「ドラフト1位の佐々木」は朗希だけじゃない。快投続く佐々木千隼、その投球の“変化”とは?

2021.5.13(木) 07:00 パ・リーグ インサイト 望月遼太
千葉ロッテマリーンズ・佐々木千隼投手(C)パーソル パ・リーグTV
千葉ロッテマリーンズ・佐々木千隼投手(C)パーソル パ・リーグTV

故障を乗り越え、ブルペンの貴重なピースへと飛躍しつつある

 ドラフトでの5球団競合を経てプロ入りした大器が、相次ぐ故障を乗り越え、ついに開花の時を迎えつつある。千葉ロッテの佐々木千隼投手が、開幕からリリーフとして好投を続けている。ビハインドの場面できっちりと抑えて逆転への流れを呼び込むケースも多く、中継ぎ投手という役割ながら、5月5日の時点で既に3勝を記録している。

 そして、4月25日の福岡ソフトバンク戦では9回表に3点差に迫られ、なお1死1、2塁というピンチでマウンドに。本塁打を打たれたら一気に同点という状況で、佐々木千隼投手は真砂勇介選手を一飛、今宮健太選手を見逃し三振に打ち取る完璧な投球を見せて試合を締めくくり、見事にプロ初セーブを記録している。

 プロ入りからの4年間は故障もあって苦しいシーズンが続いていた佐々木千隼投手だが、今季は投球内容や指標の面でも進化が見られる。今回は、佐々木千隼投手のこれまでの経歴を振り返っていくとともに、先発時代と現在のピッチングスタイルがどう変化しているのかという点や、各種の指標からわかる投球の変化といった要素について紹介していきたい。

※成績は5月5日現在

好調時には高い能力の一端を示していたが、故障に苦しむ時期も長く……

(C)パ・リーグ インサイト
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 佐々木千隼投手はいわゆる「外れ1位」としては史上最多となる5球団での競合を経て、桜美林大学から2016年のドラフト1位で千葉ロッテに入団。シーズン序盤からローテーション入りを果たし、4月6日にはプロ初先発初勝利を記録したが、5月の月間防御率6.65、6月の月間防御率7.08、7月の月間防御率5.06とその後は崩れてしまい、二軍での再調整を余儀なくされる。

 それでも、二軍での調整を経て9月に再昇格して以降は、4試合で防御率1.04と抜群の投球を披露し、翌年以降の活躍に期待を持たせた。しかし、プロ2年目の2018年は故障の影響により、一度も一軍で登板することはできず。それでも、故障の癒えた2019年は7月以降に6試合に先発登板し、防御率2.70と好投。リリーフとして登板した1試合でも2イニングを無失点に抑え、故障からの復調を印象付けた。

 だが、2020年は再び故障に苦しんで一軍では防御率8点台と打ち込まれ、二軍でも8試合で防御率4.15と安定感を欠いた。2021年は巻き返しを期すシーズンでもあったが、中継ぎとして開幕一軍入りを果たし、4月1日に3回1失点、4月8日に3回無失点と、ロングリリーフとして安定した投球を披露。その後は1イニングを任される役割にシフトし、4月25日にプロ初セーブを挙げる活躍を見せたのは先述の通りだ。

球種や投球の間合いといったところにも、先発時代からの変化が見られる

 ここからは、実際の映像をもとに、佐々木千隼投手の具体的な投球内容について見ていきたい。まずは、新人時代に9回1失点の好投でプロ初となる完投勝利を記録した、2017年9月13日の投球を振り返っていこう。

 先発時代はスライダーとシンカーに加えて、ブレーキの利いたカーブを用いて打者に的を絞らせない投球スタイルを用いていた。右打者に対しては外に逃げるスライダーとカーブを使って空振りを奪い、左打者に対しては逆側に変化するシンカーを決め球に用いて打たせて取る。ルーキーイヤーから、その投球には一定以上の完成度が伴っていたことがわかる。

 しかし、相次ぐ故障の影響もあり、アマチュア時代には150km/h以上に達していた速球のスピードは、140km/h台前半まで低下することに。それでも2019年には防御率2.53と好投したところに投手としての能力の高さが見えるが、シンカーとスライダーにフォークを交えた現在の投球スタイルは、速球に威力があってこそ、より効果が増してくるのも確かだろう。

 次に、1点ビハインドの8回裏を3者凡退に抑えたことで2年ぶりの勝ち星を記録した、2021年4月18日の投球を見ていきたい。

 球速こそ140km/h台前半ではあるが、この試合で2打数2安打1打点1四球と好調だった杉本裕太郎選手から3つ見逃しを奪ったシーンからもわかる通り、今季の佐々木千隼投手は、速球系のボールがスピードガンの表示から来る印象以上に効果を発揮している。

 先発時代に使っていたカーブを投球のレパートリーから外し、投球モーションに入ってからリリースまでの間合いを以前より長く取るなど、新人時代に比べると、投球フォームも含め、いくつもの箇所でマイナーチェンジを図った跡がうかがえる。それでいて、スライダーとシンカーの切れ味は以前同様の鋭さを保っており、打者にとってはより対処しづらい投手へと進化している。

キャリアを通じて課題の2つの指標が、今季は大きく改善

 ここからは、各種の指標をもとに、今シーズンの佐々木千隼投手のピッチングはどこが変化しているのかについて見ていきたい。

(C)パ・リーグ インサイト
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 通算奪三振率は6.33と高い数字ではなく、プロ入り後は打たせて取るタイプのピッチングを主体としていることがわかる。今季の奪三振率はキャリアで最も低い数字となっており、先述した投球内容の変化こそあれど、大元のピッチングスタイル自体は大きく変化していないことがうかがえる。

 一方で、与四球率と被本塁打率の面ではかなりの変化が見られる。この2つの指標はキャリアを通じてやや悪い傾向にあり、双方の数字に改善が見られた2019年は投球自体も安定していた。すなわち、四球と被本塁打の割合は、佐々木千隼投手の投球内容そのものに影響を及ぼす要素と言えよう。打たせて取る投球を展開している以上は、無条件で走者を溜める四球と、走者を全て返される被本塁打が、いずれも失点数に直結するのは自然なことだ。

 そして、2021年は10.2回を投げた時点で四球がわずかに2つ、与四球率も1.69と劇的な改善を見せている。同様の傾向は被本塁打率の面でも見られ、今季は4月27日の時点で1本も本塁打を許していない。自身のピッチングスタイルに即した投球内容の進化が、今季の佐々木千隼投手の安定感を支える理由の一つとなっているのは間違いないだろう。

故障を乗り越えた大器が、ついに大輪の花を咲かせるシーズンとなるか

 故障を経てのフォーム変更と速球の威力向上が奏功し、より打者にとって打ちづらい投手へと進化。それに加えて、与四球と被本塁打の確率も大きく減少し、昨季までの失点パターンにつながる要素も少なくなりつつある。以上のように今季の佐々木千隼投手が安定感のある投球を続けていることには、それ相応の確たる理由が存在している。

 新境地を開拓した右腕はこのままリリーフ陣の一角として好投を続け、チームにさらなる勝ち星を呼び込んでいくことができるか。プロ入りから5年。紆余曲折を経てついに覚醒の時を迎えつつある佐々木千隼投手のブルペンにおける重要性が、今後さらに増してくる可能性は十二分にありそうだ。

文・望月遼太

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