ロッテ・木村優人、初ものづくしの2年目を振り返り「まだまだ足りないと感じているので」…「質を求めてしっかりやっていきたい」

ベースボールキング

2025.12.29(月) 23:30

ブルペンで投球練習するロッテ・・木村優人[撮影=岩下雄太]
ブルペンで投球練習するロッテ・・木村優人[撮影=岩下雄太]

 「初勝利を挙げられるように、そこに向かって全力で腕を振って結果を出していきたいと思います」。

 ロッテ高卒2年目・木村優人は今年2月の石垣島春季キャンプで、今季の目標に“プロ初勝利”を掲げたが、早々に達成し、先発・リリーフで抜群の存在感を発揮した。

 木村は高卒1年目の昨季、体づくりを中心にファームで11試合・19回を投げ、0勝2敗、防御率2.37、一軍での登板はなかった。

 自主トレでは「真っ直ぐのスピード、強さを求めてやってきて、いざ(石垣島キャンプ初日に)ブルペンで投げてみて自分のボールに力が伝わって、地面にしっかり押せたのでそこが良かったなと思います」とストレートの強さにこだわって取り組み、石垣島春季キャンプ初日のブルペンでは「自主トレでやってきたことが少しはボールの力が伝わるようになって、自分のボールが少しずつ投げられるようになってきているのかなと思います」と手応えを掴んだ。

 2月11日に行われた紅白戦では、0-0の3回から登板し、1回・10球、1被安打、2奪三振、無失点。「真っ直ぐ中心の投球というのを投げる前からテーマにしていて、そのボールがある程度、高さもそうですけど、コントロールも自分の中では結構、できていた。力感のないフォームからのボールが一番の持ち味だと思っているので、十分に今日は出せたんじゃないかなと思います。あのボールも非常に力が抜けて良いボールがいったんじゃないかなと思います」。特に二死走者なしで藤岡裕大を1ボール2ストライクから見逃し三振に仕留めたストレートは素晴らしかった。

 2月16日の楽天モンキーズ戦でも1回・13球を投げ、被安打0、奪三振、無失点の危なげないピッチング。「この前の紅白戦と同様、真っ直ぐで押していって、変化球は少なかったですけど、真っ直ぐの自信がついてきているので、投げていても感覚はいい感じですね」。0-3の3回先頭のチャン・チャオホンを1ボール2ストライクから空振り三振に仕留めたストレートが良かった。

 それでも、楽天モンキーズ戦の投球の出来自体に関して、「70点くらいですかね。全体的に見てもコントロールが2ストライクから乱れますし、そこを修正したいですね」と全く満足することはなかった。

 石垣島春季キャンプ終了後に都城キャンプに合流。3月4日のDeNA戦でオープン戦初登板し、2回・24球を投げ、1被安打、1奪三振、0与四球、無失点の投球。3月12日の日本ハムとのオープン戦も2回を無失点に抑えた。3月22日の西武二軍戦で2回をパーフェクトに抑えると、3月27日に自身初の開幕一軍を掴み取った。

 3月30日のソフトバンク戦、4-4の7回にプロ初登板。先頭の山川穂高を1ボール2ストライクから投じた4球目の116キロカーブで空振り三振に打ち取ると、続く正木智也を三ゴロ、最後は今宮健太を中飛で危なげなく三者凡退に片付けた。直後の8回表に打線が勝ち越しに成功すると、9回にも追加点を奪い、このリードをリリーフ陣が守りきり、木村はうれしいプロ初勝利を手にした。

 プロ初勝利という目標を開幕早々に達成した木村は「正直できると思っていなかったんですけど、投げていく中で、野手陣の皆さんが点数をとってくれて、結果的に自分に勝ちがついた。運がついていたなと思って、結果的に初登板で自分のピッチングができて自信に繋がったかなと思います」と振り返った。

 目標にしていたプロ初勝利を達成し、次なる目標について訊くと、「これからどんどん投げる機会をいただけると思うので、任されたイニングを0で抑えられるように。初登板した次の登板が大事になると思うので、満足することなく腕を振りたいと思います」と意気込んだ。

 プロ2度目の登板となった4月4日の楽天戦も3回パーフェクトリリーフ、4月18日の楽天戦では、初めて勝ち試合の7回に登板し、1-0と緊張感のある場面でのマウンドだったが、1イニングをわずか4球で三者凡退に仕留め、プロ初ホールドを記録。

 4月22日の西武戦で初めて四球を与えたが、2回・34球を投げ、0被安打、1奪三振、1与四球、無失点で、初登板から5試合・9イニングノーヒットピッチング。「初登板から体の状態が維持できるように調整してきて、マウンドで現れているので、体の状態も今出ている気持ち面もそうですし、そういうところがいいかなと思います」。

 ほとんど走者を出さずに抑えられていることに関して、「任されたイニングは0で抑えたいという気持ちが第一としてあるので、そこの気持ちをしっかり作ってマウンドに上がれているので、そこが良いかなと思っています」と自己分析。

 「真っ直ぐもそうですし、カットボール、スライダーもそうですけど、少しは通用していると思う。そこに自信を持って投げたい部分とまだまだ空振りを取りたい部分があるので、そこをしっかり突き詰めてやっていきたいと思います」と自信を深める。

 4月27日の日本ハム戦でプロ初失点を喫すると、この登板から3試合連続失点。5月11日の西武戦で0回2/3を投げ5失点以来のマウンドとなった5月15日の楽天戦、5-2の9回セーブシチュエーションで登板。

 黒木知宏コーチは「電話が鳴って、木村行くよという感じで送り出しました。気持ちが入っていましたね。選手もコールが入った時点で気持ちが入りますし、その前からある程度想定しているので、そうなった時にどういう心構えで行こうかなとか、それに向けての前のイニングから準備をするというところをやっている。いざコールがなる時、ピリッとするのはありましたね」と、舞台裏を明かした。

 木村は、一死一塁で浅村栄斗に2ボール2ストライクから投じた5球目、ボール球になったが、自己最速の154キロを計測するなど、走者を出しながらも1回を無失点に抑えプロ初セーブをマークした。

 開幕当初は先発投手が降板した後の2番手としてチームの流れを呼び込む役割を務めれば、同点・勝ち試合の1イニングを任されるなど、さまざまな場面で腕を振り、リリーフで14試合・19回2/3を投げ、1勝5ホールド1セーブ、防御率2.75の成績を残し、6月17日の阪神戦でプロ初先発。

 先発登板前は、「試合当日のホテル出発の前に、寺地と一緒に30分くらい打ち合わせ、ミーティングをして、相手バッターの特徴を掴んで試合に入っていきました」と、同じ高卒2年目の・寺地隆成と入念に打ち合わせを行った。

 リリーフの経験を経てのプロ初先発に「試合が始まってしまえば、相手バッターと対戦するので、長いイニングを逆に投げたいくらいの気持ちで。少しでも長いイニングを投げられるようにと思って、甲子園での初先発のマウンドに立ちました」と、阪神打線を4回3安打1失点に抑えた。

 「中継ぎだったら、真っ直ぐが一番自信のあるボールなんですけど、カーブで打たれると中継ぎはメンタルにくるというか、一番自信のある真っ直ぐで打たれる方がいいと思うので、変化球でかわしてというよりも、中継ぎはカーブを投げて打たれると後悔が残る。先発は長いイニングを投げるので、カーブでタイミングを外す、真っ直ぐで押していくであったり、メリハリのある投球が先発ではできる。本当に短いイニングの中でも、色々試していきたいと思います」。

 7月2日の楽天戦、「ずっと中継ぎをやってきて、球数の心配は試合が始まる前にはありました。始まってしまえばアドレナリンも出ますし、気合いも入るのでそこに関しては少し余裕もできた。投げていくうちに気合いも強くなっていたので、投げていくうちに良くなっていたかなと思います」と、6回2/3・98球を投げ、6被安打、4奪三振、3失点にまとめ、先発初白星を手にした。

 木村の凄さは、ストレート、変化球、どの球種でもストライクが取れること。「あの試合は自分の持ち味でもあるどの球種でもカウントが取れていましたし、勝負球でも全部使えていたので、そのところがあの登板では良かったのかなと思います」。

 その中でも、0-0の初回二死走者なしで黒川史陽を三飛に仕留めた1ボール2ストライクから5球目の149キロインコースストレート、6-3の7回一死走者なしで中島大輔を2ストライクから見逃し三振に仕留めた3球目のインコース148キロストレートなど“左打者のインコースのストレート”の制球が素晴らしかった。

 「中継ぎの時は真っ直ぐが投げきれなくて、勝負球のフォーク、カットボールが打たれたりしていたので、そこのインコースをしっかり投げ切れることによって、変化球も活きてくるので、あのボールをしっかり投げ切ることができれば、自分の変化球も活きてくる。そこが良かったかなと思います」。

 プロ3度目の先発となった7月17日のソフトバンク戦(北九州)、3回裏終了から1時間05分の中断があったが、2-1の4回先頭の山川をスプリットで空振り三振、山本恵大を左邪飛、川瀬晃を二ゴロと、1時間を超える中断明け最初のイニングを三者凡退に抑えたのは高卒2年目とは思えないほどの落ち着きぶりだった。

 「あそこの入りが大事なのはわかっていたので、しっかりもう1回スイッチを入れ直して三者凡退に抑えられたのはあのゲームで大きかったですし、5回は崩れはしましたけど、前の回が良かったので、崩れなかったというのは良かったかなと思います」。

 木村が話したように2-1の5回に失点し同点に追いつかれ、試合は5回降雨コールドとなった。降雨コールドではあるが、“完投”という記録が残った。「残念なところが多くて、やれることはあの5回の中でやれたので、登板からしたら十分というか、あの試合の中では良かったのではないかなと思います」と振り返った。

 オールスター明け初先発となった8月2日の西武戦、「自分の中で球数はそんなには気にしていなかったんですけど、内容というところで四球を出したり、先頭の四球があの試合は痛くて、(7回の)失点につながってしまった。見直さなければいけないなというのが数多くあったので、そこは修正したいなと思います」と、毎回のように走者を背負う投球で、6回2/3・プロ入り後自己最多の106球を投げ、5被安打、4奪三振、2与四球、4失点。

 3-2の7回、先頭のデービスに四球、続く源田壮亮に送られるも、古賀悠斗を三ゴロで2アウトとしたが、滝澤夏央のファーストゴロを上田希由翔が後逸し失点。滝澤に盗塁を許し、西川愛也に適時打を浴びたところで降板となった。7回を投げきれず、「7回はエラーもあったんですけどそれよりも先頭打者にフォアボールを出してしまったことが失点に繋がっている。そこを反省しないといけない」と悔しがった。

 8月19日の楽天戦も、3-2の6回に先頭のボイトに四球、黒川にセンター前に運ばれ無死一、二塁のピンチを招いたが、フランコを2ボール2ストライクから5球目の138キロスプリットで空振り三振、宗山塁を1ボールから2球目の130キロチェンジアップで右飛。二死一、三塁でゴンザレスを1ボールから投じた2球目の147キロストレートで右飛に打ち取り、スコアボードに0を入れた。

 楽天戦は、本拠地・ZOZOマリンスタジアム特有の風を受けてのマウンドだった。「あんまり意識することなく投げられましたし、ボールが少しシュートするなと感じましたけど、投球において影響したことはないです。カーブも思った以上に風の影響でいつもより曲がっていました。コントロールを難しく感じましたけど、チェンジアップが効いてきたのでよかったかなと思います」。

 立ち上がり右打者のインコースに素晴らしいストレートを投げ込んでいたが、3回は15球中12球が変化球と、変化球主体の投球。「勝負球にまっすぐを持っていきたかったというのもありますし、変化球をいくことによってまっすぐの見え方も全然変わってくる。ゆるい変化球でカウントを取ってまっすぐで勝負球にしたいというのはあのゲームではありました」。

 4回、5回は再び持ち球を満遍なく投げ、三者凡退に抑えた。「なかなかうまくいかないことが多かったですけど、毎イニング三者凡退に抑えたい気持ちでやっていますし、リズムというのが自分の売りでもあるので、そこは無くさずにやっていきたいなと思います」。6回・103球を投げ、5被安打、2失点と先発の役割を果たした。

 9月4日の日本ハム戦が6回6失点、9月16日のオリックス戦が5回7失点と、春先から安定した投球が嘘のように打ち込まれた。プロ入り後初めて中7日と最も短い登板間隔で先発した9月24日の西武戦、本拠地・ZOZOマリンスタジアムに訪れたマリーンズファンを魅了した。

 「先発をやり始めてから一番良いまっすぐを投げられていて、中継ぎの頃のまっすぐを投げられたんじゃないかなと思って、9回になってもまっすぐの球速、球威は落ちなかったので、手応えを感じるところかなと思います」と初回から磨いてきたストレートで押していった。

 ストレートとともに、「まっすぐが本当に良かったので、まっすぐが効いての変化球だったので、まっすぐをしっかり投げられたというのが、良かったなと思うところですね」スプリットも冴え渡った。この日はストレート、スプリットを中心に、カットボール、カーブ、チェンジアップを効果的に投げ込み、5-0の7回一死までパーフェクトピッチング。8回終了時点で球数は107を数えたが、9回もマウンドに上がり、9回・123球、3被安打、7奪三振、無失点でプロ初完封勝利。

 「投げきれたというのは一番の収穫として残しておきたいので、本当に前回も悔しい登板になっていたので、ゲームを投げきれたのは自分にとっても大きな登板になったので、いい経験になってよかったと思います」と喜んだ。

 プロ2年目の今季は先発、リリーフの両方を経験し、22試合・8先発、68回を投げ、3勝2敗5ホールド1セーブ、50奪三振、防御率3.31。投げ抹消はあったが、1年間一軍に帯同した。

 「初はいい形で入れて、先発を途中からやらせていただいて、課題というか、まっすぐのスピード、質であったりが出てきたので、そこをシーズン終盤にでも少し修正が効いたので、完封勝利もできましたし、そこをもっともっと求めてやっていけたら、来年にも繋がりますし、3勝、5勝ともっともっと勝てると思うので、確率、ストレートの質を追い求めてやっていきたいと思います」。

 今年の経験を踏まえて、“かなり活躍できた”、“満足していない”と色々な感情があると思うが、どのような感情なのだろうかーー。

 「思った以上に投げられているところもあれば、先発でも任せていただいて、ある程度経験させていただいたので、来シーズンは良かったなと思えるところが少しでも多くなれば、その年だけでも自分の経験が大きくなる。そこを目指してやっていきたいと思います」。

 来季に向けては、「本当に投げていてもストレートの質だったり、まだまだ足りないと感じているので、そこを見直して全体的にもストレートの質、変化球の質を求めてしっかりやっていきたい。体力的な部分は最後落ちてしまったので、しっかり戻して来シーズンに繋げたいと思います」と意気込んだ。来季は開幕から先発ローテーションで投げ、今季以上の活躍に期待したい。

取材・文=岩下雄太

関連LIVE配信

特集
特集
パ・リーグ.com ニュース

ロッテ・木村優人、初ものづくしの2年目を振り返り「まだまだ足りないと感じているので」…「質を求めてしっかりやっていきたい」