5月29日、楽天生命パーク宮城で行われた楽天イーグルスと横浜DeNAの一戦は「FANS' MATCH」と銘打たれ、多くのイーグルスファンが来場した。来場者数は13,057人と、同日開催された全6試合のうち最多の動員者数を記録(2試合は無観客開催)。田中将大投手の好投だけでなく、スタジアム内外で行われたイベントにもスタジアム一体が賑わう盛況ぶりを見せた。
その秘けつを探るべく、楽天野球団 総合企画部ファンサービスグループの山本澪さんに話を聞き、コロナ禍でいまだ規制が多いなか、さまざまな趣向を凝らし新しいファンサービスを模索する様子に迫る。
「ファンとともに勝利を掴む」をスローガンに2017年より始動。今後は「オンラインとの共存」がカギ
楽天イーグルスが主催する「FANS' MATCH」は「ファンとともに勝利を掴む」をコンセプトに、前身の「ファンクラブデー」から名前を変えて2017年より始まった。来場者に対しては、東北・宮城では「伊達の勝色」とも言われる濃いネイビー、“ヴィクトリーネイビー”を纏ったユニフォームが配布される。
5月29日に行われた「FANS' MATCH」は、4月25日に続き今季2度目の開催となった。オンラインイベントが主体となったが、「いい意味で、選手もお客様もオンラインへの理解が深まった」と山本さんは話す。またそれは運営側にも言えることで、今後は「そのなかでも可能性を模索し共存していきたい」とのことだ。
一貫して重視したのは「TEAM EAGLES」会員へのサービス。原点回帰の「“オフライン”イベント」も
山本さんが繰り返し強調したのは「(楽天イーグルスのファンクラブ)“TEAM EAGLES”メンバーの方に楽しんでいただけるサービスを」という点だ。今季から楽天イーグルスは「TEAM EAGLES」のサービス内容を一新。コロナ禍2年目を迎えるにあたり、“おうち”でも“スタジアム”でも楽しめる新サービスを提案した。(詳細は『高額なのにはワケがある? 楽天イーグルスのファンクラブ「TEAM EAGLES」に迫る』を参照)
しかし、新サービスとは「完全オンライン」を意味するわけではない。感染拡大から1年以上経過した今も収束の先行きは不透明だが、それと同時に「NPBの規定に従い、対策を施せば実施できること」も見えてきた。そこで「リアルでのイベントを敬遠しすぎた」という昨季の経験を生かし、原点回帰の「スタジアムで盛り上がる“オフライン”イベント」を企画。実際に29日のイベントはこんなふうに行われた。
・楽天イーグルスの打撃練習を公開
試合開始前の10時頃から、楽天イーグルスの選手の打撃練習を、VIPシートから見学することができるこのイベントは「TEAM EAGLES」メンバーから抽選で選ばれた200名が参加。座席の消毒やソーシャルディスタンスの確保等の対策を講じた上で、今季より再開した。
楽天生命パーク宮城に来場したことのある方はわかるだろうが、普段は開場時間に合わせて来ても楽天イーグルスの打撃練習は見ることができない。そんな貴重な選手の姿を間近で見れる機会に、参加者は間近で練習を行う選手をじっくり見つめたり、持参のカメラに収めたりと、思い思いに楽しんだそう。
・超豪華な景品がズラリと並んだ抽選会は6/10も開催
「TEAM EAGLES」会員のみ無料で参加可能の「わくわくガラポン抽選会」は、「入会時だけでなく、観戦日も“会員だからこそ”楽しんでいただけるように」との思いを込め、企画された。球団公式グッズ、選手の直筆サイン入りグッズは当然用意されたが、中でも目を引く一等は「始球式」の参加権利。実際に、その一等を当てた親子が喜ぶ微笑ましい場面も見られた。
このイベントは次回(6月10日)の「FANS' MATCH」でも開催予定。その内容は練り直されるそうだが、素敵な景品に大いに期待できそうだ。
・試合終了後には「フィールドウォーク」でスタジアムを開放
試合後に「TEAM EAGLES」メンバーとサブスクリプションサービス「わしほーだい」の購入者を対象に開催された、スタジアムの中を開放する「フィールドウォーク」。今季からは「NPBの規則の上で、対策を講じれば入場可能」ということで、人数制限を定めて再開した。
スタジアムに一歩足を踏み入れると、そこには先程までプレーしていた選手の熱気を感じられる。「久しぶりだからとても楽しい」といった感想とともに、ベンチやバッターボックスの前で撮影を楽しむ「TEAM EAGLES」メンバーが多く見られた。
・~選手とファンを繋げる~FANS' MATCH限定選手応援メッセージ
こちらは選手ロッカーとスタジアムをつなげる選手ブリッジに、事前に募集した選手への応援メッセージをボードにまとめて掲載。自身宛のメッセージを見つけては、喜ぶ選手の姿も見られたという。交流が減少したことは、ファンと同様に選手も寂しいに違いない。声援が目に見える形となることで、選手の心に深く届いたはずだ。
多くのあたたかい応援メッセージが集まったが、山本さんいわく「募集期間が短かったことが反省点」だそう。次回に向けてこの様子を球団公式YouTubeチャンネルにもアップし、さらに多くのファンの声援を選手に届けようとする工夫も見られている。(動画はこちらから)
“オンライン”と“オフライン”の共存で進化し続ける「選手とファンのふれあい空間」
「FANS' MATCH」のようなイベントでは選手とファンが直接交流できるのも魅力的な点だが、ファンサービスはまだ制限が残る。しかし29日は選手とファンが“オンライン”で交流するイベントを開催し、特に盛り上がりを見せたようだ。「スタジアムでのイベント」という雰囲気も大切にしつつ、選手とのオンライン交流の環境も整備し、昨季より満足度を高めた。
・ビジョンカーを用いてファンと交流
試合前には“スタジアム内の公園”である「スマイルグリコパーク」で大型のビジョンカーを用いてオンラインイベントが開催された。このイベントには則本昂大投手が登場。則本投手が「交流戦で対戦したい選手は嶋基宏選手です」とコメントすると、会場は大きな盛り上がりを見せた。
また直筆サイングッズの抽選会も行われ、当選した参加者はその場で宛名も書いてもらうなど、従来の選手とファンの交流も健在。参加者は「スマイルグリコパークで行っていたため、気軽に立ち寄ることができました」と、幅広い来場者が楽しんだようだ。
・「プロ野球選手になるには?」少人数での開催により深い質問も
また、「TEAM EAGLES」メンバー限定の交流会も。試合前の打撃練習見学会の参加者から抽選で選ばれた20名が参加した「選手とのオンライン交流会」は、より選手とファンが深く関わる場となった。
その場で質問を募る形で行われ、野球少年からは「どうしたらプロ野球選手になれますか」などのより個別な質問も寄せられた。イベントに登場した小深田大翔選手は質問に対して真摯に答え、充実した交流会に。山本さんは「20名だからこそ、周囲の視線なども気にならず、気軽に質問できたのでは」と成功の要因を分析した。
「楽天イーグルスを楽しめる幅広いコンテンツに」 今季から始まった新サービス「わしほーだい」の現状
「FANS' MATCH」の取材のなかで、球団の時流に対応する“柔軟性”を感じた。今季から他球団に先駆けて導入した、サブスクリプションサービス「わしほーだい」もその柔軟性を感じさせるサービスと言えよう。山本さんの言葉を借りると「わしほーだい」で配信するコンテンツは「楽天イーグルスをさらに深く日常のなかで楽しみたい方向け」のもの。もうすでに多くのファンが利用しているかと思うが、多様化する観戦スタイルに合わせて、シーズン中に“柔軟なアップグレード”が可能なサービスとなっている。
また、ほかにも子ども向けの「わしほーだいKIDS」では、毎月1枚観戦チケットをプレゼント。ディープな野球ファンに向けては、現在戦略室に在籍する楽天イーグルスOBの戸村健次氏が「チームの状況分析」から「投球講座」など、「より楽天イーグルスを深く知れる」コラムを執筆している。「“サブスク”と聞くと動画サービスのみを連想するが、“楽天イーグルスを楽しむ”月額コンテンツとして幅広く捉えてほしい」と、山本さんは話す。
今後は試合中継の「マルチアングル配信」も正式に「わしほーだい」のコンテンツとして導入を開始予定とのこと。山本さんは「まだ手探り状態で模索している」としたものの、その内容はすでに進化を見せ始めていた。(「わしほーだい」の詳細はこちらから)
次回は6月10日(水)の中日戦で開催予定。「安心・安全なスタジアムづくりを」
コロナ禍2年目を迎えた楽天イーグルスのファンサービス。次回の「FANS' MATCH」は6月10日(水)の中日戦である。山本さんは「楽天生命パーク宮城は感染対策を万全にとり、“安心・安全”のスタジアム運営を行っている」としたうえで「ぜひ宮城県内はもちろん、県外からでも来ていただきたい」と強調した。
とはいえ、スタジアムにまだ足を運ぶことができない方も多いだろう。「スタジアムに来れる方向けの特典に見えるが、来られない方々にも“MyHEROポイント2倍”など楽天イーグルスを身近に感じてもらえるよう努めている」と山本さんは話す。実際、県外に住む「TEAM EAGLES」メンバーからは「今季から家で楽天イーグルスを味わえる特典が増え、“おうち観戦”が充実している」との声も。
まさに「“おうち”でも“スタジアム”でも楽天イーグルスを体感できる」楽天イーグルスの取り組みには、今後も注目したい。
・球団公式ホームページはこちらから!
取材・文 小野寺穂高
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