宮城出身の楽天・岸孝之「ずっと思っています」震災から10年、悲願Vへの思い

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2021.3.11(木) 12:23

楽天・岸孝之※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)
楽天・岸孝之※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)

千葉ロッテ戦で5回2安打1失点、昨季は腰の違和感で開幕出遅れも今季は順調調整

 今季の楽天・岸孝之投手は、昨季と大違いだ。9日の千葉ロッテとのオープン戦(静岡)に先発し、5回2安打3奪三振3四球1失点。順調な仕上がりを見せた。開幕までにあと2度のオープン戦登板を経て、30日にこの日と同じ千葉ロッテ戦(ZOZOマリン)で今季公式戦初マウンドを踏む見通しだ。【宮脇広久】

「岸はすごくいいボール投げていた。例年に比べて1番いい感じで過ごしてくれている」と頬を緩めたのは、石井一久監督。さらに「シーズン開幕までもうちょっとあるので、完成形のピッチングをしているわけではない。いろいろ試しながら変化球を使っていた。これから準備万端という感じになるのだと思います」と続けた。開幕まで約3週間分の余白を残しているところがまた心憎い。

 ストレート、カーブ、スライダー、チェンジアップを一通り投げた中で、初回先頭の藤原に対しては、4球オール速球で空振り三振。2回1死走者なしで迎えた菅野には、初球と2球目はチェンジアップ、3球目からは6球連続でストレート、9球目と10球目はまたチェンジアップ。四球で歩かせた。この日はこのように同じ球種を続けるケースが目立ち、感触を蘇らせる意図がうかがえた。

 1年前とは対照的だ。昨年は3月のこの時期に、腰の違和感を訴え離脱。開幕ローテ入りも逃し、昨季トータルで登板11試合、投球回は規定投球回数(120)に遠く及ばない67回1/3に終わった。7勝0敗の数字は立派だが、先発投手はイニング数を稼げなければ「よく働いた」ことにならないことは、15年目・36歳のベテラン自身よくわかっている。今季年俸も5000万円減の2億5000万円(金額は推定)となり、巻き返しへの思いは並々ならぬものがある。

震災発生時は埼玉西武に所属「東北の皆さんがすごく喜ぶのを見ていた」

 今年の春季キャンプでは初日から連日ブルペン入りし、期間中の投げ込みは合計1000球を超えた。体調の良さがうかがえ、気合がみなぎっていた。小山伸一郎投手コーチは「(好調の要因は)キャンプを通じて、しっかり投げ込むことができたからじゃないですかね。もともとそういう(球数をこなして調子を上げる)投手なので。シーズンオフの過ごし方がしっかりしていたということでしょう」と評した。

 2日後の11日は、東日本大震災発生からちょうど10年。地元・仙台市出身の岸は「近づいたからといって特別思うことはない。(今年で)10年と聞いてから、ずっと思っています」と述懐する。

 震災が発生した2011年も、楽天が被災者へ歓喜の日本一を贈った2013年も、岸はライバルチームの埼玉西武に所属していた。2016年オフにFA移籍し5年目。「(2013年は)対戦相手として、東北の皆さんがすごく喜ぶのを見ていた。優勝することで、こんなに喜ぶ方々がいるんだと感じた」と振り返る。

「僕がというより、チーム一丸となって(地元ファンに)喜んで頂けるように」と肝に銘じて臨むシーズン。いかにも東北人らしく、口数は少なく、声も張らないが、胸に秘めた思いは誰よりも熱い。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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