高々と響き渡る「快音」は、いわば完璧なバッティングの証明でもある
野球の華であるホームランは、その大半が打者にとっては完璧に近い当たりを意味する。そうした本塁打の中には、打球の上がり方などによって「打った瞬間それとわかる」ものも多く存在する。それらの本塁打をあらためて映像で振り返ってみると、インパクト時に目の覚めるような「快音」が残っていることが多い。
ホームランは野球の華。そう形容される事実が示す通り、完璧な一打は見る者の胸がすくような快感を覚えさせることすらある。視覚的な面で言えば、打球の速度・角度、打者のフォロースルーやリアクションといったものが、本塁打の醍醐味の具体例といえる。だが、視覚だけでなく、聴覚の分野においても、本塁打の興奮を増幅させる要素は存在している。
今回は、前回の記事に引き続き、「快音」というテーマに焦点を当てた動画「【ASMR】睡眠用パ・リーグ強打者たちの本塁打音「心地よい、響き」Presented by nishikawa」の第2弾を紹介。特に印象に残った3本のアーチをピックアップしていきたい。
昨季の本塁打王の意地が詰まった、文字通りの強烈な一撃
まずは、7月6日に東北楽天の浅村栄斗選手が放った本塁打を紹介したい。
1点ビハインドの3回表に、先頭打者として打席に立った浅村選手。相手先発の本田仁海投手は初球に152km/hの速球を投じたが、その球はインコースに抜けてきて1ボール0ストライク。それでも経験豊富な浅村選手の腰が引けることはなく、続く2球目のスライダーが真ん中に入ってくると、絶好球を見逃さずに豪快なスイングを見せる。
インパクトと同時に響き渡った乾いた音と、ボールが描いた高々とした放物線も相まって、まさに打った瞬間それとわかる一発となった。本田投手が打球方向を向いたまま呆然としたような仕草を見せていたことも、このホームランが残した印象の大きさを物語るものだろう。
浅村選手は2020年に短縮シーズンながら32本塁打を記録し、自身初の本塁打王にも輝いた。まさに大活躍だった前年に比べると、2021年は18本塁打と、アーチの数そのものは減少していた。しかし、故郷の大阪で放った圧巻の一発は、まさに快音と形容できる打球音と共に、浅村選手のホームランバッターとしての能力の高さを、あらためて誇示していた。
地元出身の和製大砲候補による、強烈なプロ初安打&初本塁打
続けて、9月12日に北海道日本ハムの今川優馬選手が記録した一打を見ていきたい。
今川選手は両軍無得点の2回裏、1死2塁と先制のチャンスで打席に入った。相手先発はNPB通算143勝の実績を誇る、40歳の大ベテラン・和田毅投手。初球は外角のボール球に手を出してファウルとなったが、2球目に来た低めの球は見送り、1ボール1ストライクと並行カウントとなった。
続く3球目の速球は内角低めにコントロールされていたが、今川選手はこのボールを鮮やかにさばき、力強い打球を飛ばす。ボールは乾いた音と共にレフトスタンド上段まで飛んでいく、特大の一発となった。バットコントロールの巧みさと持ち前のパワーが詰まった一撃は、今川選手にとっては記念すべきプロ初安打でもあった。
今川選手は現在24歳。ルーキーイヤーとなった2021年は一軍では打率.071と苦戦したものの、二軍では打率.310、14本塁打、OPS.961と大活躍を見せた。地元・北海道出身の和製大砲候補が持つ、高いポテンシャルが示された強烈な本塁打は、来季以降のブレイクを期待させるに十分なものでもあった。
快音と共に幕張の強風を切り裂いた、まさにモンスター級の一発
最後に、9月22日の試合で福岡ソフトバンクのリチャード選手が放った一発を紹介しよう。
リチャード選手は3点リードの7回表に、先頭打者として打席に立った。マウンド上の東妻勇輔投手は2021年に37試合で防御率2.88と活躍し、試合前の時点で6試合連続無失点と好調だった。その東妻投手が2球続けて投じた速球を、リチャード選手はいずれも冷静に見送って、2ボール0ストライクと打者有利のカウントをつくった。
続く3球目の速球は外角低めへと制球されたが、189cmの体格を利した長いリーチを持つリチャード選手は、アウトローのボールも苦にしなかった。軽やかなスイングから生み出された打球は快音と共に高々と舞い上がり、そのままレフトスタンドへ一直線。この時、ZOZOマリンスタジアムではレフト方向から8mの逆風が吹いていたが、打球は強風をものともせず、そのままスタンドに飛び込んでいった。
一軍デビューを果たした今季は34試合で7本塁打を放ったものの、打率.181と確実性には課題を残したリチャード選手。しかし、数多の強打者が苦しめられてきた幕張の風を切り裂いた驚異の一打と、そのインパクトの際に残った見事な打球音が、リチャード選手の長距離砲としての豊かな才能を示すものであることに、疑いの余地はないはずだ。
本塁打と共に響き渡る「快音」は、選手のポテンシャルを示すものにも
捲土重来を期す2020年の本塁打王に、今後の飛躍が期待される2名の若手選手。今回取り上げた選手たちは、いずれも来季の本領発揮が期待される存在だ。今回取り上げた3本のホームランが生まれた瞬間、響き渡った強烈な「音」は、そうした期待値をより一層高めるだけの理由にもなりうる。
プロの舞台で繰り広げられる真っ向勝負によってもたらされる、胸のすくような快音。来たる2022年シーズンには、果たしてどの選手がそうした「音」を生み出してくれるだろうか。球春を間近に控えた今から、その光景が楽しみでならない。
文・望月遼太
今回ご紹介した動画はこちらから
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