千葉ロッテで「プロとしての自覚や責任を感じることができた」
2020年オフに千葉ロッテを退団し、台湾に帰国した陳冠宇(チェン・グァンユウ)投手。7月に行われた台湾プロ野球(CPBL)のドラフト会議で楽天モンキーズから1位(全体2位)指名を受け入団した。大学在学中に横浜(現横浜DeNA)に入団したため、母国ではプロとして初めてマウンドに上がる。日本での経験はチェンにとって「プロ野球選手の仕事は何か」を教えてくれた場所だったと話す。
台湾の国立体育大学在学中の2011年に横浜(現横浜DeNA)に加入したが、2012年にトミー・ジョン手術を受けたこともあり、一軍での登板は2014年のわずか1試合に留まった。そして2014年オフに戦力外通告を受け、千葉ロッテに移籍した。
「ベイスターズでは『プロ野球選手になった』という実感がありませんでした。千葉ロッテに移籍してからは一軍でプレーする時間が長かったので、プロとしての自覚や責任を感じることができました。監督やコーチがたくさんチャンスをくれて、先発、中継ぎどちらも経験させてもらいました。とてもいい勉強になりました」
千葉ロッテでは主に中継ぎとして登板していたが、打たれてしまった時は気持ちを切り替えることが大切だと学んだ。
「打たれた時は、すぐに誰かと話をしてアドバイスを貰っていました。大事だと感じたのは、心のコンディションです。よく話をしたのは、益田(直也)さん、唐川(侑己)さん、田中(靖洋)さん、松永(昂大)さんです。『チェン、これが勉強だ。泣きたいだろうけど、次の試合があるから忘れろ』と言ってくれました。明日も同じ場面で投げている可能性がある。気持ちを切り替えて、次は同じ失敗をしないことがプロの仕事だと教えてもらいました」
現在も佐々木朗らと連絡を取り合う「まだ千葉ロッテにいる気がする」
日本で学んだことを胸に、8月24日に始まる後半戦から故郷のマウンドに立つ。台湾へ帰国後、今年の1月からは社会人野球の「安永鮮物」でプレー、6月からは楽天モンキーズに練習生として参加していたが、日本とのプレースタイルの違いを感じている。
「日本の野球はとても細かく、1、2番は足が速く小技を使える打者、3、4、5番くらいに強打者がいますが、台湾は1番から強打者が並んでいます。みんなパワーがすごいので、失投したら長打を打たれてしまう。ずっと油断できません」
日本では、打たれてしまった時にチームメートだけでなく千葉ロッテのファンにも励まされたと懐かしそうに振り返った。
「電車で球場に通っていたんですが、打たれた試合の後『チェン大丈夫、頑張れ。応援続けるよ』と声をかけてもらったことが何日もありました。抑えた日も、打たれてしまった日も、熱い声援を送ってくれた。6年間応援してくれて感謝しています」
今でも、佐々木朗希投手ら千葉ロッテの投手陣とは連絡を取り合い、ビデオ通話もしているという。「みんな優しくて、本当に嬉しいです。まだ自分が千葉ロッテにいるような気がします」
日本で10年間プレーした。台湾の家族と離れ離れの日々に、寂しさを感じることもあったが、辛い時に支えてくれたチームメート、ファンがいた。これからは日本での経験を伝えながら、自らが若い選手たちをサポートしていくことを誓った。
(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)
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