“鬼門”ZOZOマリンを除けば防御率1.97。瀧中瞭太が持つ、数字以上の安定感に迫る

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東北楽天ゴールデンイーグルス・瀧中瞭太投手(C)パーソル パ・リーグTV
東北楽天ゴールデンイーグルス・瀧中瞭太投手(C)パーソル パ・リーグTV

9月以降は好投を続け、自身初の2桁勝利に王手をかけた

 ビッグネームが揃うイーグルス先発陣の中にあって、ドラフト6位入団の男が日増しに存在感を高めている。東北楽天の瀧中瞭太投手が10月6日に6回無失点の好投を見せ、今季9勝目をマーク。プロ2年目で大きく飛躍を果たし、自身初の2桁勝利に王手をかけている。

 瀧中投手は開幕から先発陣の一角に加わり、コンスタントに登板を重ねていたが、8月終了時点での防御率は4.92と芳しい数字ではなかった。しかし、たった一つの球場に対する相性の悪さが、実情以上に防御率を上昇させていた面があることをご存じだろうか。

 今回は、瀧中投手のこれまでの経歴に加えて、球場別・捕手別の成績といった要素を紹介。好投を続けるプロ2年目の右腕について、より深く掘り下げていきたい。(以下の成績は10月6日試合終了時点)

昨季終盤にローテーションに定着し、今季は大きな飛躍の年に

 まず、瀧中投手がこれまでに残した年度別成績について見ていきたい。

瀧中瞭太投手年度別成績(C)PLM
瀧中瞭太投手年度別成績(C)PLM

 瀧中投手は高島高校、龍谷大学、ホンダ鈴鹿を経て、2019年のドラフト6位で東北楽天に入団。プロ1年目は二軍で9試合に登板して防御率1.72と好投を見せ、9月下旬に一軍へ昇格。10月11日には8.2回を2失点という快投を見せ、記念すべきプロ初勝利をマークした。白星こそ2勝にとどまったものの、8試合で防御率3.40と一定の安定感を発揮し、シーズン終盤に先発陣の一角に定着してみせた。

 続く2021年は開幕ローテーション入りを果たしたが、今季初登板となった4月1日の千葉ロッテ戦では1.2回で10失点を喫してしまう。しかし、続く4月8日の埼玉西武戦では7回無失点と復調し、シーズン初勝利を記録した。そこから7試合続けて5回以上を投げ、2失点以下と安定した投球を披露。初登板を終えた時点では54.00だった防御率も、6月10日の時点で4.02まで良化していた。

 ところが、再びZOZOマリンスタジアムでの登板となった7月4日の千葉ロッテ戦で2.1回を6失点とまたしても崩れてしまい、防御率も4.91まで悪化。それ以降の登板では立ち直りを見せたのも前回同様で、とりわけ9月には4試合で月間防御率0.74という抜群の数字を記録しており、直近5試合で4勝0敗と白星もついてきている。

タイトルホルダーが居並ぶ先発陣の中で、チーム2位タイの勝ち星を記録

 次に、今季の東北楽天において、先発として2試合以上に登板した投手の各種成績を見ていきたい。

2021年の東北楽天先発投手成績(C)PLM
2021年の東北楽天先発投手成績(C)PLM

 今季の東北楽天は、則本昂大投手、岸孝之投手、涌井秀章投手といったタイトルホルダーの存在に加えて、田中将大投手が復帰し、早川隆久投手も新加入。実績十分の投手たちにゴールデンルーキーを加え、強力な先発陣が形成されると目されていた。

 しかし、昨季の最多勝投手でもある涌井投手が防御率5点台と不振に陥り、8月22日の試合を最後に一軍での登板はない。また、田中将投手は好投しながら勝ちがつかない試合も多く、ここまでわずか4勝。則本投手、岸投手、早川投手の3名はいずれも防御率3点台と一定の投球を見せているが、シーズン前の期待通りの展開になっているとは言い難い面がある。

 そんな中で、瀧中投手が不振の涌井投手の穴を埋めるだけでなく、期待値の高かった投手たちをも上回るほどの内容を見せている点は興味深いものがある。昨季終盤から台頭を見せつつあったとはいえ、瀧中投手の好投はチームにとっても大きなプラスとなっている。

たった1つの例外を除いて、安定した投球を見せているが……

 続けて、今季の瀧中投手が記録した球場別の投球成績についても見ていきたい。

瀧中瞭太投手球場別成績(C)PLM
瀧中瞭太投手球場別成績(C)PLM

 本拠地の楽天生命パークでは8試合に先発し、防御率2.53と好投。ビジターでもZOZOマリンスタジアムを除くすべての球場で防御率3点台以下、そこから神宮を除いた4つの球場では防御率2.25以下と、ほぼ球場を問わずに安定した投球を続けている。

 だが、ZOZOマリンでは登板した2試合で4イニングしか投げられず、合計16失点。他の球場ではいずれも好投していることを思えば、いささか特異な傾向といえる。そして、ZOZOマリンとそれ以外の球場での成績の合算を比べてみると、その差がより顕著に表れる。

瀧中瞭太投手球場別成績(C)PLM
瀧中瞭太投手球場別成績(C)PLM

 ZOZOマリンでの登板を除く試合での防御率は1.97と、まさに抜群の安定感を誇っている。ZOZOマリンでの2敗を除けば、勝率も.818という素晴らしい数字に。1試合平均で約5.1回と長い回を投げきれない傾向にあることを除けば、常に一定以上の計算ができる投球を続けている。

 これだけの投球を見せながら防御率が3.47にとどまっているのは、言うまでもなくZOZOマリンでの投球結果が原因となる。投手が今季喫した自責点35のうち16点がこの球場で記録されており、被本塁打9本のうち3本を喫してもいる。こうした相性を勘案してか、7月4日の試合を最後にZOZOマリンでの登板は一度もない状態が続いている。

実績十分なベテラン捕手の加入が、瀧中投手飛躍の触媒に

 ここからは、今季の瀧中投手がバッテリーを組んだ捕手別の投球成績を見ていきたい。

瀧中瞭太投手の捕手別成績(C)PLM
瀧中瞭太投手の捕手別成績(C)PLM

 開幕から4試合は下妻貴寛選手とバッテリーを組んだが、10失点を喫したZOZOマリンでの登板が響き、防御率は6点台に。田中貴也選手と組んだ5月20日の北海道日本ハム戦では5.2回を1失点と好投したが、この2名がバッテリーを組んだのはこの1試合のみ。そこから6試合は足立祐一選手と組み、交流戦では3試合で3連勝と好投を見せたが、7月4日にZOZOマリンで6失点を喫した試合を最後にバッテリーを組む機会はなくなっている。

 その後2試合は太田光選手と組んだが結果を残せず、9月8日からはシーズン途中に加入した炭谷銀仁朗選手とバッテリーを組むことに。それ以降は防御率0.59と抜群の安定感を発揮しているだけでなく、5試合中4試合で6イニング以上を投げたように、課題だったイニング消化能力も改善。実績十分のベテラン捕手の加入は、瀧中投手にとっても非常にポジティブな結果をもたらしているようだ。

ストライクとボールが見極めやすくなり、本来の持ち味を生かせず

 最後に、瀧中投手が今季登板したZOZOマリンでの2試合における投球内容を見て、この球場を苦手としている理由について考えていきたい。

 まず、4月1日の試合で瀧中投手はボールゾーンに32球を投じたが、そのうち千葉ロッテの打者が手を出してきたのは3球のみ。また、中村奨吾選手に対してはフルカウントから1打席目はフォーク、2打席目はカーブを投じ、いずれも四球を選ばれている。すなわち、ストライクとボールを打者には容易に見切られていたことになる。

 また、喫した被安打7本のうち、本塁打2本を含む4本がストライクゾーンのストレート。残る3本のうち2本はカットボール、1本はチェンジアップと、総じて早いボールに狙いを絞られていたことがうかがえる。ストライクとボールがはっきりしていたこともあり、ストライクゾーンに置きに来た速球系の球を捉えられた、と総括できそうだ。

2度目の登板では配球を変化させたが、今度はボール球をも安打にされた

 強い雨の中で行われた7月4日の試合では、ボールゾーンに33球を投じてボールが23球、相手が手を出してきたのが7球と、前回に比べればやや改善の兆しが見られた。しかし、初回には先頭打者から3名続けてボールコースの球を安打にされ、あっという間に2点を失っていた点には留意すべきだろう。

 速球、チェンジアップ、カットボール、シンカー、フォーク、カーブを使い分けていた4月1日とは異なり、この日は「速球、フォーク、スライダー」の3球種のみで投球を組み立てていた。ただし、被安打の内訳を見ると、4本がストレート、2本がフォーク、そして藤原恭大選手に喫した本塁打がスライダーと3球種ともまんべんなく打たれ、配球の変化は奏功しなかったといえる。

次回登板機会があるとすれば「パーソル CS パ」の可能性

 ZOZOマリンスタジアムは強風や雨の影響を受けやすく、投手にとってはしばしば難しい投球を強いられる球場でもある。投げ合った小島和哉投手も5回4失点と雨に苦しんだ7月4日の試合はその典型な例でもあるが、多彩な球種を生かし、打たせて取る投球術が持ち味の瀧中投手にとっては、自身が投げる際にはストライクとボールがはっきりしやすくなってしまうZOZOマリンは、とりわけ相性が悪いと考えられる。

 逆に言えば、それ以外の球場において抜群の投球内容を見せていることは、そうした瀧中投手のピッチングスタイルや球の質は、パ・リーグの並みいる強打者相手にも十分に通用していることの証左でもある。千葉ロッテに対しても、本拠地で行われた4月15日の試合では5回2失点とまずまずの好投を見せており、対戦相手との相性というよりは、ZOZOマリンとの相性に足を引っ張られている面は強いだろう。

 とはいえ、東北楽天はZOZOマリンでの全日程をすでに終了しており、次に瀧中投手が投げる可能性があるとすれば、プレーオフつまりは「パーソル CS パ」での登板ということになる。石井監督や小山投手コーチはそこを回避するのか、それとも瀧中投手の実力を信じて送り出すのか注視したい。

 1つの球場で喫した悪夢の16失点が防御率を押し上げているものの、現在の瀧中投手がチーム内でも屈指の安定感を誇ることに疑いの余地はない。そして、いずれ最大の鬼門を克服した暁には、いったいどれほどの成績を残してくれるのかという期待も高まる。ドラフト6位での入団から2年。その才能をプロの舞台でも存分に発揮しつつある26歳の右腕が見せる投球に、今から注目しておいて損はないはずだ。

文・望月遼太

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