シーズン途中入団でアーチを量産。ボイトは史上初の「日米で本塁打王」達成なるか

パ・リーグ インサイト 望月遼太

2025.10.27(月) 10:00

東北楽天ゴールデンイーグルス・ボイト選手【写真:球団提供】
東北楽天ゴールデンイーグルス・ボイト選手【写真:球団提供】

NPBとMLBの双方で本塁打王に輝いた選手は、これまで一人も存在しない

 10月14日、東北楽天がルーク・ボイト選手と2026年の選手契約を締結したことを発表した。全60試合の短縮シーズンとなった2020年に22本塁打を放ってア・リーグの本塁打王に輝いた実績を持つ大砲の残留は、ファンにとっても非常に楽しみな要素となっている。

 長い球史において、NPBとMLBの双方で本塁打王に輝いた選手は一人もいない。2025年にわずか67試合で13本塁打を放ったボイト選手には、史上初の偉業達成が期待されるところだ。今回は、ボイト選手が日米で記録した指標に基づく打者としての特徴を紹介するとともに、来日2年目を迎える大砲のさらなる活躍に期待を寄せたい。

2018年と2020年の2シーズンにて披露した、卓越した打撃成績が際立っている

 ボイト選手がMLBにおいて記録した、各種の指標は下記の通り。

ルーク・ボイト選手 MLB年度別指標 ©PLM
ルーク・ボイト選手 MLB年度別指標 ©PLM

 MLB通算のOPSは.807と、総じて高い生産性を発揮していたことがわかる。また、2018年はOPS1.069、そして本塁打王を獲得した2020年は同.948と、打数こそ少ないものの非常に優秀な数字を残した年も複数回にわたって存在しており、世界最高峰の舞台においても強打者としての実力を証明してきた。

 さらに、長打率から単打の影響を省いた、いわば「真の長打率」と表現されることも多い「ISO」という指標に関しても、MLB通算で.215と優秀な成績を記録。こちらも2018年のISOは.350、2020年は同.333と非常に高い値を記録しており、この2年間におけるバッティングの卓越ぶりがあらためて示されている。

 1本ホームランを記録するのに必要な打数を示す「AB/HR」についても、MLB通算の数字は17.68と優秀だ。さらに、本塁打王を獲得した2020年のAB/HRは9.68と、ホームラン1本につき10打数未満という驚異的なペースでアーチを量産。2018年には同9.53とそれ以上の速さで本塁打を放っており、まさに本塁打王に相応しい抜群の長打力を発揮していた。

BABIPの特性上、俊足とは言えない右打者のボイト選手は不利なはずだが……

 MLB通算の打率が.253、通算出塁率は.339と長打力以外の数字も一定の水準にあり、打率と出塁率の差を表す「IsoD」も.086と優秀な数値を残していた。その一方で、四球を三振で割って求める、選球眼を示す指標の一つである「BB/K」という指標に関しては、MLB通算で.349と決して高いとは言えない水準にとどまっている点は気になるところだ。

 次に、本塁打を除くインプレーとなった打球が安打になった割合を示す「BABIP」という数字について見ていこう。BABIPは運に左右される要素が大きい指標であると考えられており、一般的な基準値は.300とされている。

 BABIPはその特性上、内野安打の回数が多くなりやすい俊足の選手や左打者が、比較的高い値を記録することが多い指標でもある。しかし、ボイト選手は右打者かつ、MLB通算3盗塁と俊足と言えるタイプの打者ではないものの、MLB通算のBABIPは.316と、基準値を大きく上回る数字を記録している。

 BABIPが高くなりやすい選手が持つ特徴の一つに、野手が反応することが難しいほどに打球の速度や質が優れていることが挙げられる。すなわち、ボイト選手は自らの脚力ではなく、打球の強さによってヒットになる確率を上げていると考えるのが自然だろう。

 また、本塁打王に輝いた2020年のBABIPは.268と、キャリア平均の値を大きく下回っている点も興味深い。本塁打になった打球はBABIPの計算には含まれないことも相まって、仮に運に恵まれなくとも好成績を残してみせたという点も、ボイト選手の凄みを示していると言えよう。

NPBへの移籍後も、MLB時代と同様に強打者としての価値を示している

 続いて、ボイト選手がNPBにおいて記録している、各種の指標についても見ていこう。

ルーク・ボイト選手 NPB年度別指標 ©PLM
ルーク・ボイト選手 NPB年度別指標 ©PLM

 2025年はわずか67試合で13本塁打を放っただけでなく、打率.300とハイアベレージを記録。OPSも.882と優秀な値を記録しており、規定打席に到達して打率3割以上を記録した選手がわずかに1名という投高打低の環境にあって、非常に高い生産性を発揮していたと考えられる。

 ISOも.198と一定以上の数字を残したことに加えて、AB/HRは18.69と、200打席以上に立った選手の中ではリーグ2位となる数字を記録。MLBにおけるキャリア平均のAB/HRが17.68だったことを考えれば、MLBの第一線で活躍していた時期とそん色のないペースで本塁打を記録していたことがわかる。

 選球眼に関する指標に目を向けると、2025年に記録したIsoDは.084と、MLB通算の.086という数字とほぼ同水準となっている。そして、2025年のBB/Kは.458と、MLB平均の.349という数字を上回っており、来日を機に選球眼がより向上しつつある点も頼もしい要素だ。

 それに加えて、2025年のBABIPが.351と非常に高くなっている点も興味深い。BABIPは運に左右される要素が大きい指標ではあるが、ボイト選手は優れた守備力を誇る野手が多く存在するMLBにおいても、高いBABIPを記録してきた点は強みと言える。来季のボイト選手のBABIP、ひいては打撃成績がどのような推移を見せるかは要注目のトピックとなりそうだ。

偉大な先達に続いてチームをけん引し、史上初の偉業を達成できるか

 ボイト選手以前にもMLBで本塁打王を獲得した後にNPBへ移籍した選手は存在したが、その一人であるアンドリュー・ジョーンズ氏は、東北楽天ファンにとってもなじみ深い存在だろう。ジョーンズ氏はNPBでのタイトル獲得こそ果たせなかったが、2年間の在籍で50本塁打を記録し、4番打者として2013年のリーグ優勝と日本一にも大きく貢献した功労者だ。

 ボイト氏は偉大な先達と同様に主砲としてイーグルスをけん引する活躍を見せ、そしてジョーンズ氏も成しえなかった日米での本塁打王という偉業を達成できるか。MLBでの実績に違わぬ打棒を披露した2025年の戦いを経て、より日本球界への適応が進んだ2026年に見せてくれるであろう活躍が今から楽しみでならない。

文・望月遼太

関連LIVE配信

特集
特集
パ・リーグ.com ニュース

シーズン途中入団でアーチを量産。ボイトは史上初の「日米で本塁打王」達成なるか