大砲に有利な指標のはずが……? 「塁打」にまつわる3つのランキングを紹介!

パ・リーグ インサイト 望月遼太

2020.3.17(火) 18:00

【6回裏】反撃開始!! バファローズ・吉田正がライトオーバーのタイムリー2ベースヒットを放つ!! 2020/3/8 B-F
【6回裏】反撃開始!! バファローズ・吉田正がライトオーバーのタイムリー2ベースヒットを放つ!! 2020/3/8 B-F

打者が得た塁の数を示す、「塁打」という指標

 野球における指標の一つに、「塁打」というものがある。打者が得た塁の数を示す数字であるこの指標は、「単打×1+二塁打×2+三塁打×3+本塁打×4」という計算式で求められる。この式からもわかる通り、一般的には長打力が高い選手ほど有利になる指標となる。しかし、過去の例を確認してみると、必ずしもホームランバッターのみが上位に来るわけではないということがわかってきた。

 今回は、直近10年間のパ・リーグにおける、塁打数ランキングのトップ5に入った選手たちと、現役選手、そして歴代の通算塁打ランキングトップ10を3つの項目を紹介。そこから見えてくる傾向について考えるとともに、一般的になじみ深い数字とは言い難い、「塁打」という数字について考えていきたい。

その年の本塁打王が「塁打数」でリーグトップだった回数は……

 まずは、直近10年のパ・リーグにおける、塁打数ランキングのトップ5を紹介していきたい。その結果は、以下の通りとなっている。(所属は当時)

2010年
1位:287塁打

西岡剛選手(千葉ロッテ)
2位:282塁打
多村仁志氏(福岡ソフトバンク)
3位:266塁打
小谷野栄一氏(北海道日本ハム)
4位:265塁打
T-岡田選手(オリックス)
5位:260塁打
後藤光尊氏(オリックス)

2011年
1位:315塁打

中村剛也選手(埼玉西武)
2位:268塁打
松田宣浩選手(福岡ソフトバンク)
3位:245塁打
中島裕之選手(埼玉西武)
4位:219塁打
糸井嘉男選手(北海道日本ハム)
5位:218塁打
坂口智隆選手(オリックス)

2012年
1位:251塁打

李大浩選手(オリックス)
2位:230塁打
中田翔選手(北海道日本ハム)
3位:226塁打
ペーニャ氏(福岡ソフトバンク)
4位:225塁打
中島裕之選手(埼玉西武)
5位:212塁打
陽岱鋼選手(北海道日本ハム)

2013年
1位:301塁打

浅村栄斗選手(埼玉西武)
2位:296塁打
長谷川勇也選手(福岡ソフトバンク)
3位:272塁打
内川聖一選手(福岡ソフトバンク)
4位:264塁打
マギー選手(楽天)
5位:259塁打
松田宣浩選手(福岡ソフトバンク)

2014年
1位:263塁打

糸井嘉男選手(オリックス)
2位:257塁打
李大浩選手(福岡ソフトバンク)
3位:244塁打
ペーニャ氏(オリックス)
4位:242塁打
中田翔選手(北海道日本ハム)
5位:237塁打
柳田悠岐選手(福岡ソフトバンク)

2015年
1位:317塁打

柳田悠岐選手(福岡ソフトバンク)
2位:314塁打
秋山翔吾選手(埼玉西武)
3位:291塁打
中村剛也選手(埼玉西武)
4位:284塁打
松田宣浩選手(福岡ソフトバンク)
5位:267塁打
李大浩選手(福岡ソフトバンク)

2016年
1位:284塁打
浅村栄斗選手(埼玉西武)
2位:282塁打
レアード選手(北海道日本ハム)
3位:260塁打
メヒア選手(埼玉西武)
4位:256塁打
松田宣浩選手(福岡ソフトバンク)
5位:247塁打
ウィーラー選手(楽天)

2017年
1位:308塁打

秋山翔吾選手(埼玉西武)
2位:267塁打
ウィーラー選手(楽天)
3位:264塁打
柳田悠岐選手(福岡ソフトバンク)
4位:260塁打
浅村栄斗選手(埼玉西武)
5位:246塁打
T-岡田選手(オリックス)

2018年
1位:322塁打

秋山翔吾選手(埼玉西武)
2位:319塁打
山川穂高選手(埼玉西武)
3位:314塁打
柳田悠岐選手(福岡ソフトバンク)
4位:298塁打
浅村栄斗選手(埼玉西武)
5位:284塁打
吉田正尚選手(オリックス)

2019年
1位:283塁打

吉田正尚選手(オリックス)
山川穂高選手(埼玉西武)
3位:278塁打
秋山翔吾選手(埼玉西武)
4位:269塁打
森友哉選手(埼玉西武)
5位:268塁打
浅村栄斗選手(楽天)

 外国籍選手や長距離砲も少なからずランキング上位に顔を出しているが、その年の本塁打王が塁打でも年間1位だったケースは、2011年の中村選手の1度のみ。それに対し、その年の首位打者を獲得した選手が塁打でも1位だったケースは、2010年の西岡選手、2014年の糸井選手、2015年の柳田選手、2017年の秋山選手と、計4度存在した。打率の高い選手のほうが、より多くの安打や二塁打を記録しており、塁打の面でも有利ということだろうか。

 なお、2011年の中村選手が記録した315塁打は全体で4番目に多い数字となっているが、このシーズンは統一球が導入された影響でリーグ全体の長打数が大きく減少した年でもあり、リーグ2位の松田宣浩選手が23本塁打、同3位のバルディリス選手と中田翔選手が18本という状況だった。そういった環境の中で記録した数字ということもあり、なおのことその価値は高くなりそうだ。

 また、直近10年間で複数回リーグトップの数字を記録しているのは、浅村選手と秋山選手の2名だけだった。浅村選手は2013年に安打数が3位、二塁打が2位。2016年は安打数が2位、二塁打が1位と、ともに多くの安打と二塁打を稼いでいた。秋山選手も2017年、2018年と、2年連続で安打と二塁打でリーグ1位を記録しており、やはりこの2つの数字を稼げる選手が、塁打の面でもリーグ屈指の数字を叩き出せるということが見えてくる。

 2019年は吉田正選手と山川選手が全く同じ数字で並ぶ結果となり、この10年間では唯一複数人がタイトルを分け合ったシーズンに。安打数では吉田正選手がリーグ2位だったのに対し、山川選手はトップ10に入っていなかった。しかし、本塁打数では山川選手が吉田正選手に14本の差をつけており、二塁打と三塁打では両選手ともにトップ10圏外だった。数字のうえでは同数であっても、塁打の稼ぎ方は両者で異なるところが興味深くもある。

近年の野球界を代表する好打者たちが名を連ねた

 続いて、通算成績にも目を向けてみよう。現役選手内における、通算塁打数のトップ10は以下のようになっている。

1位:福留孝介選手
3231塁打(1866試合 6527打数)
2位:内川聖一選手
3162塁打(1977試合 7161打数)
3位:中村剛也選手
3034塁打(1664試合 5729打数)
4位:鳥谷敬選手
2945塁打(2169試合 7448打数)
5位:坂本勇人選手
2943塁打(1670試合 6440打数)
6位:松田宣浩選手
2882塁打(1636試合 6056打数)
7位:中島宏之選手
2712塁打(1682試合 6003打数)
8位:栗山巧選手
2530塁打(1847試合 6450打数)
9位:糸井嘉男選手
2460塁打(1502試合 5381打数)
10位:青木宣親選手
2223塁打(1246試合 4884打数)

 現役選手の中で最多の数字を記録したのは、NPBで2度のサイクルヒットを達成している福留選手。その他にも、日本球界において長きにわたって活躍してきた名選手たちが顔を並べている。個々の数字に目を向けると、上位に入っている選手たちは相応の打数を重ねていることもわかるが、中村選手は6000打数未満ながら通算3位に入っている。持ち前の長打力を武器に、ハイペースで塁打を積み重ねてきたことを証明する数字かもしれない。

 そんな中で、現在31歳の坂本選手が現役選手の中で5位につけており、年齢的にも今後さらに成績を伸ばしていく可能性は大いにありそうだ。また、青木選手はMLBで6年間にわたってプレーしていたこともあり、打数の面では他のトップ10に入った選手たちよりも少なくなっている。2019年の時点で4000打数以上の選手の中では歴代最高の打率を記録していることもあり、やはり塁打を積み上げるペースもかなり速かったようだ。

通算記録では、日本球界の歴史に残る大打者がズラリ

最後に、現役という括りを外した、全ての時代の選手における塁打数の歴代記録を紹介したい。その結果は以下の通りだ。

通算記録
1位:王貞治氏

5862塁打(2831試合 9250打数)
2位:野村克也氏
5315塁打(3017試合 10472打数)
3位:張本勲氏
5161塁打(2752試合 9666打数)
4位:門田博光氏
4688塁打(2571試合 8868打数)
5位:金本知憲氏
4481塁打(2578試合 8915打数)
6位:衣笠祥雄氏
4474塁打(2677試合 9404打数)
7位:長嶋茂雄氏
4369塁打(2186試合 8094打数)
8位:山本浩二氏
4361塁打(2284試合 8052打数)
9位:落合博満氏
4302塁打(2236試合 7627打数)
10位:土井正博氏
4178塁打(2449試合 8694打数)

 歴代最多の通算868本塁打を記録している王氏を筆頭に、同2位の通算657本塁打を記録している野村氏、史上最多の通算3085安打に加えて504本塁打を記録している張本氏といった、球史に名を残す偉大な打者たちが顔を並べている。王氏、野村氏、張本氏、門田氏、金本氏、衣笠氏、山本氏、落合氏と、通算本塁打数の上位10傑のうち8名が塁打でもトップ10入りしているのが象徴的だ。

 直近10年間においては中村選手、山川選手、吉田正選手、柳田選手のようなホームランバッターがトップに立つこともあったが、現役選手内におけるランキングでは、どちらかといえば中距離打者に分類される選手がランキング上位の多くを占めていた。それに対して、通算記録においては本塁打数と塁打の間に一定の相関性が感じられる結果となっており、時代と共に「塁打」という指標の稼ぎ方も少なからず変遷を遂げてきているようだ。

「塁打」という数字は、チームにどれだけ多くのチャンスをもたらしたかを示している

「塁打」は長打、とりわけ本塁打の価値がより高く換算される指標ではあるが、現代の野球においては、むしろ安打と二塁打を多く稼げる選手のほうが塁打を稼ぐうえでは有利だ。

 その理由としては、時代と共にスタジアムが大きくなり、本塁打を放つ難易度が上がった代わりに、二塁打や三塁打を稼ぐチャンスは増加したことや、試合数の増加にともない、各選手の安打も増え、長打に頼らずとも塁打を稼ぎやすくなったことが挙げられるだろう。

 とはいえ、現代野球においても、中村選手のように圧倒的な長打力によって多くの塁打を積み上げてきた選手も存在している。また、2019年には確実性と長打力を兼ね備えた吉田正選手と、2年連続本塁打王の山川選手が同数で首位に立つという結果となっている。

 多くの塁打を稼ぎ出している選手は、それだけチームに対して多くの走者や得点機をもたらしていると言っていいだろう。一般的に注目されることが決して多くはない指標ではあるが、選手の貢献度や打者としての能力を計る上で、「塁打」がその助けとなる可能性は大いにあるはずだ。

データ・記録の人気記事

パ・リーグ6球団の「控え捕手」事情
「制球難」は間違い?暴投プロファイル
国内移籍した外国人選手は期待できる?

記事提供:

パ・リーグ インサイト 望月遼太

この記事をシェア

  • X
  • Facebook
  • LINE