
◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」
イメージを覆された。楽天担当になってから最もギャップを感じたのは、辰己涼介の姿だった。天才肌の外野手が今季、ベンチで誰よりも泥臭く声を張り上げ、仲間の背中を押している。その意図を尋ねると、少しおどけたような表現を交えて明かした。
「僕がみんなを鼓舞したり褒めたりすると、他の人以上にみんながうれしそうなんで(笑)。今年は声を出すこと、鼓舞することは一番に意識してますね」
辰己はゴールデン・グラブ賞常連の守備と卓越した打撃だけでなく、周囲を驚かせるトリッキーな言動が強調されがち。授賞式での全身金ピカ姿などは、その一例だ。しかし、今季はひと味違う。プレーでけん引するのは大前提。その上で声という、目に見えない指標も自ら課している。
自分が一言かければベンチの空気が変わる。チームが前を向く。影響力を自覚するからこそ意識的に言葉を紡ぐ。従来の“自由人”のイメージはリーダーシップに変わりつつある。
言葉だけで終わるつもりもない。「プレーでも引っ張らないといけない立場。両立して続けていけたらいい」。昨季は打撃不振だったが、今季は開幕から打率、出塁率ともにリーグ上位をキープする。グラウンドでのパフォーマンスとチームへの献身。その両輪がそろってこそ自分があると言わんばかりだ。
チームは5月に苦戦し、下位に低迷。重い空気が漂いそうな時だからこそ、この男の真価が問われる。杜の都に響くのは鋭い打球音だけではない。仲間を明るく照らす辰己の生きた声がある。(野球担当・宮内孝太)
◆宮内 孝太(みやうち・こうた)22年入社。楽天担当をへて今季から現職