3連敗の巨人は坂本勇と丸が「深刻」、セ・リーグ球団にはない内角攻めが効いている?
■福岡ソフトバンク 6-2 巨人(日本シリーズ・22日・東京ドーム)
日本シリーズは福岡ソフトバンクが3連勝で3年連続の日本一に王手をかけた。第3戦は巨人に6-2で完勝。先発のバンデンハークが4回2失点で降板すると、石川が2回無失点、7回以降は甲斐野、モイネロ、森が1イニングずつを無失点でつないだ。バンデンハークが亀井に2打席連続弾を浴びたものの、ここまでキーマンの坂本勇、丸を完璧に抑え込んでいる。
坂本勇はここまでシリーズ打率.091、丸はまだヒットなし。東京ヤクルト、北海道日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーし、昨季まで2年間は東京ヤクルトでバッテリーコーチを務めた野球解説者の野口寿浩氏は、坂本勇への内角攻めが効いていると分析し、福岡ソフトバンク捕手の甲斐の「同じ球種を続ける勇気」を絶賛した。
巨人としては絶対に負けられない第3戦。亀井の先頭打者弾が飛び出したものの、その後は坂本勇、丸、岡本が3者連続三振で2点目を奪えず。結局、坂本勇は3三振、丸も3試合連続無安打といいところがなかった。巨人打線を牽引してきた打者たちが苦しみ抜いている。
野口氏は「巨人の2番(坂本勇)、3番(丸)は深刻ですね。坂本勇は第1戦で内角ばかり攻められたのがいまだに効いてますし、今もまだ攻められている。内角をゴーン、ゴーン、ゴーンと攻められて、外の変化球で三振。外中心に攻めてきて、最後に内角真っ直ぐで三振とか。坂本勇の頭の中は、全て“後追い”になっている感じがします」。第1戦の千賀から続く“内角攻め”に崩されているという。
「セ・リーグのチームは、坂本勇に対してあんなに内角へは投げませんよね。坂本勇は内角打ちがうまいという認識があるので、あそこまで攻め込むことはない。坂本勇本人も内角を攻められ慣れてないと思います。いつもの感覚で言うと『1球内角に来たらもう外だろうな』という感じではないでしょうか。それが『まだ来る、まだ来る、まだ来る』となって、完全に頭の中を狂わされてしまった。ところが、次の打席になったら『あれ来ないの、来ないの、来ないの。じゃあ踏み込むよ』となったら内角に来てしまった、と。セ・リーグのレギュラーシーズンとは、攻め方がまるで違います。
しかも、それを初戦に千賀の160キロでやられたら効きますよね。初戦は千賀の160キロ、第2戦は高橋礼のアンダースローの140キローオーバー、第3戦は助っ人のバンデンハークの153キロ……。その3投手だけでも十分ですが、それに加えて左の150キロオーバーが突っ込んでくる、右の150キロオーバーもガンガン来ると。通常の感じでは野球をやれていない。逆にいえば、福岡ソフトバンクバッテリーの大勝利です。丸に対してはそこまで内角をいっていなくても『俺にもくる』となるでしょう。巨人は坂本勇がコケたら皆がコケてしまう。亀井が2発打っても、それ以降に点が入らないということは、亀井の後を打つ打者たちが分断しているということ。やはり、坂本勇が打たないと巨人は厳しい」
「坂本勇に内角を続けるなんて、勇気以外の何ものでもない」
一方、「大勝利」と表現した福岡ソフトバンクバッテリーの配球が光っているのも事実。野口氏は、第2戦に続いて甲斐のリードを絶賛した。
「坂本勇の場合もそうですが、甲斐には球種を続ける勇気がありますね。捕手の目線で言えば、同じ球種を続けるのは、勇気がいるものです。それを徹底して行っている。初回に岡本にカーブを5球続けたのもそうですね。あの勇気は大したものだと思います。普通は(同じ球が)2、3球続いたら『もうない』と思うものです。『もう待たれてるだろう』と思う。それを4球、5球といける。内角を続けるのも同じですね。3球目は『まだ大丈夫かな』くらいで、4球目になったら『もう絶対に待たれている』と思いがちなのですが、それを続けていく勇気がある。結局、最後までタイミングを狂わせることができている。坂本勇に内角を続けるなんて、勇気以外の何ものでもありません。もちろん、それに応えたピッチャーもすごいです」
野口氏は「短期決戦用のピッチャーでも野手でも、短期決戦に強い選手はいます。いつもと違う思い切ったことができるのが短期決戦なので。球種を続けたり、内角を続けたり、というのは短期決戦じゃないとできない。甲斐のリードが本当に良くなったかは、1年間じっくり追いかけてみないと分からない」とも付け加えたが、この日本シリーズで効果的なリードを続けていることは確か。このまま3年連続の日本一に輝いたら、昨季は圧倒的な強肩でシリーズMVPに選出された甲斐が、今年も勝利の立役者の一人となることは間違いない。
(Full-Count編集部)
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