東北楽天ゴールデンイーグルスが2017年シーズンからチケットの販売価格を変動制にすることを先日発表した。正式に導入するのは、日本球界では初となる。米国では以前からダイナミックプライシングを導入している球団が多く存在するが、日本でも楽天に続いていく球団があらわれる可能性も十分に考えられる。
スポーツ観戦チケットの現状は日米でも大きく変わりつつある。これまでは選手の写真などが描かれていた“特別感”のあったチケットが主流であった。私もこれに親しみを持っていたため、少し寂しい気もするが安全面やビジネス面を考えると効率良い形へと変化しつつあるのは自然な流れと言えるだろう。
昨年念願の優勝を果たし、伝統ある球団の1つでもあるシカゴ・カブスがこのオフ、印刷したチケットの利用を廃止することを発表した。自宅で印刷して利用できる紙チケットが主流となっていたが、偽造チケットとしての悪用が増加していたことが廃止される理由となった。
米国では、購入方法として二次流通のチケットサービスを活用するファンも多いが、今後はアプリと連動して電子化していくことが主流となっていくだろう。さらには“特別感”のあったチケットが減少することによって1つの文化が変わってしまいそうだが、その一方でシーズンチケットホルダーへはお馴染みのチケットが提供されることで付加価値を与えることにも繋がるだろう。
さらにはこのオフ、観戦チケットの話題としてロサンゼルス・ドジャースが半数のチケットを値下げもしくは現状維持で販売することが報道された。それでも昨シーズンよりはチケットの売り上げが上がることを予想しているという。その根拠としては、これまで主にフィールド上の戦いのために活用されてきたデータアナリティクスがビジネス面でも使われるようになったからだ。
座席、対戦相手、プレゼント配布の有無、そして何曜日に開催される試合かなど多くの要素を考慮した上でチケットの値段を設定していく。値下げ、現状維持のチケットもある中、3ドル(約335円)以上の値上げを決めたチケットも25%ほど存在。効率良いチケット販売のためにデータを用いた値段設定が今後多く見られていくことになるだろう。もちろん、これまでもデータは活用されてきただろうが、さらにもう一歩先をいくデータとチケット販売の融合が見られるはずだ。
二次流通のチケットの売り上げはそもそも需要と供給で成り立っていたが、すでにスプリングトレーニングのチケットが販売されており、高額な試合のほとんどがシカゴ・カブスの試合で占められている。優勝する前からチケットの売り上げは比較的高かったカブスだが、実力も伴ってきたことからその値段は高騰することが予想される。今後データが用いられることによって、一次流通にもどれほどの影響があるのだろうか、非常に気になるポイントだ。
チケットの売り上げを伸ばすための企画や取り組みはこれまでも多く話題になってきたが、根本的な値段設定や実際のチケットそのもののハード面に関しては見過ごされてきた。スマート化する商品が増える中、スポーツ観戦チケットもどのように変化し、データを活用してどうファンを引き付け続けることができるか注目していきたい。
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