東京ヤクルトで黄金期を支えた飯田氏も捕手→外野手、1番打者として活躍
開幕スタートダッシュには失敗した福岡ソフトバンクだが、またもや魅力あふれる若手が台頭している。プロ6年目・24歳の栗原陵矢捕手だ。右投左打の強打者で、14日現在、今季全21試合にスタメン出場し、最近は1番に定着。打率.273、4本塁打、16打点をマークし、両リーグを通じ最多の9二塁打を放っている。
6月19日の開幕戦でいきなり延長10回サヨナラ打を放ち、「嬉しかったという一語に尽きます」と語った“持ってる男”。守備位置は一塁もしくは左翼だが、登録は「捕手」で、6月23日の埼玉西武戦では試合途中からマスクをかぶるシーンもあった。
元東京ヤクルトの名外野手で、昨年まで5年間福岡ソフトバンクのコーチを務めた飯田哲也氏は「もともとバッティングは良かったのですが、捕手としては(甲斐)拓也の台頭で出場機会がなかった。今年からいろんなポジションを守るようになり、レギュラーの座を勝ち取りつつあります」と説明する。
飯田氏自身、捕手として拓大紅陵高から1986年ドラフト4位で東京ヤクルト入りし、内・外野にコンバートとなり、1991年以降、外野手として7年連続ゴールデングラブ賞を受賞する名手となった経緯がある。栗原には「頑張ってほしいという気持ちが強い」と期待している。
「理想は6番くらいを打つことだと思いますが」
7、8日の楽天戦では2試合連続で本拠地PayPayドームの右翼席に放り込んでみせた栗原だが、飯田氏は「たまたま本塁打で目立っていますが、あくまで広角に打てることが強みのアベレージヒッターです」と断言。「1番を打つなら、四球が少ない(5つ)ことと、三振が多い(20個)ことが課題になる。チームにとって理想的なのは、彼が6番くらいを打つことだと思いますが……」と付け加えた。
昨年は32試合出場で、そのうちスタメンはわずか5試合。栗原の出場機会が今季激増している背景には、デスパイネとグラシアルがコロナ禍で母国キューバから出国できず、内川も不振で開幕2軍スタートとなった事情もある。
「これだけ打っていれば、誰が帰ってきてもベンチに下げられることはない。ただ、いいスタートを切ったとはいえ、このままずっとうまくいくはずはなく、必ず調子の波は来ます。相手にも研究されるこれからが正念場でしょう」と飯田氏。
本来の主力が顔をそろえるであろうシーズン後半も、レギュラーとして試合に出続けることができるか。飯田氏は「“ダメ元”で目の前の試合をがむしゃらにやっていくしかないと思います。『前半は良かったね』で終わってほしくない」とエールを送っている。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)
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