和田の好投を後押しした初回の声掛け
■福岡ソフトバンク 6-0 オリックス(12日・PayPayドーム)
福岡ソフトバンクは12日の本拠地オリックス戦に快勝。この日のヒーローとなったのは、39歳の和田毅投手と37歳の松田宣浩内野手だった。2人のベテランが試合中に掛け合った言葉とは――。
極度の打撃不振に苦しむ松田が、7月28日以来となるマルチ安打を放った。9番に入った松田が、5回に放った先制の2点タイムリーは和田に勝利投手の権利をもたらし、8回に放ったダメ押しタイムリーは和田の4勝目を確実なものにする一打となった。
松田は5回の先制打を「打ったのはストレート。チャンスだったので積極的にいった」とし「今宮(健太)に繋ぐ気持ちで打ちました」と振り返った。和田は、お立ち台で「マッチが打席に入る前にベンチ裏で『頼むぞ』と声をかけたんです。見事に応えてくれました」と、5回の先制打直前のエピソードを披露。さらに「和田さんに声をかけられたら打つしかないでしょうと言っていました」とも語ったが、その後の囲み取材では「『頼むぞ』の3文字だけで、そんなに脅迫的な感じでは言ってないですよ。でも本当に打ってくれて終始ゴキゲンでした」とニッコリ。
一方の松田は、初回の守りの1アウト後にマウンドの和田に駆け寄って少し長めの声掛けをしていた。「最初のバッターに10球粘られたけど、四球を出すこともなくセンターフライに打ち取ったんでね。『このままいきましょう!』と声を掛けました。打てていないけど、そういう部分で少しでも貢献したいんです」と、その際の話の内容と心境を明かした。
この日は今までにない蛍光ピンクのバッティンググローブを着用
和田は松田の声掛けに応えるように、その後は6球で2人の打者を打ち取り、初回を三者凡退。そこから7回途中、94球での降板までスコアボードに「0」を並べた。「納得がいかなくても試合はあるんでね」と懸命に前を向く。
松田はこの日の2安打で打率がようやく2割に復帰したが、もがき苦しんでいることに変わりはない。「自分の持ち味でもある」と語る積極性が奏功した形だが「初球からいって凡打になることもある。そこは難しいところ」と、現状ならではの迷いを素直に口にする。さらに「今日が2回目のお立ち台。45試合やって2試合しか貢献できていない」とも語った。それでも「ここを抜け出すのは自分の力だけ。必死こいてやるしかない。自分の打撃に納得がいかなくても、毎日試合はあるんでね」と懸命に前を向いている。
この日は今までにない蛍光ピンクのバッティンググローブを着用。「バッティングのパーツを日々変えながらやっていますが、変えるところがもうないんで」と、藁にも縋るような心境を吐露。実際に試合でも巨人の坂本選手モデルとされる自分のバットと、タイプが異なる柳田悠岐のバットを使い分けながら試行錯誤を続けている。
PayPayドームでも上限5千人という入場制限が続いているが、多くのファンが松田の復活を、そして目の前での熱男パフォーマンスを待ち望んでいる。この日の2安打は、そんなファンの期待に応える良いきっかけになるかもしれない。
(藤浦一都 / Kazuto Fujiura)
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