二刀流覚醒のシーズン。その成果として、チームに優勝という栄冠をもたらした。北海道日本ハムの先発・大谷選手が、埼玉西武打線を相手に9回1安打15奪三振の完封で10勝目。マジック1としていたチームを4年ぶりのリーグ優勝に導いた。
強打者ぞろいの埼玉西武打線を、寄せ付けなかった。最速159キロの直球とキレのあるスライダーがさえた。相手のバットが面白いように空を切る。この日は投手に専念。最後まで、エースとしてマウンドを守り切った。「優勝したことがないので」と語り、何よりもほしかった結果。それを今季1番ともいえる投球内容で成し遂げた。
歓喜の輪の中で、8度、宙を舞った栗山監督。「ピッチング、1回も褒めたことないけど、最高でした」。日頃から大谷選手には厳しい視線を送っていた指揮官だったが、この日はさすがに賛辞を送った。
大逆転での優勝。6月24日には、福岡ソフトバンクに最大11.5ゲーム差とされた。しかし、球団記録を塗り替える15連勝でグングンと上昇。そのチームの中心にいたのは間違いなく大谷選手だった。7月10日の登板で右手のマメがつぶれ、そこからは打者に専念。バットを握れば類まれなるミート力。芯で捉えればレーザービームのように鋭い当たりが内野手の頭上を越える。記録した本塁打22本。この日の勝利で、2桁勝利、20本塁打という記録を達成した。
頂点に大きく近付いたのが21日からの福岡ソフトバンクとの2連戦。大谷選手は21日に先発を務め、8回1失点で9勝目。打者としても8番としてオーダーに入った。ヒーローインタビューでは「明日もここに戻ってこられるように」と語った。その宣言通り、翌22日は「3番・DH」で先発出場。4打数2安打で勝利に貢献し、天王山を2連勝という最高の形で終えた。
これまでも、先発を務める日程から逆算し、負担のないように野手として出場してはきたが、優勝が懸かった後はフル回転だった。先発ローテーションを担う投手は、週に1度の登板に備え、その他の日は調整に専念する。そのほかの試合でベンチに入ることは少なく、試合中に帰路について疲れを取り、登板予定日に備える。特に登板前日は外出せず、翌日のマウンドに集中する、というのが一般的な過ごし方とされてきた。だが終盤の大谷選手は違った。27日に代打で出場し1安打。翌日に1安打完封を成し遂げるという離れ業。疲労度は計り知れないが、その過酷な状況の中で、投打で結果を残したという事実は、もはや揺らぐことはない。
終わってみれば、福岡ソフトバンク相手に15勝9敗1分と勝ち越したことが大きかった。その福岡ソフトバンク戦、打者として打率.411、9本塁打。投手として4試合2勝、防御率1.26と抜群の成績を残したのが大谷選手だった。
「大谷翔平の一年だった」と言われても不思議ではない、圧倒的な存在感。10月のクライマックスシリーズ、日本シリーズでもカギを握る存在だ。常識を超越した二刀流の2016年は、まだ終わりではない。
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