1軍デビューの昨季は9本塁打、今季は「30本」が目標
酸いも甘いも経験した1年を経て、2022年を大ブレークのシーズンにする。プロ4年目を迎える千葉ロッテの長距離砲・山口航輝外野手は、今季の目標に「30本塁打」を掲げる。昨季は開幕スタメンに名を連ねて初の1軍出場を果たすと、78試合に出場して9本塁打20打点。クライマックスシリーズでも本塁打を放つなど、和製大砲として頭角を表した1年だった。
「まさかホームランを9本も打てるとは開幕前は思っていませんでしたし、自信になりましたけど、まだまだやらないといけないなと。今年は10本じゃ全然足りません」
昨季は悔しさを胸に臨んだ勝負のシーズンだった。一昨年、チーム内で新型コロナウイルスの感染者が出て、大量入れ替えとなった際に、同級生の藤原恭大外野手らが昇格して結果を残した。山口はファームでチームトップの7本塁打を放っていたが、1軍には呼ばれなかった。その悔しさが、昨季の原動力となった。
「あの時(1軍に)上がれなかった悔しさだけをずっと持ってやってきました。野球をやってきたなかで1番と言っていいくらい悔しかった」
昨春キャンプでは、松中信彦・元臨時打撃コーチからの指導もあって打撃に磨きをかけ、オープン戦でも「4番」に座って結果を残した。ペナントレース開幕戦に「5番・DH」で出場し、1軍デビュー。4月9日の埼玉西武戦(ZOZOマリン)では初本塁打も放った。
「あかんこと考えていた」昨季中盤にはファームでもがく
4月に4本塁打を記録したが、5月は15打数2安打と状態は下降線を描き、5月31日には出場選手登録を抹消された。そのまま、後半戦が始まるまで2軍暮らし。開幕時の思い切りのいいスイングは影を潜めていた。
「三振したくない、ゲッツーになりたくない、メンタル面で弱気になっていた部分がありました。打席の中であかんことを考えていたというか、そういう打席が多くなってきて、そこから調子が落ちたかなと思います」
鳥越裕介2軍監督からは「そうやって考えすぎるからダメなんだ」と声を掛けられ、思考をシンプルにするよう心がけた。「結果を考えずに、自分のスイングをしよう」。福浦和也2軍ヘッドコーチとは下半身主導のバッティングに取り組み、自分の間合いを徐々に取り戻した。東京五輪による中断期間中のエキシビションマッチでは2本塁打と結果を残し、後半戦初戦にはスタメンに返り咲いた。
後半戦はレオネス・マーティン外野手の怪我もあり、出場機会が増えて5本塁打を放った。楽天とのクライマックスシリーズ第1戦では右翼ポール直撃の本塁打を放つなど勝負強さも見せた。それでも「まだもうちょっとできたんじゃないかなという部分もあります。三振数だったり、調子の波が激しかったり、そういうところは今思えば修正できたかなと思います」というのが正直な感想だ。
今季は1年間、主軸としてチームを引っ張るつもりでいる。「1軍の試合にも出て、一昨年の悔しさはしっかりと晴らせたとは思います。今年は20本、30本と、高い目標を持ってやっていきたいなと思います。打率は.250くらい……(笑)。30本打っていればそれくらいの数字にはなっていると思うので」。秋季練習でも徹底的にバットを振り込んだ。昨年もがいた経験は、きっとシーズンで生きてくる。千葉ロッテの若き大砲は真の覚醒まで、もう少しだ。
○山口航輝(やまぐち・こうき)2000年8月18日、大阪府箕面市出身。21歳。小1から野球を始め、高校は秋田県の明桜(現・ノースアジア大明桜)に進学。高校では投手も務め、2年夏には県大会決勝で、金足農の吉田輝星(北海道日本ハム)に投げ勝ったことも。ただ牽制帰塁の際に右肩を亜脱臼し、甲子園では登板なしに終わった。3年夏も秋田大会決勝で金足農と対戦するも敗退。2018年のドラフトで4位指名を受け入団。183センチ、97キロ。右投げ右打ち。
(上野明洸 / Akihiro Ueno)
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