毎年大きな話題を呼ぶ選手の移籍に関するニュース。ただ、複数回にわたって移籍を経験する選手は意外と少ない。そこで今回は、3球団以上のユニフォームに袖を通してきた人にフォーカス。もちろん、戦力外通告などの辛い経験もあるが、そんな中でも多くの球団で必要とされてきた理由とは何か。その魅力に迫りたい。
埼玉西武ライオンズ
・松坂大輔投手
(西武ライオンズ−MLB−福岡ソフトバンク−中日−埼玉西武)
今季からチームに新加入となった2選手は、いずれも複数のチームを渡り歩いてきた。まず、14年ぶりの古巣復帰となった松坂大輔投手だ。「平成の怪物」としての輝かしい実績よりも、ここでは「ベテラン」としての一面に焦点を当てる。日本復帰2球団目となった中日で6勝4敗(2018年)と復活しただけでなく、昨季は松坂投手の教えを受けた柳裕也投手が2桁勝利(11勝)を記録するなど成績以外での貢献も見せた。埼玉西武には今井達也投手や高橋光成投手など、自身と同じく甲子園を沸かせた若獅子が名を連ねる。本人が熱望する戦力としての貢献はもちろん、お手本としての姿にも期待できそうだ。
・森越祐人選手
(中日−阪神−埼玉西武)
自身2度目となる戦力外通告から、同じく2度目となるトライアウトを受験して埼玉西武のユニフォームに袖を通した苦労人だ。その魅力は、内外野を守ることのできる安定した守備力。外崎修汰選手という球界屈指のユーティリティープレーヤーがいるものの、シーズンを通してさまざまなポジションを任せることは非常に大きな負担にもなる。さらに、源田壮亮選手や山川穂高選手など、近年のチームを象徴する選手はいずれも通年で出場を続けている。森越選手の加入は、チームの選手層に厚みをもたらすはずだ。
福岡ソフトバンクホークス
・川島慶三選手
(北海道日本ハム−東京ヤクルト−福岡ソフトバンク)
福岡ソフトバンクが誇る左キラーの川島慶三選手は、2006年から2007年を北海道日本ハム、2008年からは東京ヤクルト、2014年途中から福岡ソフトバンクへと活躍の場を移している。特に昨季は代打で驚異の打率.400を記録。2017年には日本一を決めるサヨナラ打を放った持ち前の勝負強さは全く衰えを見せていない。今季は東京ヤクルトでチームメイトだった大砲・バレンティン選手が新加入し、自身の背番号4を譲った。37歳のベテランは、今度は背番号99としてまだまだ輝きを見せてくれるはずだ。
・サファテ投手
(広島-埼玉西武-福岡ソフトバンク)
シーズン最多セーブの記録を保持するサファテ投手は、2011年から2012年を広島、2013年から埼玉西武、2014年以降は福岡ソフトバンクで活躍している。特に2017年には66試合に登板して防御率1.09、NPB新記録となるシーズン54セーブと、圧倒的な成績を残した。2018年に右股関節鏡視下関節唇修復術を受けた後は、一軍のマウンドから遠ざかっている。今季で39歳を迎えたベテランは、今後のキャリアで16セーブを挙げ、通算250セーブを達成できるか。
東北楽天ゴールデンイーグルス
・涌井秀章投手
(西武ライオンズ−埼玉西武−千葉ロッテ−楽天)
今季から自身3球団目となる楽天に新加入した涌井秀章投手。埼玉西武では最多勝2度、沢村賞を獲得。2014年から移籍した千葉ロッテでも最多勝を獲得するなど、いずれのチームでもエースとして結果を残している。楽天には埼玉西武時代にチームメイトだった岸孝之投手も在籍している。その際には、2007年から2010年にかけて2人そろって2桁勝利を獲得している。昨季は黒星先行の苦しい投球になってしまったが、新天地・仙台で再び巻き返しを見せてくれるに違いない。
・久保裕也投手
(巨人−横浜DeNA−楽天)
今季でプロ18年目のシーズンを迎える大ベテランだ。3球団目となった楽天でも2017年に一度育成選手登録を経験するなど多くの苦労を経験した。ただ、その全てを乗り越えてきた。支配下復帰となった2018年には25試合で防御率1.71、昨季も22試合で同2.82と結果を残し、9月には通算500登板の大台に到達。長いシーズンのなかで、今季で40歳を迎えるベテランの投球術が必要になる時は必ずやってくるだろう。
・渡辺直人選手
(楽天−横浜ベイスターズ−横浜DeNA−埼玉西武−楽天)
久保投手と同じ40歳のシーズンを迎える渡辺直人選手は、2007年から2010年にも楽天に在籍。2005年に球団そのものが誕生した歴史を考えれば、その黎明期を知る数少ない選手と言えるだろう。前所属である横浜DeNAと埼玉西武でも、持ち味の芸術的な右打ちと、チーム第一の献身的なプレースタイルで多くのファンからの信頼を集めた。2018年から楽天に復帰し、今季から打撃コーチも兼任する。チームの野手陣には、茂木栄五郎選手や渡邊佳明選手といった若手の台頭も目立つ。今季14年目のベテランの経験をぜひとも注入してもらいたい。
千葉ロッテマリーンズ
・細川亨選手
(西武ライオンズ−埼玉西武−福岡ソフトバンク−楽天−千葉ロッテ)
今季でプロ19年目を迎える大ベテランは、パ・リーグ全6球団中4球団のユニフォームに袖を通してきた。堅実な守備が持ち味で、過去にはリーグ最高の盗塁阻止率を3度記録し、ベストナインとゴールデングラブ賞も2度ずつ獲得している。楽天に移籍してからはその経験を生かして、試合の行方を左右する終盤の出場がメインとなっていた。昨季、4球団目となる千葉ロッテに加入すると、年齢で言えば15歳年下の正捕手・田村龍弘選手をプレーと指導の両面から支えた。パ・リーグを知り尽くした細川選手が、チームに与える好影響は計り知れない。
北海道日本ハムファイターズ&オリックス・バファローズ
両チームでは3球団以上に所属した選手は在籍していなかった。そのため、ここでは「のべ3球団」に所属した選手について取り上げたい。
まず、北海道日本ハムの鶴岡慎也選手だ。2003年から2013年まで北海道日本ハムの正捕手として活躍し、2014年に福岡ソフトバンクに移籍。2018年に再び北海道日本ハムに復帰した。チーム内では最も古い時代を知る選手だ。米球界を含めるのであれば、2011年に巨人からMLBに挑戦し2017年に北海道日本ハムに加入した村田透投手も挙げられる。
オリックスでは、ダイエー、そしてその後身である福岡ソフトバンク、オリックスと3つのチームのユニフォームを着た山崎勝己選手が最もこれに近いと言えるだろう。ちなみに、2020年シーズンでダイエーに所属した経験のある選手は明石健志選手、和田毅投手と山崎選手の3人で、今季でプロ20年目を迎える山崎選手はその中でも最古参だ。昨季は一軍に帯同しつつ、6年目(当時)の若月健矢選手をサポートした。
同じプロ野球選手でも、1つのチームで選手生活を送る選手がいる一方で、ここで挙げたように複数のチームに活躍の機会を見いだす選手もいる。こうした選手のバックグラウンドに注目すると、さらに応援にも熱が入るはずだ。
文・吉田貴
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