2年前に1本差で逃した栄冠へ。長打力を増した万波中正の凄さとは?

パ・リーグ インサイト 望月遼太

2025.5.20(火) 08:00

北海道日本ハムファイターズ・万波中正選手【写真:球団提供】
北海道日本ハムファイターズ・万波中正選手【写真:球団提供】

本塁打王ランキングでトップに立ち、2年越しのタイトル獲得の可能性も十分

 北海道日本ハムの万波中正選手が5月16日の試合終了時点で9本塁打を放ち、パ・リーグの本塁打ランキングでトップに立っている。2023年に25本塁打を放ちながらわずかに1本の差で本塁打王のタイトルを逃した万波選手にとって、今季は2年越しの自身初タイトルを獲得するチャンスとなりそうな気配だ。

 今回は、万波選手が過去に記録してきた各種の指標に基づく、打者としての特徴を紹介。それに加えて、万波選手が今シーズンにさらなる飛躍を果たしている理由について指標の面から確認しつつ、今後の活躍にも期待を寄せたい。(※成績は5月16日の試合終了時点)

長打力に関連する指標は、本塁打王を争った2023年を大きく上回る

 万波選手がこれまで記録してきた、年度別の指標は下記の通り。

万波中正選手 年度別指標 ©PLM
万波中正選手 年度別指標 ©PLM

 2023年の長打率.467はリーグ5位、2024年の長打率.425は同6位と、直近2年間はいずれもリーグトップ10に入る長打率を記録していた。そして、2025年は長打率.531で堂々のリーグ1位となっており、これまで以上に打者としての生産性が高まっていることが示されている。

 また、長打率から単打の影響を省いた、いわば真の長打率を示すとされる「ISO」という指標に関しても、今季はリーグトップの.280という数字を記録。リーグ2位のレイエス選手のISOが.227であることを鑑みると、万波選手の長打力はリーグ内でも群を抜いていると言える。

 さらに、万波選手が本塁打王争いを繰り広げた2023年のISOは.203であり、今季の万波選手は当時を上回る長打力を有しているということになる。そして、本塁打を1本記録するために必要となる打数を示す「AB/HR」という指標に関しても、今季はリーグトップの15.89という数字を残しており、2023年の21.32という数字を大きく上回っている。

4月までは運に恵まれなかったが、5月に入ってからは改善の兆しが

 ここからは、本塁打を除くインプレーとなった打球が安打になった割合を表す「BABIP」という指標を確認していきたい。BABIPは運に左右されやすい要素が大きい指標であると考えられており、一般的な基準値は.300とされている。

 万波選手が2023年に記録したBABIPは.312と基準値を上回っており、続く2024年のBABIPも.295と、基準値をわずかに下回る程度の水準にとどまっていた。だが、2025年のBABIPは.281と基準値を大きく下回っており、とりわけBABIPが低水準だった4月には5本塁打を放ったものの、月間打率.198と確実性を欠いていた。

  BABIPという指標は、打率などの成績に対して大きな影響を与えると考えられている。4月までの万波選手は運に恵まれずに打率が低調となっていたが、5月に入ってからは打率.356、4本塁打と絶好調で、それに伴いBABIPも改善傾向にある。このままBABIPが基準値に近づいていけば、さらなる打率の上昇につながる可能性も十二分にあるはずだ。
 
 打率と出塁率の差を示す「IsoD」という指標に目を向けると、キャリア通算の数字が.052と控えめな水準となっている。また、同じく選球眼に関係する「BB/K」という指標もキャリア通算の成績が.233と低く、ボールをじっくり見極めて多くの四球を選ぶというよりは、好球必打を信条とした積極的な打撃スタイルを取っていることがわかる。

 ただし、今季のIsoDは.062と、キャリア平均に比べてやや改善が見られる。これまでのシーズンに比べて選球眼が向上しつつある点が今後も継続するようであれば、打者としての生産性がさらに高まることにもつながるため、今後における要注目のポイントとなりそうだ。

 長打力の向上と選球眼の改善に伴い、OPSもリーグ2位の.846と優秀な水準に到達している点も見逃せない。主力打者として活躍した過去2年間を上回る打者としての生産性を示している今シーズンは、25歳の若き主砲にとってさらなる大ブレイクを果たすシーズンになるかもしれない。

打者としてのさらなる成長を、悲願の初タイトルとリーグ優勝につなげられるか

 今季の万波選手は、ISOやAB/HRといった指標でリーグトップという事実が示す通り、本塁打王のタイトルまであと一歩に迫った2023年を上回る長打力を発揮している。強打者としてさらなる成長を示していることは、各種の数字にも表れていると言えよう。

 持ち前のパワーを活かした打撃面のみならず、2023年から2年連続でゴールデングラブ賞に輝いた外野守備でもチームに貢献している万波選手。守備に長けた和製大砲というだけでも非常に貴重な存在だが、残るシーズンでBABIPの向上に伴う打率の改善が生じれば、さらなる貢献度の増加が見込めるという点も期待が持てる要素となっている。

 今後も万波選手だからこそ可能となるスケールの大きなプレーを攻守にわたって披露し、上位争いを演じるチームをさらなる高みへ押し上げる原動力となるか。自身初の個人タイトル獲得、そして悲願のリーグ優勝を果たすためにも、これからも豪快なアーチを幾度となく描いてほしいところだ。

文・望月遼太

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