新型コロナウイルスの影響で日常が奪われた2020年。誰もが先行きに不安を感じつつ開幕したプロ野球、そして白球を追いかける野球選手の姿は多くの野球ファンに希望と元気を与えただろう。野球ができる喜び、野球を見ることができる喜びをあらためて感じたシーズンだった。
感染収束の兆しがみえないなか、プロ野球は福岡ソフトバンクの日本シリーズ4連覇で激動の2020年シーズンが幕を閉じて、野球ファンにもオフシーズンが訪れた。そこで、長いオフシーズンに野球人の愛読書を巡る”旅”をしていただこう、ということで連載をスタートする。
野球人の愛読書は、野球ファンの必読書! 野球を愛する人は、どんな本を読んでいるのか。
第1弾は、「パーソル パ・リーグTV」や弊誌「パ・リーグインサイト」を運用する、パシフィックリーグマーケティング株式会社(PLM)代表取締役CEO根岸友喜の愛読書!
年150冊を読破する読書家
物心ついた頃から、読書が好きだったという根岸。幼少期、部屋の電気を消されても本を読み続けていたほどの読書家は、大人になった今でも年間100~150冊ほど読破する。「海外出張などで長時間飛行機に乗る際には、本を10冊以上準備して移動時間に読みまくり、読み終えた本はどんどん捨てていく」そうで、本が詰め込まれて重たかったスーツケースは、帰りには軽くなっているのだとか。
興味を持った領域の本はとことん読み漁り、自身で「大人の自由研究」と名付けその領域の研究をする。ちなみに今夏は西武グループ創設者の堤家に関する研究、昨冬は太平洋戦争中の日本軍の意思決定についての研究をした。
そんな「超」がつくほどの読書家・根岸の選りすぐりの愛読書3冊を一気にご紹介。
1冊目『全文完全対照版 論語コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文』
・著者 野中根太郎
・出版社 誠文堂新光社
・発売日 2016年12月07日
・電子版 有
◯本のひとこと紹介
仲間とは?家族とは?人間とは?人生とは?
そして日本人が世界に誇る特性、信義、誠実、勤勉、礼儀正しさの本質とは何なのか?
読むたびに気づきを得る“東洋の大古典”論語の世界。ただ読み流すのではなく、各項の本質をつかみたい。全文の現代語訳、書き下し文、原文に加え、覚えやすい「一文超訳」が掲載され、初めて論語の世界に触れる人にもおすすめ。
◯おすすめコメント
私は古文は得意ではないので原典では読みません。全て現代語に訳された解説を読みます。解説本は多く出版されているので、新しい本が出るたびに読むようにしています。同じ原典でも、本によって意味合いや訳し方が異なるので。
その中でも「論語コンプリート」は、一文一文が丁寧に解説されているので、大変読みやすいです。
「論語」を好む理由は、人間として生きるにあたり、大切にしなければならないことが書かれているからです。例えば、人間とは何か? 人生とは何か? 学ぶとは何か? 家族とは何か? のような事柄です。私自身がどのような人間になりたいか? を考える際に、いつも多くのヒントとアドバイスをいただける本です。
2冊目『ポジティブ心理学の挑戦』
・著者 マーティン・セリグマン
・出版社 ディスカバー・トウェンティワン
・発売日 2014年10月29日
・電子版 有
◯本のひとこと紹介
『この本は、ずっと続く幸せを手に入れるために役立つ1冊だ』。国際的に著名な心理学者マーティン・セリグマンの力強い約束の言葉で始まる。幸福を追い求めているだけでは、人生に意味が生まれることはない。「何が人をずっと幸せにするのか?」を問うている。
◯おすすめコメント
私の解釈では、伝統的な心理学はマイナスをゼロにする、あるいはマイナスを減少させるイメージがあるのですが、著者が提唱する心理学は、ゼロをプラスにする、あるいはプラスをさらにプラスにするイメージです。
人間にとって、自分にとって、社会にとっての、本当の幸福とは何かを考えさせてくれます。そのなかでも彼が提唱する人間にとっての「5つの幸せ」、1. 達成、2. 快楽、3. 没頭、4. 良好な人間関係、5. 意味合いは、今でも私のフレームワークのひとつになっています。
3冊目『「失敗の本質」日本軍の組織的研究』
・著者 戸部良一、寺本義也、鎌田伸一、杉之尾孝生、村井友秀、野中郁次郎
・出版社 ダイヤモンド社
・発行日 1984年05月
・電子版 有
文庫版
・出版社 中央公論新社
・発売日 1991年08月10日
◯本のひとこと紹介
大東亜戦争での諸作戦の失敗を、組織としての日本軍の失敗ととらえ直し、これを現代の組織一般にとっての教訓とした戦史の初めての社会科学分析。
◯おすすめコメント
私がビジネスなどにおいて、組織を構築する際と運営する際にとても参考にしています。何が成功するかわからない現代ですが、一方で何をやると失敗するかは時代問わず普遍的であると考えています。
また、当時の日本軍組織の研究を進めると、その特徴が現代の日本社会や組織にも同じようなことが多く残っていると感じます。私はそれらの事実を自分の中のアラートとして位置付けており、そのアラートが鳴った際はどのように意思決定すべきか、を常に考えています。
野球人の愛読書を巡る 本の旅
野球には社会を元気にする力があると信じ、だれもやらなかったような事業を開拓する。本から、現代にも通じる人間の本質や組織づくりに触れ、さまざまな視点から必要なエッセンスを取り入れて新しいものを構築する。それが根底にあるのだろう。
本の読み方は十人十色であり、感じ方もまた人それぞれである。なにより本は自分の知らない世界に連れて行ってくれるものである。オフシーズンのおうち時間に「本の旅」をしてみてはいかがだろうか。
根岸友喜
パシフィックリーグマーケティング株式会社代表取締役CEO
1976年生まれ。JTBとJ&Jでセールスとマーケティングを経験した後、2007年に楽天野球団に入社。2017年より現職。
文・岡絃哉
参考文献
・株式会社誠文堂新光社 サイト 全文完全対照版 論語コンプリート
https://www.seibundo-shinkosha.net/book/general/20266/
・株式会社中央公論新社 サイト 失敗の本質
https://www.chuko.co.jp/bunko/1991/08/201833.html
・株式会社ディスカバー・トゥエンティワン サイト ポジティブ心理学の挑戦
https://d21.co.jp/book/detail/978-4-7993-1576-7
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