2020年は史上初めて全12球団が参加。パ・リーグ6球団の育成ドラフト「当たり年」は?

2020.11.12(木) 11:00 パ・リーグ インサイト 望月遼太
(C)パーソル パ・リーグTV
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育成選手から支配下登録を勝ち取れる選手は、全体の中でもほんの一握り

 育成選手としてプロ入りした選手が、後に一軍の舞台でチームの主力として活躍する。そういった光景も、今では普遍的に見られるものとなってきた。そういった流れもあってか、2020年のドラフト会議では、史上初めて全12球団が育成ドラフトに参加している。各チームの育成選手に対する意識は、より大きくなりつつあると言えるのではないだろうか。

 ただ、プロ入り後に育成選手から支配下登録へと移行できるのは、ほんの一握りにすぎない。厳しい競争の中で2桁の背番号を勝ち取る選手を1名でも輩出すれば、その年の育成ドラフトは一定の成果を挙げたといえる。もっとも、育成ドラフトの最終的な目標は、あくまで一軍において戦力となる選手の獲得と育成。その域にまで至った選手を指名できた年は、球団にとってはいわゆる育成ドラフトの「当たり年」となるだろう。

 今回は、パ・リーグ6球団の過去の育成ドラフトの中で、とりわけ大きな成果を挙げた年(1年~2年)の指名について、各球団ごとに紹介しよう。その年のドラフトで指名された全選手の顔ぶれ、ならびに各選手の通算成績を見ていくとともに、その中で出色の活躍を見せた選手たちの経歴も振り返っていきたい。(成績は2020年11月10日時点)

北海道日本ハムファイターズ

 北海道日本ハムは育成選手制度を利用し始めたのが2018年からということもあり、育成ドラフトに参加した回数自体が、昨季までで2回のみと非常に少なくなっている。必然的に、今回の考察対象となるのも2年間のうちのどちらかとなるが、そうなれば球団史上初めて、育成ドラフトを経由して支配下昇格を勝ち取った選手となった樋口選手を輩出した、2019年のドラフトが現時点では最高のものとなるだろう。

 独立リーグを経て25歳でプロ入りした樋口選手はイースタン・リーグで12本塁打、打率.342、出塁率.441、OPS1.092と、二軍においてはプロ1年目から圧巻の打棒を披露。この活躍が認められて9月22日に支配下登録を勝ち取ると、一軍でも10月25日にプロ初本塁打を記録。一軍の舞台では打率1割台中盤と壁に直面したが、今後のさらなる活躍が期待されるところだ。

東北楽天ゴールデンイーグルス

 楽天は育成ドラフト導入当初から、1度の会議における指名選手こそ多くはないものの、定期的に支配下登録を経て一軍の戦力となる選手を輩出してきた。その中でも、2008年に揃って支配下に昇格し、一軍の舞台で1・2番コンビも組んだ中村氏と内村氏を獲得できた2006年と2007年のドラフトは、選手層の薄かった時期のチームにとっても、大きな意義のあるものとなった。

 中村氏はプロ2年目の2008年に支配下に昇格すると、同年は49試合に出場して打率.292、出塁率.346と、チャンスメーカーとして活躍を見せる。続く2009年には外野の主力として101試合に出場して打率.270を記録し、球団創設以来初となるAクラス入りにも大きく貢献した。ストライクゾーンから大きく外れた球であっても安打にする独特の「悪球打ち」と、持ち前の俊足を武器として、発足間もない時期の楽天を支える存在の一人となった。

 内村氏も2008年に47試合で打率.289と奮闘し、2年後の2010年には111試合に出場して打率.304、出塁率.367と出色の打撃を披露。続く2011年にも123試合で打率.271と一定の数字を残し、二遊間と外野を守るユーティリティ性も活かして主力として躍動した。2012年は打率1割台と苦しみ、シーズン途中に横浜DeNAへと移籍。その後はレギュラー定着には至らなかったが、163cmの小兵は自らの武器を活かし、プロの舞台でも大いに存在感を放った。

埼玉西武ライオンズ

 埼玉西武の育成ドラフト出身者として一軍の舞台で最も活躍したと言えるのは、2012年のドラフトで指名を受けた水口選手だろう。独立リーグの2つのチームを経てプロ入りを果たした水口選手は、プロ3年目の2015年に支配下登録を勝ち取る。翌2016年に一軍デビューを果たすと、出場機会は少ないながら6打数3安打、打率.500と結果を残す。2017年には56試合に出場して打率.280を記録し、内外野のバイプレーヤーとして奮闘した。

 また、現時点では一軍での実績には乏しいものの、1位の高木渉選手、2位の齊藤誠人選手が、ともに支配下への昇格を果たした2017年の育成ドラフトも、成果としては一定以上のものがある。高木選手が20歳、齊藤選手が25歳とそれぞれまだ若く、今後の伸びしろも十分。両選手の今後の活躍によっては、この2017年が球団史上最も「当たった」育成ドラフトになる可能性もあるだろう。

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千葉ロッテマリーンズ

 千葉ロッテは育成ドラフト導入初期から、積極的に育成選手の指名を行ってきたチームの一つだ。その中でも2008年に行った指名は、チームの育成ドラフトの歴史の中でも指折りの成功例といえる。この年に入団した西野投手は5位、岡田氏は6位と、同年の育成ドラフトの中でも下位の指名だった。しかし、プロに入ってから両選手は自らのプレーによってその高い実力を証明し、後に一軍の舞台でも大きなインパクトを残す存在となっている。

 西野投手は2012年のオフに支配下登録を勝ち取ると、2013年には先発として防御率3.80で9勝をマーク。翌2014年からは抑えに回り、防御率1.86で31セーブという見事な投球を見せた。2015年にも防御率1.83で34セーブと抜群の安定感は変わらず、2014年からの3年間で86セーブを記録した。その後は相次ぐケガに悩まされ、今季も故障で戦列を離れているが、2019年には先発とリリーフを兼任し、防御率2.96と復活の兆しを見せている。

 岡田氏は2009年に支配下登録へ移行し、2010年に一軍に定着。同年の日本シリーズでは勝てば日本一となる第7戦で、延長10回に決勝点となる値千金の適時三塁打を放った。翌年にはレギュラーとして全試合出場を果たし、そこから2年連続でゴールデングラブ賞を受賞。2011年から6年連続で100試合以上に出場し、俊足と鉄壁の外野守備を活かして、主力として長年にわたって千葉ロッテを支える存在となった。

 近年においても、2015年に指名された柿沼友哉選手、2017年に入団した和田康士朗選手と、育成ドラフトで指名されてチームの一員となった選手が、今季のチームにおいても貴重な戦力として活躍を見せている。こういった歴史を振り返ってみても、千葉ロッテは育成ドラフトにおいて、総じて一定以上の成功を収めているチームの一つと言えそうだ。

オリックス・バファローズ

 2016年のドラフトは、支配下選手の指名でも1位で山岡泰輔投手、2位で黒木優太投手、4位で山本由伸投手、5位で小林慶祐投手、8位で澤田圭佑投手と、一軍で活躍を見せた投手たちを数多く輩出した、大成功のドラフトだったといえる。そのうえ、育成ドラフトにおいても、1位から3位までの投手がいずれも支配下に昇格し、既に一軍の舞台で存在感を発揮。2005年の球団合併以降では指折りの、大豊作のドラフトと形容できるはずだ。

 張投手は外野手としては芽が出なかったが、2018年途中に投手に転向すると才能が開花。2019年に支配下登録され、一軍で先発として2勝をマークした。榊原投手は2018年開幕前に支配下へと移行し、同年終盤には先発陣の一角に。2019年は故障で長期離脱を強いられたものの、13試合で防御率2.72と一線級の投球内容を示した。神戸投手もプロ3年目の2019年途中に支配下となり、同年には一軍でも19試合で5ホールド、防御率3.86と奮闘した。

 今期は張投手が先発陣の一角に加わり活躍を見せたが、榊原投手と神戸投手は前年同様の勢いは見せられず、やや成績を落としている。それでも榊原投手は22歳、神戸投手は26歳とまだ若く、壁に当たった今季の経験を糧に、さらなる成長も期待できる状況だ。今後の3投手の活躍ぶりによっては、現時点でも十二分に成功と呼べるだけの成果を残しているこの年のドラフトが、後年になってさらなる高評価を受ける可能性も大いにあるはずだ。

福岡ソフトバンクホークス

 福岡ソフトバンクにおける育成出身者の活躍は枚挙に暇がないが、その中でも特に成果のあったドラフトが、2010年と2017年といえるだろう。とりわけ2010年は押しも押されもせぬエースとなった千賀投手と、同じく不動の正捕手へと成長した甲斐選手が揃って入団。球界を代表する選手が2名も指名されたというだけで大成功と呼べるドラフトだが、それが育成選手としての入団だったということが、なおのことスカウト陣の眼力の高さを感じさせる。

 また、この年の育成ドラフト5位で入団した牧原選手も、俊足と内外野をこなす汎用性を活かし、現在も一軍戦力として活躍している。5年連続2桁勝利を継続中の千賀投手、4年連続で100試合以上に出場している甲斐選手を含め、現チームの主力を3名輩出したこの年の育成ドラフトは、3年連続日本一の快挙にも大きく寄与したものであると言えそうだ。

 また、2017年の育成ドラフトでも、指名された6名中5名が3年以内に支配下へと昇格しており、こちらもかなりの成功を収めたといえる。この中で最大の出世頭と言えるのは、やはり周東選手だろう。2019年の開幕前に支配下に昇格すると、足のスペシャリストとしてセンセーショナルな活躍を披露。2020年は打撃面も向上してレギュラーの座をつかみ、13試合連続盗塁の日本記録も達成。同年のリーグ優勝にも、大きく貢献を果たしている。

 4位指名の大竹投手も2018年途中に支配下に昇格し、同年には一時期先発ローテーションに加わって3勝をマーク。翌年は夏場以降にに調子を崩したものの、6月終了時点で5勝を挙げ、その時点では防御率2.65と好投を見せていた。今季も3試合の登板で2勝、防御率2.30、ウエスタン・リーグでは最多勝、最優秀防御率、最高勝率の三冠と奮闘しており、今後の活躍にも期待がかかる。尾形投手と渡邉投手も今季一軍デビューを果たしており、開幕前に支配下を勝ち取ったリチャード選手共々、来季以降の活躍に期待だ。

育成ドラフトの成功は、チームの中長期的な展望にも好影響をもたらす

 福岡ソフトバンクの2010年の育成ドラフトはまさに会心の指名と呼べるものだったが、千葉ロッテの2008年、ならびにオリックスの2016年の指名も、それぞれ素晴らしい成果を挙げたと言えるだろう。また、楽天も球団発足から間もない時期である2006年と2007年に、それぞれチームの主力となる選手を育成ドラフトで獲得。このように、育成ドラフトをチームの成長につなげたケースは、これまでも少なからず存在してきた。

 北海道日本ハムと埼玉西武はこれまで育成ドラフトで指名した選手自体がそこまで多くないこともあり、現時点ではそこからチームの主力となる選手を輩出できてはいない。とはいえ、近年の育成ドラフトで指名した選手の中にはまだ若い選手も多く、先述の通りに埼玉西武においては、既に支配下登録を勝ち取っている選手も複数存在。今後の各選手の活躍次第では、他球団同様の「当たり年」が生まれてくる可能性も大いにあるだろう。

 育成選手から多くの主力が生まれている福岡ソフトバンクが2020年のペナントレースを制覇したことからもわかる通り、限られた支配下登録枠に囚われない指名ができる育成ドラフトによる戦力増強は、チームの成長や選手層の拡充といった面でも、重要な意味を持ってくる。チームの中長期的展望にも影響を及ぼす可能性を秘めた育成出身選手たちの活躍に、今後も注目してみる価値は大いにあることだろう。

文・望月遼太

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