柳田悠岐、マーティン、杉本裕太郎の3人の本塁打数がついに並ぶ
レギュラーシーズンも残り30数試合となり、優勝争いと同時に、個人タイトルをめぐる争いも終盤に入ってきた。そんな中で、パ・リーグの本塁打王争いが混戦の様相を呈しており、先の読めない展開が続いている。
現在パ・リーグの本塁打ランキング上位3名を占めている、柳田悠岐選手、レオネス・マーティン選手、杉本裕太郎選手の3名は、いずれも本塁打王を獲得した経験が一度もない。すなわち、今季はキャリア初の本塁打王に輝く選手が誕生する可能性が、非常に高いということだ。
今回は、先述した3選手の各種打撃成績に加えて、月別の打撃成績、本塁打の打球方向と球種といった要素を紹介。それらの数字から各選手の打撃内容を振り返りたい。(以下、成績はいずれも9月10日の試合終了時点)
どの指標を見ても非常にバランスの良い優れた数字
まず、3選手の今季の打撃成績について見ていきたい。
9月10日の試合で杉本選手が本塁打を放ち、25本で3人が並んだ。次点のブランドン・レアード選手はわずか3本差で追っており、レアード選手が3人を抜く可能性も大いにあるだろう。
この3選手の打撃成績について、各種の指標を用いて、より詳しく見ていきたい。
柳田選手はキャリアを通じて、規定打席に到達したシーズンでは全て打率.300を超えている。今季は本塁打を量産しているものの、打率に関しては.300超えでシーズンを終えられるか際どいところ。本塁打王争いに加え、キャリア最多の36本塁打を上回れるか、打率.300神話を継続できるか……柳田選手個人にとっても、注目点の多い終盤戦といえる。
対照的に、杉本選手は規定打席に到達した経験そのものが一度もなく、自身初の打率.300超えもかかってくる状況だ。今季だけで過去5年間で記録したキャリア通算の本塁打(9本)を大きく上回る数字を記録しているだけに、シーズン終盤まで良い状態を維持し、4番打者としてさらなる高みへ到達できるかに期待がかかる。
マーティン選手は打率こそ他の2名に比べると若干低いが、出塁率は他の2名と遜色なく、非常に優れた選球眼を有していることがわかる。中断期間中の一時帰国と、それに伴う隔離期間の影響で試合数はやや少ないものの、シーズン序盤から本塁打ランキングの上位に顔を出し続けていることが、その打撃の好調ぶりを示してもいるだろう。
また、本塁打ランキングでトップ3に入っている選手は全員がOPS.900を超えており、本塁打以外の面でも非常に優秀な水準の数字を記録していることがわかる。出塁率に関しても3選手全てが.370台以上で、長打率も高いレベルで拮抗している。
そして、打数を本塁打数で割って求める、何打席に1回ホームランを打ったかを示す指標である「本塁打率」に目を向けると、非常に微妙な差ではあるが、マーティン選手がトップで、杉本選手がそれに次ぐ2位、柳田選手が3位という結果となっている。
勝負どころの9月に入ってから、最も調子を上げている選手は?
続けて、3選手が今季残している月別の各種成績についても見ていきたい。
柳田選手は7月に打率.368と絶好調で、五輪明けの8月も本塁打こそ1本だけだったものの、打率.313と好調を維持した。その柳田選手とは対照的に、杉本選手は7月の月間本塁打が1本、月間打率.146と絶不調に陥っていた。しかし、8月は打率.367と再び状態を上向かせている。
マーティン選手も8月の試合出場はわずか4試合にとどまったものの、そのわずか4試合で2本塁打を記録。9月は打率こそ.185と低いが、出塁率は.353と、ボールはよく見えている様子だ。中断期間直前は足の状態の影響からか指名打者での出場も多かったため、休養と治療を挟んだことが、シーズン終盤に生きてくるかが見ものだ。
打球方向に違いはあるものの、球種に関してはある共通した傾向も
最後に、各選手が本塁打を記録した打球方向と、本塁打を放った球種を紹介していきたい。
左打者の柳田選手とマーティン選手はライト、右打者の杉本選手はレフトと、各選手ともに引っ張りで放った本塁打が最も多くなっていた。それ自体は当然の事象と言えるが、抜群のパワーと打撃技術の高さで知られる柳田選手は、逆方向にも9本塁打を放っている。しかし、センターへの本塁打はわずか1本と、意外にも極端に少なくなっている。
また、杉本選手は体格から来る豪快なバッティングのイメージも強い選手だが、センター方向に5本、逆方向に6本と、ある程度各方向に打ち分ける器用さも兼ね備えている。その一方で、マーティン選手は引っ張りだけで20本ホームランを記録しており、今回取り上げた3名の中では最もプルヒッターの傾向が強い。
各選手が本塁打を記録した球種に目を向けると、3選手はいずれも速球を10本以上本塁打にしている点が特徴的だ。パ・リーグの投手は速球勝負を挑んでくる傾向が強いこともあり、そのストレートに対して力負けせずにスタンドまで飛ばせるかどうかが、ホームランを量産するためのカギとなっているようだ。
また、柳田選手とマーティン選手は変化球の中ではスライダーを捉えることが最も多い。特にマーティン選手は4本中3本が左投手のスライダーを打ったものであり、セオリー通りの投球であっても甘く入れば本塁打にしてみせる、という点が、各種の数字にも示されている。
シーズン最終盤まで、白熱のタイトル争いが繰り広げられる可能性も
以上のように、速球に対してかなりの強さを見せている点と、優れた選球眼を有している点は、3選手ともに共通していると考えられる。打撃の好調ぶりは優秀なOPSにも表れており、いずれの選手も今季は出色の活躍を見せていることに疑いの余地はない。
今後の展望としては、本塁打率を見る限りでは、マーティン選手にやや分があるとも考えられるがほんのわずかな差だろう。あとは得意とする球場での残り試合数や対戦カード、被本塁打が少ない先発、山本由伸投手やニック・マルティネス投手、東浜巨投手、早川隆久投手(いずれも被本塁打数6)と当たる打席数も関係してくると思うが、またそれは別の稿で。
4チームが繰り広げる白熱の優勝争いに加えて、3名の長距離砲が激しくしのぎを削る本塁打王争いも、最終盤まで目が離せない展開になりそうだ。この3名のうち誰かが自身初の栄冠に輝くのか、それともここから猛チャージをかけ、逆転でタイトルを手にする選手が現れるのか。本塁打王というタイトルの行方と、それを決めることになる各選手の豪快なアーチに、ぜひ注目してみてほしい。
文・望月遼太
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