自責5で勝率0%? 開幕戦勝利でカード勝ち越し70%? 全ては開幕投手が握っている

パ・リーグ インサイト 福島龍一

2018.3.30(金) 16:36

開幕戦勝利を収めた開幕投手の自責点の割合(C)PLM
開幕戦勝利を収めた開幕投手の自責点の割合(C)PLM

いよいよ2018年シーズンが開幕する。開幕戦の先発、開幕投手は、多くの場合そのチームのエースが務める。

長い戦いの幕開けに、もっとも信頼できる投手をまっさらなマウンドに送る――儀礼的な意味合いもあるだろうが、勝つための采配という見方もできる。開幕戦の勝敗は、143試合のうちのたかが「1勝」「1敗」と侮るには、少し重た過ぎるからだ。

2005年から2017年までのパ・リーグのデータでは、開幕戦に勝利した場合の開幕カードの勝ち越し率は約70パーセント。反対に敗北した場合の勝ち越し率は、約16パーセント。開幕戦の勝敗が、スタートダッシュに大きな影響を与えていることが分かる。

開幕投手の責任は重く、エース格がその大役を任されるのも自然な流れと言えるわけだが、どんな一流の投手にとっても開幕戦は難しいものだ。

今回は、開幕投手がどのような働きをすれば幸先の良いスタートを切ることができるのか、2005年から2017年までのパ・リーグの開幕投手のデータをもとに考えていく。

開幕投手が直接的な勝ち負けを左右する

2005年から2017年のパ・リーグの開幕戦においては、76.9パーセントの割合で、先発に直接勝ち負けがついた。先発以外に勝ち負けがついたのは、わずか23.1パーセントである。つまりそれだけ多くのケースで、1人の開幕投手が開幕戦の展開を左右してきた。

開幕投手の投球回数の比較/開幕戦における点差の比較(C)PLM
開幕投手の投球回数の比較/開幕戦における点差の比較(C)PLM

ではここで、図1を見てほしい。縦軸は開幕投手の数を表し、横軸は投球回数を表す。例えば一番左端の棒グラフは、開幕戦で3回、3回1/3、3回2/3を投げた投手が2人いることを示している。

これを見ると、ほとんどの投手が、勝利投手の権利を与えられる5回を投げ切った。しかし各チームのエースが投げているわりには、完投や完封は多くなかった。

続いて、図2の棒グラフを見てほしい。この縦軸は試合数、横軸はその試合の点差を示し、開幕戦は1点差か2点差で決するケースが極端に多いことが分かる。つまり、これまでの開幕戦では1点の取り合いになることが多く、先発は6回、7回でマウンドを降り、チームは継投策に入っている。

開幕投手が目指すべきことは、無理に「投げ切る」ことより、試合をきちんと「作る」ことである、ということが言えるだろう。

開幕戦勝利を収めた開幕投手の自責点の割合(C)PLM
開幕戦勝利を収めた開幕投手の自責点の割合(C)PLM

開幕投手に失点は命取り! 5失点以上は勝率0パーセント

そして最後に図3を見てほしい。これは、開幕戦勝利を収めたチームの開幕投手の自責点の割合を示す。驚くべきことに、開幕戦勝利を収めているチームに、先発が「乱れた」試合は1試合もなかった。開幕投手が自責点5点以上のときの勝率は0パーセントである。

つまり、開幕戦に乱打戦で勝利することは極めて困難。「開幕投手は無理をして完投・完封をする必要はないが、5回4失点以内に収める」、「開幕投手の自責点が5点に近くなったら継投策に入る」ことが、開幕戦勝利を飾るために有効なことかもしれない。

各チームのエースがぶつかる開幕戦は、1点を争う投手戦が予想される。さらに「スタートダッシュ」「好スタート」とよく言われるように、開幕戦の結果は、ペナントレースの全体にまで影響を与える可能性がある。1人の開幕投手が、チームの命運を握っていると言っても過言ではない。

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パ・リーグ インサイト 福島龍一

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