9回2死から奇跡を起こし続けた岡大海。“起死回生の三発”を振り返る

2021.12.23(木) 07:00 パ・リーグ インサイト 望月遼太
千葉ロッテマリーンズ・岡大海選手(C)パーソル パ・リーグTV
千葉ロッテマリーンズ・岡大海選手(C)パーソル パ・リーグTV

キャリア最多の110試合に出場。数字以上のインパクトを残した

 敗色濃厚の状況から生まれた起死回生の本塁打は、見る人の印象にもより強く残るもの。岡大海選手はそんな本塁打を2021年だけで3本も放ち、そのたびにファンに大きな歓喜をもたらした。シーズン最終盤まで優勝争いを繰り広げた千葉ロッテにあって、試合そのものを大きく変えてみせた岡選手のバッティングは、とりわけ大きな価値を持つものだった。

 今季の岡選手は代走や守備固めといった従来のスーパーサブ的な起用だけでなく、好調期にはスタメン出場の機会も増加。11盗塁を記録して盗塁成功率.916という走塁面に加え、外野守備でもたびたびファインプレーを披露。時には一塁手も務めるなど随所で持ち味を発揮し、キャリア最多の110試合に出場した。

 その中でも先述した3本のホームランは、やはり今季の岡選手を語るうえでは外せない要素となっている。今回は、マリーンズファンの印象に強く残った3本塁打を詳細に振り返るとともに、これらの本塁打が生まれた理由についても、データをもとに紹介していきたい。

4月21日(対北海道日本ハム、逆転サヨナラ2ラン)

【劇的ヒロミ】マリーンズ・岡が大仕事『逆転サヨナラ2ランHR』でチームは6連勝!!

 1点ビハインドの9回裏2死1塁、凡退すれば試合終了という場面で打席に入った岡選手。ファイターズの守護神・杉浦稔大投手が初球に投じたスライダーはインコースに抜け、岡選手は冷静に見送って1ボール0ストライク。変化球が構えた場所とは異なるコースに来たことを受け、捕手の清水優心選手は2球目に低めの速球を要求する。

 杉浦投手は今度はほぼ構えた通りのコースに制球したが、岡選手はその速球を豪快にはじき返す。高く舞い上がった打球は失速することなくバックスクリーンに飛び込み、起死回生の逆転サヨナラ2ランとなった。

 千葉ロッテにとって本拠地での逆転サヨナラ弾は、2001年にフランク・ボーリック氏が3点差をひっくり返す逆転サヨナラ満塁本塁打を記録して以来、実に20年ぶりとなる快挙だった。その2001年7月9日の試合は「ボーリックナイト」として、今なおオールドファンの間では語り草となっている。そして、岡選手のこの本塁打もそれにちなんで「ヒロミナイト」と呼ばれ、球団から公式グッズも販売された。

 2020年の岡選手は打率.143と絶不調に陥り、打席に立つ機会も少なくなっていたが、この一打で「今年は違う」という雰囲気を感じ取ったファンも、少なからず存在したはずだ。3月・4月度の「スカパー!サヨナラ賞」にも輝いた岡選手だが、今季の彼にとって、この一発はほんの始まりにすぎなかった。

10月10日(対北海道日本ハム、同点2ラン)

【起死回生】マリーンズ・岡大海 土壇場で飛び出した『チームを救う劇的同点弾』

 シーズン最終盤の10月、千葉ロッテは前日までに3連敗を喫し、優勝争いから脱落しかかっていた。そして、この試合でも9回表を迎えた時点で2点ビハインドと敗色濃厚の展開となり、岡選手は2死1塁と再び凡退すれば試合終了という状況で打席に。4月の本塁打と同様に、今回も最終回のマウンドに立っていたのは杉浦投手だった。

 まず、初球のストレートは高めに浮いてボールとなるが、そこからバッテリーはスライダーを連投。2球目はストライクゾーンの球を見逃し、3球目はボール球に手を出して空振りと、バッテリーの狙い通りに追い込まれる。投手だけでなく、捕手も先述の試合と同じ清水選手であり、速球を本塁打にされたことを意識していた面も多分にあったことだろう。

 そして、決め球となる4球目にもバッテリーはスライダーを選択。だが、最後の球は高めからインコース真ん中へと抜けてくる失投に。それまでの2球にはやや合っていなかった岡選手だが、このボールには鮮やかな反応を見せる。力強く引っ張った打球はレフトスタンド最前列へ飛び込み、4連敗寸前からチームを救う同点2ランとなった。

 土壇場で同点に追いついたチームはこの試合を引き分けに持ち込み、続くオリックスとの天王山ではビジターながら2勝1分け。悪い流れを断ち切った岡選手の起死回生の本塁打は、優勝争いをさらに面白くした一打と言っても過言ではないものだった。

 また、4月には速球、この試合ではスライダーといずれも得意球を本塁打にされたことにより、杉浦投手にとっては岡選手を抑える球がなくなった面もある。実際、10月23日の試合でも杉浦投手は岡選手と対戦したが、速球とスライダーの制球を乱して四球に。この出塁がその後のサヨナラ劇につながったこともあり、相手のクローザーに苦手意識を植え付けるという点でも、大きな意義のある本塁打となっていた。

10月15日(対福岡ソフトバンク、サヨナラ2ラン)

【優勝マジック8】マリーンズ・岡大海の劇的サヨナラ弾『ヒロミナイトに酔いしれた!!』

 先述の試合から5日後、チームは2位ながらマジックが点灯。マジックが出てから最初の試合であるこの試合は緊迫した投手戦となり、1対1で最終回へ。9回表は益田直也投手が3人で抑えて敗戦の可能性はなくなったが、引き分けのままではマジックは減らないという状況で9回裏を迎えていた。

 この試合でも岡選手は、2死1塁と凡退すれば試合終了という状況で打席に。ホークスの守護神・森唯斗投手は初球にカーブ、2球目にカットボールと、いずれもボールになる低めの変化球を投じたが、岡選手は手を出さず。3球目の内角低めの速球を見送って1ストライクを取られるが、4球目のカーブもアウトコースに外れ、3ボール1ストライクと打者有利のカウントが整った。

 ここで森投手と捕手の甲斐拓也選手は外角低めのカットボールを選択。ほぼ構えた通りのコースに来た球を、岡選手は完璧に捉える。力強く伸びていった打球はセンター左のスタンドに飛び込み、岡選手にとって今シーズン2本目のサヨナラ本塁打に。これによって4月21日の試合に引き続いて「ヒロミナイト2」という名称が生まれ、前回同様に球団から記念グッズが発売されるほどのフィーバーとなった。

 チームにとっても、51年ぶりに点灯したマジックをさっそく1つ減らす、まさに印象深い一打となった。この一打で、10月・11月度の「スカパー!サヨナラ賞」(今季2度目)を受賞、「2021 スカパー!ドラマティック・サヨナラ賞 年間大賞」にも選ばれた。この事実からも、岡選手が今季見せたインパクトが、出色のものであったことがうかがえよう。

恐るべき勝負強さを発揮した岡選手だが、実は得点圏打率は……

 ここからは、先述した3本の本塁打について、より詳しく見ていきたい。

 まず、4月21日は真ん中低めの速球、10月10日は内角のスライダー、10月15日は外角低めのカットボールと、球種、コースがすべて異なる点は特徴的だ。また、今季の岡選手は内角真ん中の打率が.333、外角低めは打率.400と、先述の本塁打3本のうち2本は得意とするコースを打って記録したものだった。また、残る真ん中低めに対してはこれらのコースほど強くはないものの、打率.286とシーズン打率(.242)を上回る数字を残している。

 その一方で、今季の得点圏打率は.159と極端に低い数字になっていた。加えて、今季記録した6本塁打の内訳を見ていくと、走者なしと走者一塁がそれぞれ3本塁打ずつと、全てが得点圏ではない場面で記録されているという点も無視できない。

 そう考えると、今回取り上げた3本塁打がすべて、2死1塁という全く同じシチュエーションで記録された点も示唆的だ。いわば、ワンヒットで走者をかえすことを意識せず、過度に気負うことなく打席に入れる状況だったことが、得意なコースに来た球を思い切りよく振り抜くという岡選手本来の持ち味を引き出した。

ファンを熱狂させた「ヒロミナイト」が、キャリアのターニングポイントとなるか

 土壇場での勝負強さを存分に示した岡選手がさらなる活躍を見せるためには、先述した得点圏打率の改善は不可欠。とはいえ、今季はなかなかチャンスで打てなかったものの、通算打率.228に対して通算の得点圏打率が.224と、キャリアを通じた数字に大きな差はない。得点圏打率は長い目で見れば一定の水準に収束しやすい指標でもあるため、この点に関しては今後改善が見込める可能性は十分にあると考えられる。

 岡選手は時折ミスを犯すこともあるものの、先述した盗塁成功率の高さをはじめ、高い身体能力を活かした守備・走塁は十二分に優れたレベルにある。それだけに、今季見せたようなチームを救う活躍を来季以降もコンスタントに見せれば、今季終盤のように定位置を確保できる可能性も大いにあるはずだ。

「ヒロミナイト」と呼ばれた4月21日の奇跡の一打が、岡選手にとってキャリアのターニングポイントとなるか。追い込まれた状況で何度も驚異的な集中力を発揮してみせた岡選手には、来季以降もファンを熱狂させるような活躍を期待したいところだ。

文・望月遼太

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