異例の本拠地15連戦を戦った埼玉西武。今季31試合の戦いを振り返る

パ・リーグ インサイト 成田康史

2020.7.28(火) 17:00

埼玉西武ライオンズ・山川穂高選手【撮影:丹羽海凪】
埼玉西武ライオンズ・山川穂高選手【撮影:丹羽海凪】

 6月19日、待ちに待った開幕を迎えたプロ野球。7月10日からは制限付きではあるものの観客の動員が再開され、各球場にファンの声援も戻りつつある。

 一方で、開幕の延期によって各チームとも日程の大幅な変更を余儀なくされた。パ・リーグでは1週間に同一チームと6連戦を行う形式が基本となり、それに合わせた戦い方を各チームが模索している。そしてこの影響を受け、昨季のパ・リーグ覇者・埼玉西武は「開幕から15戦連続で本拠地開催」という異例の日程が組まれた。

 7月27日時点で1位と1ゲーム差の3位に着ける埼玉西武。今回は、開幕から31試合目までの勝敗、主軸の打撃成績、先発陣の登板結果の3項目で2020年のここまでの戦いを振り返っていく。まずは2020年を含めた過去5年間の開幕から31試合目までの戦績を振り返ろう。

開幕から31試合目までの埼玉西武の戦績(C)PLM
開幕から31試合目までの埼玉西武の戦績(C)PLM

 今季は開幕戦こそ勝利したものの、その後は北海道日本ハムに2連敗、続く福岡ソフトバンクとのカードも初戦勝利の後2連敗と流れに乗り切れず。しかし、続く福岡ソフトバンクとの4戦目に勝利すると5戦目、6戦目を制してカード勝ち越し。続くオリックスとの対戦を2勝3敗1分とし、本拠地で戦った開幕15戦を7勝7敗1分と五分の成績で終えた。

 31試合を消化した時点での勝敗は16勝14敗1分、本拠地では11勝9敗1分と2つの勝ち越しを作っている。開幕8連勝と波に乗った2018年を除いて、開幕直後のホーム戦績は五分を前後する数字となっており、概ね例年通りの戦いぶりと見て良さそうだ。

 一方で、31試合時点ですでにホームで21試合を行っている埼玉西武。ファンの声援が戻ってきた中、ペナントを左右する後半戦にこれがどう影響するか注目だ。

 続いて本拠地・メットライフドームでの打撃成績の変化を見ていく。昨季と今季を比較して、本拠地での得手不得手はどのように変化しているだろうか。

本拠地・メットライフドームでの打撃成績の変化(C)PLM
本拠地・メットライフドームでの打撃成績の変化(C)PLM

 昨季の首位打者・森友哉選手、そして4番に座る山川穂高選手の成績がやや伸び悩む結果となった。山川選手は15連戦の中盤にかけて行われた福岡ソフトバンク戦で6戦5本塁打と量産体制に入ったものの、続くオリックスとの対戦では6戦を通じて2安打と振るわず。4番の好不調がそのままチームの戦績に反映されていた。その後はビジターでの楽天戦で3試合連続本塁打を放つなど復調気配。激しい本塁打王争いの中で、獅子の4番が存在感を増しつつある。

 一方の森選手は、開幕12戦目に初本塁打を放つなどなかなか長打が生まれず。敵地での千葉ロッテ戦では20打数6安打と復調の兆しが見えたものの、その後は楽天戦で14打数2安打、本拠地に戻って行われた千葉ロッテとの6連戦でも19打数4安打と苦しいシーズンが続いている。扇の要、そして打線の中心に座る森選手の復調が、チームの浮沈のカギを握っている。

 これに対して開幕から好スタートを切ったのが「骨と牙」こと栗山巧選手、中村剛也選手の2人だ。栗山選手は開幕2・3戦目に猛打賞を記録して気を吐くと、その後もコンスタントに安打を量産。6・7番を中心とした起用ながら、チームでは山川選手に次ぐ2位となる21打点を稼ぎ出し、勝負強い打撃でチームをけん引している。通算2000安打を視界に捉えつつあるベテランは、今季どこまで安打を重ねられるか。

 中村選手も、開幕2戦こそ無安打に終わったが3戦目に猛打賞を記録。続く福岡ソフトバンクとの第1回戦でも3安打を放つと、6月23日には1号本塁打が飛び出した。毎年夏場にかけて本塁打の数を増やしていく中村選手だが、シーズンがずれた今年はどこで量産体制にはいっていくだろうか。

 昨季、本拠地で好調を維持した上位打線が苦戦を強いられた本拠地での15連戦。ベテランの好調さ、そして鈴木将平選手やスパンジェンバーグ選手といった新戦力とのかみ合わせが今後のカギを握ってきそうだ。

 最後に、ここまでに先発した投手の成績を確認してみよう。

投手成績(C)PLM
投手成績(C)PLM

 先発投手を通じての勝敗は8勝14敗で、責任投手となった回数は22回。これは連戦が続くことや一軍登録枠が特例によって増えていること、そして守護神・増田達至投手に加えて新加入のギャレット投手など、救援陣が充実してきていることが理由として挙げられそうだ。

 パ・リーグを通じても7月27日時点で、完投は千葉ロッテ・種市篤暉投手、オリックス・山本由伸投手、北海道日本ハム・有原航平投手の3回のみ。それだけに今年の先発投手は、任されたイニングをしっかりと抑えていくことが求めらる。開幕15連戦で責任投手となった9試合で3勝6敗と振るわなかった先発陣の奮起は、今後のシーズンに向けた課題となってくる。

 今年は異例づくめのシーズンのなか、「本拠地15連戦」というかたちでスタートを切った埼玉西武ライオンズ。打線の中軸や先発陣といったところに課題が残ったものの、ベテラン勢の奮起や救援陣の活躍で、15連戦を五分の成績で乗り切った。ファンを迎えて7月21日から行われた本拠地・メットライフドーム6連戦では、4勝2敗と勝ち越しており、徐々にチーム状態は上がってきている。3連覇に向けて歩みを進めるその戦いに注目していきたい。


文・成田康史

記事提供:

パ・リーグ インサイト 成田康史

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