なぜ松中信彦臨時コーチを招聘したのか? 千葉ロッテ井口監督が独白「僕も同じ意見」

Full-Count 佐藤直子

2021.2.6(土) 16:30

千葉ロッテ・井口資仁監督※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)
千葉ロッテ・井口資仁監督※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)

就任4年目・井口監督のリアルな声を毎月届ける連載スタート

 2月1日、12球団が一斉にキャンプインし、プロ野球2021年シーズンがスタートした。目指す日本シリーズ優勝に向けて、オフには各球団が戦力を補強。どんなチームに仕上がっているのか、ファンは興味が尽きないところだろう。

 昨季リーグ2位となった千葉ロッテは、就任4年目を迎える井口資仁監督の下、2010年以来11年ぶりの日本一をつかみにいく。指揮官はこの3年間で1・2軍を通じた意思統一の徹底や育成システムの構築など“土台作り”に着手。2017年に球団史上ワーストとなる87敗を記録したチームは、福岡ソフトバンクとの優勝争いを演じるまでになった。

 チームスローガンに「この1点を、つかみ取る」を掲げ、混戦必至のパ・リーグで頂点を目指す今季。「Full-Count」では、2月から井口監督の連載コラムがスタートする。戦いのど真ん中に身を置く指揮官が何を思い、どんな信念をもってチームを率いるのか。毎月届くリアルな声を通じて、井口監督の哲学を伝える。

 第1回は、先日発表したチームの中長期的ビジョン「Team Voice」、そして今季スローガンに込められた想いについて語る。【取材・構成/佐藤直子】

 ◇ ◇ ◇

 今年も沖縄・石垣島でキャンプインしました。監督として迎える4度目の春。第1クールは少し肌寒い日もありましたが、順調なスタートが切れたと思います。新型コロナウイルス感染症の影響で、今年はファンの皆さんがいない静かなキャンプ。我々にとって、ファンの皆さんに見ていただき、声援を送ってもらうことは大事なポイントの1つなので、少し収まりが悪い感じも否めません。

 無観客で開幕を迎えた昨年は、応援の有り難さを再確認させてくれる機会にもなりました。応援スタイルが変化し、声援の代わりとなったのが拍手。打った時や点が入った時、一斉にファンの大きな拍手で迎えてもらう。そんな新たな習慣もいいな、と僕は思います。

 マリーンズは今年、新たな試みとして「Team Voice」を発表し、中長期的なビジョンをファンの皆さんと共有しています。この「Team Voice」は、ファンの皆さんが思っていること、我々が感じていることが、そのまま言葉になっているものです。

 いつまでも「下剋上」と言っているのではなく、リーグ優勝しなければいけない。では、優勝するためにはどうしたらいいのか。当然、我々の意識をもっと変えていく必要があります。CSに行けたから優勝できるんじゃないか、千葉ロッテはCSで強い…そう言われているようでは、このチームはまだまだダメ。とにかくリーグ優勝を目指してやっていこう。それを選手はもちろん、ファンの皆さんにも意識していただき、心を1つに目指そう。「Team Voice」には、そんな願いが込められています。

今季のチームスローガン「この1点を、つかみ取る」※写真提供:Full-Count(写真提供:千葉ロッテマリーンズ)
今季のチームスローガン「この1点を、つかみ取る」※写真提供:Full-Count(写真提供:千葉ロッテマリーンズ)

勝つために「この1点」を求める徹底采配「応えられなければ、容赦なく入れ替える」

 その中で生まれた今年のスローガンが「この1点を、つかみ取る」。「この1点」と言っても、漠然と考えている選手もいると思うので、1点が持つ価値をもっともっと深掘りして、1点を取るための意識を変えていこう、とミーティングでは話しました。

 走者であれば1つ先の塁を狙ったり、打者は1死二塁でアウトになっても走者を進めて2死三塁としたり。守備で言えば、走者一塁でどうやって盗塁を防ぐか。バッテリーだけではなく、二遊間のタッチ1つでアウトになるかもしれない。投手も1点を取られないための工夫はできる。

 どう1点を取るか、どう1点を守り切るか。チーム全員が1つのボールに対して、そして野球そのものに対して、もっと意識を高めていこう、という想いが込められています。

 就任からこの3年間、チームの土台作りから始まり、ようやく優勝争いができるラインまで来ました。これを1、2年で終わらせるのではなく、5年後も10年後も常に優勝争いするようになるためには、もう1つ意識を高めたいところです。

 ご存じの通り、パ・リーグは投手のレベルが高く、なかなか1点を取るのが難しい。その中で、たとえば走者三塁であればゴロでもホームインすることもできます。ヒットやホームランじゃなくても点が取れると分かっていれば、打者は引き出しが増えてもっと楽に打席に立てる。何ができるのか、最低でも何をするべきなのか。そこを選手が考えて、みんなで共有できれば、もっと勝てるはずです。

 今年はとにかく「この1点」を求めて采配するので、そこに対して選手はどうアプローチするのか。いつまでも同じでは後退しているのと一緒。当然、選手に求めるものは毎年高くなっています。ただ、それに応えられなければ、今年は容赦なく入れ替えていくことも伝えました。

 その代わり、こちらも引き出しを増やすきっかけは用意しています。松中(信彦)さんにキャンプでの臨時コーチをお願いしたり、森脇(浩司)さんを1軍野手総合兼内野守備コーチとして招いたことも、その一環です。

優勝するには「選手を変える前に、コーチも変わらなければいけない」

 昨年の課題の1つは打線でしたし、日本人の長距離打者がほしいところ。特にマリーンズは左打者が多いので、平成唯一の3冠王でもある松中さんからいろいろ学んでもらいたいですね。ボールのスピンの掛け方や下半身の使い方など、長距離打者には長距離打者なりの打ち方がある。バッティングで一番大事なのは下半身の使い方だという点では、僕も松中さんも同じ意見。いい打者はみんな下半身を使って打っています。練習方法も含め、最終的には選手がチョイスするわけですが、いろいろな選択肢を与えていければと思います。

 森脇コーチに関しては、選手はもちろん、コーチ陣の指導もしてほしいという想いがあります。選手を変える前に、コーチも変わらなければいけないし、学ばなければいけない。森脇コーチは監督まで経験なさった方。作戦面でも勝つためにもっとやるべきことはあるはずですから、僕自身もいろいろ勉強したいと思います。妥協を許さない方なので、選手は練習量もかなりハードになるでしょう。ただ、チームがここからもうひと伸びするためには、必要なコーチです。

 キャンプでは、チーム内の競争に期待しています。とにかく昨年はレギュラーを獲れるような成績を残した選手は1人もいない。まずはチーム内でしっかり競争しないと。特に今回の1軍キャンプは若手が中心なので、中堅・ベテランが合流する前が勝負。ポジションを勝ち取る意識で日々過ごしてもらいたいと思います。

 今年は勝負の年だと思っています。もちろん、連覇しているホークスがいて、田中将大投手が加わった楽天がいる。埼玉西武打線も復活を狙うでしょうし、北海道日本ハム、オリックスも手強い。だからこそ、やるべきことをしっかりやって、5チームの上を目指していきたいと思います。

 この3年で選手も成長し、CSや優勝争いができるようになったのだから、次に目指すのは頂点しかない。僕自身、常に優勝争いをするチームを作る約束をして監督をやらせてもらっているわけですから、そこはビジョン通り、目指していきます。期待していて下さい。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

記事提供:Full-Count

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Full-Count 佐藤直子

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