沖縄出身、高校は大分、四国・徳島で腕磨き“最短”でプロへ
■埼玉西武 3ー1 千葉ロッテ(27日・メットライフ)
プロ2年目・20歳の埼玉西武・上間永遠(うえま・とわ)投手は27日、本拠地メットライフドームで行われた千葉ロッテ戦に先発し5回5安打無四死球1失点の好投。プロ2年目にして初勝利を挙げ、チームの連敗を「6」で止めた。今年4月8日の楽天戦で1軍デビューしたばかり。通算3試合目の右腕がチームの救世主になれたのはなぜか──。
お立ち台でウイニングボールの行方を聞かれると、「お母さんにあげたいと思います」と即答。沖縄・那覇市生まれで、現在41歳の母・多美子さんに女手一つで育てられた。「『勝てたよ』と伝えたい。感謝しています。高校で県外に出る時も、『自分が思う通りに』と言ってくれて、大会の時にはいつも見に来てくれました。負担をかけたかもしれないけれど、ひとつ恩返しができたかなと思います」。朴訥とした口調で言葉を絞り出した。
高校は大分・柳ヶ浦高へ進学し、3年生の夏に県大会の決勝まで進出したが、甲子園には届かなかった。プロ志望届を提出したものの声がかからず、四国アイランドリーグplus・徳島に1年在籍した後、2019年ドラフト7位で入団。大学へ進学すればプロ入りまで4年、社会人でも3年かかる中、“最短コース”を選択した。「母のために」との思いが、転んでもただでは起きない逞しさにつながっているのではないだろうか。
この日は過去2試合の1軍戦登板を、漏れなく教訓として生かした。「最初の試合(8日、楽天戦)では大量失点し(5回まで1失点の好投も、6回に4安打を浴び一挙3失点)、前回登板(20日、オリックス戦)では(味方に)点を取ってもらった直後に2失点してしまった。今日はしっかり抑えられてよかった」と振り返る。
「緊張もせず投げているように見えた」辻監督も舌を巻く度胸
3回に1点を先制され、なおも1死一、三塁のピンチを背負ったが、中村奨に外角低めのカットボールを打たせ、投ゴロ併殺に仕留めた。味方打線が逆転し2-1となった直後の5回は先頭の7番・山口以降3者凡退で片づけ、最少失点でマウンドを降りた。
辻発彦監督は試合後、「こいつの性格はよくわからん。(チームの連敗を)止めたい気持ちは強かったと思うけれど、おっとりしていて、緊張もせずに投げているように見えた」と弱冠20歳の度胸に舌を巻いた。上間自身、「チームが連敗していたことについては、性格的にあまり気にならない方なので……」とあっけらかんとしたものだ。
ストレートの最速は146キロにとどまったが、カットボール、スライダー、カーブ、シンカーを丁寧にコーナーへ決めた。四球から自滅するケースが目立つ埼玉西武投手陣にあって、制球が良く大崩れしない安定感は出色だ。辻監督は「そういう所だよ! 無条件で四球を与えずストライクゾーンで勝負すれば、相手が打ち損じることだってあるんだから」と膝を打った。
「永遠」という名前の由来について、「『何事も長く続くように』という意味だそうです。野球が1番長く続いていますね」と笑う上間。1軍ではデビュー戦の5回1/3、83球が最長。この日も5回80球でマウンドを降りた。信頼度を増した若武者は次回登板以降、先発の柱の1人としてもっと長いイニングを任されるはずだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)
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