本当の戦いはプレーオフから? 日米におけるプレーオフの違い

パ・リーグ インサイト 新川諒

2016.10.7(金) 00:00

“This is why you play – to get an opportunity to play in the playoffs.”
「プレーする理由は-プレーオフに出場する機会を得るためだ」

これは長年、ニューヨーク・ヤンキースを支えたデリック・ジーターが残した有名な台詞の一つである。この言葉からも理解できるように、プレーオフに出場することは選手にとって非常に大きな意味を持つ。

プレーオフは米国ではポストシーズンとも呼ばれ、直訳が難しいが、後のシーズンということで戦いはまだ続いていることが連想される。

メジャーリーグのプレーオフ出場への道、そして2012年から再編成されたプレーオフの戦いは非常にうまくできている。ワイルドカード枠を2チームに増やすことで出場する両チームは一発勝負に全力を注ぐ必要があるため、次に対戦するリーグ最高勝率を勝ち取ったチームにとっては有利な条件でプレーオフの戦いを開始することができる。そのためシーズン終盤まで消化試合が少なく、注目の集まる試合が9月の終わりにも続いていく。

メジャーリーグでも地区優勝をすれば、シャンパンファイトを行うが選手の多くが「本当の戦いはこれからだ」と口にして、次なる戦いを頭に入れている。最近は日本でもリーグ優勝が決定した直後に選手、監督、関係者から同じような言葉が出るようになった。

パシフィックリーグでは2004年から、セントラルリーグでは2007年から導入されたクライマックスシリーズ。日本ではまだ歴史が浅いが、すでにいくつもの名勝負が生まれ、2010年には千葉ロッテがレギュラーシーズン3位から下克上で勝ち進み、日本一のタイトルを手にしたことも記憶に新しい。

メジャーリーグでは、2014年に両リーグのワイルドカードチームであったサンフランシスコ・ジャイアンツとカンザスシティー・ロイヤルズがワールドシリーズまで勝ち進んだ。レギュラーシーズン中では他のプレーオフ出場チームに比べて勝率が低かった両チームが最後まで勝ち進んだことに不満が聞こえなかったわけではないが、レギュラーシーズンという長期戦、そしてプレーオフという短期決戦の戦いは別物である。

そもそも、プレーオフ出場チームを決めるシステムがうまくできていて、消化試合を減らすためのビジネス的な観点をスポーツファンもしっかりと理解しているためにこのようなシステムが成立している。

米国ではスポーツがシーズン制で行われるため、野球は春先から始まり夏にかけて行われるスポーツという認識が強い。そのためCMなどでも使用される決まり文句の「オクトーバー・ベースボール(10月の野球)」はとても特別な意味合いが含まれる。10月に野球をしていることはチームが勝ち進んでいる証であり、その意味を誰もが理解しているからだ。

今年も日米でレギュラーシーズンの戦いが終わりに近付いており、勝ち残ったものだけが戦うことの許されるプレーオフの熾烈な戦いが始まる。パ・リーグのクライマックスシリーズは福岡ソフトバンク対千葉ロッテで10月8日から実施。3戦中先に2勝したチームがファイナルステージへ進むことになる。そこにはレギュラーシーズンを優勝した北海道日本ハムが待ち構え、10月12日から日本シリーズ進出をかけた争いが開始される。

どちらのステージでも、順位の高いチームの本拠地で開催され、さらにはファイナルステージではリーグ優勝球団にアドバンテージとして1勝が与えられる。日本ではそれだけレギュラーシーズンの戦いに重きを置いていることがうかがえる方式となっている。

メジャーリーグでも何度かプレーオフシステムの再編成を繰り返し、今の形に辿り着いている。日本においても、これから10年、20年とクライマックスシリーズでさらに多くのドラマを生み出し、ファンを熱狂させる戦いを積み重ねることで最善の形が出来上がり、その価値は高まっていくことになるだろう。そうすることでまた新たな野球文化が構築されていくのではないだろうか。

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パ・リーグ インサイト 新川諒

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