元メジャーリーガー 長谷川滋利の愛読書 【野球人の愛読書 Vol.2】

パ・リーグ インサイト

2021.3.3(水) 12:00

元メジャーリーガー 長谷川滋利の愛読書(C)PLM
元メジャーリーガー 長谷川滋利の愛読書(C)PLM

 野球を愛する人は、どんな本を読んでいるのか。

 本連載では「野球人の愛読書」と題して、選手やOBをはじめ、野球に関わる仕事をされている方のイチ押しの本をコメント付きで紹介する。長いオフシーズンに野球人の愛読書を巡る“旅”に出よう。

 野球人の愛読書は、野球ファンの必読書!

 第2弾は、元メジャーリーガーで、現在はオリックスのシニアアドバイザー・プロゴルファーとして活躍する長谷川滋利さんの愛読書。

本は、ときに人生の大きな転機となる

 1日に2~3時間ほど読書をするという長谷川さんは仕事柄、日本と米国を往復することも多く、時差で眠れないときのために「常に本を読める状態にしている」という。移動の際や就寝前に本が読める状態ではないと落ち着かないのだとか。ビジネス書から投資、小説までジャンルを問わず本を読む。

 そんな長谷川さんが本を読むようになったきっかけは、メジャー5年目のシーズンで肩を痛めて故障者リスト(DL)入りした時のこと。その期間は数週間ほどとそれほど長くなかったものの、「このまま野球ができなくなったら、自分には何ができるのだろう」と不安に駆られたのだという。「そこで、それまで読んでいたメンタルの本や経済誌、新聞などに加え、投資本や自己啓発の本を読むようになりました」と長谷川さん。しかも、1度読んだ本をもう1度読んで、新たな発見をして理解を深めるという徹底ぶりだ。

 マリナーズ時代には遠征バッグに10数冊の本を入れていたため、クラブハウスのスタッフに「シゲのバッグには死体でも入っているのか? 重すぎるぞ!」と言われたほど。さまざまなジャンルの本を読んできた長谷川さんの選りすぐりの愛読書3冊を紹介する。

1冊目『金持ち父さん貧乏父さんーアメリカの金持ちが教えてくれるお金の哲学』



・著者 ロバート・キヨサキ、シャロン・レクター
・訳  白根美保子
・出版社 筑摩書房
・刊行日 2000年11月
・電子版 無 (2021年2月現在)

〇本のひとこと紹介
資産と負債の違いを明確にし、「お金」について教えてくれる書。お金を稼ぐこと=勤勉に働くことという概念を覆し、学校では教えてくれないお金の仕組みについて説明する。人生を変えるきっかけになる本として世界中でロングセラーとなった。

〇おすすめコメント
メジャーリーグ5年目のシーズンにDL入りしたときに読んだ本です。この本に出会えたから、今の自分がある。でもこの本に出会わなかったら、もう少し現役生活が伸びていたかも(笑)。

この本を読んだときは衝撃が走りました。不労所得で生活していくのが、どれだけ有効な生き方か。「持ち家は負債だ」という考え方は私のそれまでの考え方を覆し、将来の人生設計について考えされてくれた名著です。たくさんの経済書、投資本、自己啓発本が紹介されており、そこから派生してどんどんそれらの本を読むようになりました。

また、その当時続編に日本語訳版がなかったので、電子辞書片手に英語版をエンゼルスのクラブハウスで読んでいた思い出があります。


2冊目『ザ・シークレット』



・著者 ロンダ・バーン
・訳 山川紘矢 山川亜希子 佐野美代子
・出版社 KADOKAWA
・発売日 2007年10月 
・電子版 有

〇本のひとこと紹介
人生を成功に導く「偉大なる秘密」とは? 元はロンダ・バーンによる約20名の成功者のインタビューを集めた映画で、その後出版された自己啓発書が本著。

〇おすすめコメント
購入した当時はまだ電子書籍がなかった頃で、寝室、書斎、オフィスにそれぞれ1冊ずつ買った私のバイブル。引き寄せの法則のことが言葉を変えて何度も述べられていて、気分の冴えないときに本書を読んで気分を良くしました。
 
これまでにも、アール・ナイチンゲール著『人間は自分が考えているような人間になる』を読んで感銘を受けましたが、それよりも、より具体的にわかりやすく書かれています。

健康で120歳まで生きたい私は、この本の「健康の秘密」の章を健康に不安になった時は、朝から読み返して、1日健康に生活する習慣をつけています。そのほかにも「お金の秘密」「人間関係の秘密」など私が興味のある分野のことが、わかりやすく書かれています。

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3冊目『フローゴルフへの道』



・著者 ジオ・ヴァリアンテ
・訳 白石豊
・出版社 水王舎
・発行日 2014年9月
・電子版 有

〇本のひとこと紹介
大学教授でありながら、世界最高峰であるPGAツアーのトップゴルファーたちのメンタルサポートを行っているヴァリアンテが綴る。選手の能力を120%発揮させ、究極の集中状態へと意図的に導く独自の指導方法を体系的に述べた本で、ゴルフだけでなく、すべてのアスリート、ビジネスマンにも通じるメソッドが数多く紹介されている。

〇おすすめコメント
ツアープロを目指す今の私にとっての必需本。毎年、10ヤード伸びるという新しいドライバーが発売され、スーパースローでゴルフスイングのメカニックを丸裸にしても、数十年前とゴルファーの平均スコアは変わっていません。

その理由は、ゴルフはメンタルのスポーツで、どれだけ技術や用具が良くなっても自分との勝負に負けてしまっては上達しないから。この本では、いわゆる“ゾーン”に入ることをフローゴルフと呼びますが、その状態に入るにはどうすればいいかが丁寧に説明してあります。

私はこの本は、10回以上はもう読み返していますし、本全体を私が読み上げて、携帯電話でいつでも聞けるようにしています。それくらい、何度読んでも読み足りないと思うほど、ゴルフ、人生のメンタルタフネスをつくり上げてくれる名著です。


野球人の愛読書を巡る 本の旅

 本は人生を変えてくれる。新たな世界へと導く本と出会った瞬間の衝撃と感動は忘れられない。本にはそれだけの力がある。日米の野球という大舞台で活躍し、現在は米国でプロゴルファーとして活動している長谷川さん。メンタルトレーニング(自己啓発)のオンラインサロンの経営や自叙伝の執筆など、さまざまなことに挑戦するタフな精神力を辿ると「本」という大きな存在があるのかもしれない。

 本の読み方は十人十色であり、感じ方もまた人それぞれである。なにより本は自分の知らない世界に連れて行ってくれるものである。オフシーズンのおうち時間に「本の旅」をしてみてはいかがだろうか。


長谷川滋利
1968年兵庫県生まれ。オリックスやエンゼルス、マリナーズで投手として活躍。メジャーリーグ通算517試合登板は日本人歴代1位。オンラインサロン「長谷川滋利のメンタルトレーニング」を経営。著書には『一球の心理学-勝敗をわける分ける微妙なアヤを読み解く』 (2008年5月 :ダイヤモンド社) 『メジャーリーグここだけの話』 (2010年8月 :講談社)など多数。パシフィックリーグマーケティング株式会社所属。
公式サイト https://shiggyhasegawa.com/


文・岡絃哉

参考文献
・株式会社筑摩書房 サイト 改訂版 金持ち父さん貧乏父さん
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480864246/
・株式会社KADOKAWA サイト ザ・シークレット
https://www.kadokawa.co.jp/product/200611000295/
・株式会社水王舎 サイト フローゴルフへの道
https://www.kadokawa.co.jp/product/200611000295/

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