智弁和歌山の先輩・東妻から決勝のタイムリーを放つ
今季から現場の指揮も執る楽天・石井一久GM兼監督が、チームの次代を担うスター候補にあえて高いハードルを課している。2年目・19歳の黒川史陽内野手が18日の千葉ロッテとの練習試合(沖縄・金武)に「7番・二塁」でフル出場し、3打数3安打1打点と爆発したが、まだまだ手綱は緩めない。
黒川は2回の第1打席で中前打を放つと、4回の第2打席では詰まりながらも、打球をレフト、センター、ショートの真ん中にポトリと落とし、相手守備の混乱に乗じて一気に二塁を陥れた。1-1の同点で迎えた6回2死二塁では、高校の先輩である東妻の速球を中堅右へはじき返し決勝点をもぎ取った。
若手の期待株は、これまでの練習試合2試合では計8打数無安打と結果が出ていなかっただけに「常に誰にも負けたくない、1番アピールして目立ちたいと思っています」と笑みを浮かべた。「どうすれば結果が出るかと考えながら打席に入りました。これまで基本的に真っすぐに対応できていなかったので、高めの真っすぐに打ち負けないようにと心がけました」と明かした。
さらに「試合中に(ベンチ裏の)クラブハウスで、島内(宏明外野手)さんから『禁断の果実を食べたら打てるで』と勧められたリンゴを食べたら、(決勝打を)打てた」とエピソードを披露したあたり、気が利いている。
二塁の守備でも再三、二遊間、あるいは一、二塁間を抜けそうな強いゴロに追いつき、ベンチから「球際がいいよ!」と称賛の声が上がっていた。
黒川「詰めていかなければいけない部分はたくさんある」
智弁和歌山高時代は1年生の夏から5季連続甲子園出場を果たし、ドラフト2位で入団した右投左打のスラッガー。昨季は高卒ルーキーにして1軍に昇格し、9月4日のオリックス戦でプロ初出場をスタメンで飾ると、初打席で犠飛を打ち上げ初打点をマークするなど、ブレークへの足掛かりを作った。おまけにイケメンでもある。
ところが、手放しで絶賛とはいかなかったのが石井監督だ。「結果は出ている。しかし、2年目の選手にあえて厳しいことを言えば、守備でカバーリング、返球の精度などを磨いていかないと。(現状では)1軍のレベルに達していない。その辺が今後の課題」と釘を刺した。黒川も「守備でも打撃でも、詰めていかなければならない部分はたくさんある」と謙虚に受け止めるしかなかった。
本職の二塁には、昨季本塁打王の浅村栄斗内野手が鎮座。内野の他のポジションを見渡しても、三塁に主将の茂木栄五郎、遊撃に惜しくも昨季新人王を逃した小深田大翔、一塁に鈴木大地と付け入る隙がない。
石井監督にしてみれば、未熟な部分に目をつぶってまで黒川を起用しなければならない状況ではない。センス抜群の若武者だけに、今季中に内野の一角を崩すくらい成長を見せるなら、チームも勢いづくだろうし、ベテランの背中を見ながら着実にレギュラーとしての技能を習得するのも悪くはない。黒川は指揮官のゲキをどう受け止めるか。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)
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