障の影響もあり、前年に比べれば成績を落としたものの、主軸打者としてチームのリーグ優勝と日本一に貢献。そして、2021年は開幕から好調を維持していたが、5月に右手指を骨折して残りのシーズンを棒に振った。パワーと確実性を兼ね備えた助っ人の離脱は、チームがBクラスに転落する大きな要因の一つとなった。
それだけに、グラシアル選手が復活を果たすかどうかは、ホークスの浮沈にも大きくかかわってきそうだ。今季は2月上旬からキャンプに合流し、シート打撃や紅白戦ではさすがのバッティングを披露。オープン戦でも14試合で打率.353の成績を残すなど、仕上がりは順調だ。今季は代表戦による離脱の予定もないだけに、このまま怪我なくシーズンを乗り切ってくれれば、チームにとってもこれ以上ないプラス要素となることだろう。
大きな故障を乗り越えて復活する選手の姿は、見る者を勇気づけてくれるもの
故障によるプレーへの影響や、ブランクによる試合勘の欠如もあり、長期離脱した選手が、必ずしも以前のパフォーマンスを取り戻せるという保証はない。それだけに、大きな故障を乗り越えて見事に復活を果たす選手の姿は、見る者を大いに勇気づけてくれる。
今回取り上げた6名の選手たちも、故障に打ち勝ち、主力の座へと返り咲くことができるか。それぞれのチーム事情を考えても各選手の復帰は待望されるだけに、各選手にとっては2つの意味で「勝負の一年」となるはず。大怪我という試練を乗り越え、再び一軍の舞台で躍動する姿が見たいところだ。
文・望月遼太
関連リンク
・悲願のリーグ制覇へ残された課題。千葉ロッテの「2番打者」に定着するのはどの選手?
・来季以降は投手王国に? 北海道日本ハムの投手陣に大きな期待が持てる理由とは
・躍進のカギはブルペンにあり? Aクラス3球団に共通した「強力リリーフ陣」を振り返る
・今季新たに5選手が到達! 4000打数以上の現役パ・リーグ選手打率ランキングを見てみよう
・指名打者の有無はやはり大きい? 交流戦のホーム・ビジターでの成績の違いに迫る
記事提供: