パ・リーグ王者の野球はやはり豪快? 逆転勝利と敗戦の数に見る各球団の傾向

パ・リーグ インサイト 望月遼太

2019.9.28(土) 12:00

埼玉西武ライオンズ(C)パーソル パ・リーグTV
埼玉西武ライオンズ(C)パーソル パ・リーグTV

 先制を許した試合をひっくり返しての逆転勝利は、応援しているファンにとってもたまらないものだ。パ・リーグのレギュラーシーズンは埼玉西武のリーグ連覇というかたちで幕を閉じたが、逆転での勝利や敗戦が多かったチームはそれぞれどこだったのだろうか。

 そこで、今回の記事ではリーグ内での逆転勝利数、および逆転負けの数が多かったチームを調査。チームの総得点、総失点といった数字からもアプローチを図りながら、鮮やかな逆転劇をより多く見せたチームと、それとは逆に、手痛い逆転負けを喫しやすかったチームがどこだったのかについて見ていきたい。

リーグ最多の逆転勝利数を記録したチームは、やはりイメージ通り?

 今季のパ・リーグにおける逆転勝利数のチーム別ランキングは、以下の通りとなっている。

1位:埼玉西武…34勝
2位:楽天…33勝
3位:千葉ロッテ…31勝
4位:福岡ソフトバンク…28勝
5位:オリックス…23勝
6位:北海道日本ハム…22勝

 リーグ最多の逆転勝利数を記録したのは、ペナントレースを制した埼玉西武。やはり、強力打線による圧倒的な得点力が作用している可能性は高そうだ。僅差の2位には新加入の浅村栄斗選手とブラッシュ選手が活躍した楽天が入り、ホームランラグーンの設置で本塁打が激増した千葉ロッテが3位となった。

 一方、最終盤まで埼玉西武とリーグ優勝を争った福岡ソフトバンクは、逆転勝利の数ではリーグ4位という結果に。リーグ順位、得点数ともにリーグ5位の北海道日本ハム、それぞれ6位のオリックスはやはり逆転勝利数も少なく、苦しい戦いを強いられた両チームの今季を象徴する数字の一つとなってしまっている。

 続けて、チームの全勝利数のうち、逆転勝利がどの程度の割合を占めているのかを計算した結果を紹介していきたい。

1位:埼玉西武 34/80…42.50%
2位:楽天 33/70…47.14%
3位:千葉ロッテ 31/69…44.93%
4位:オリックス 23/59…38.98%
5位:福岡ソフトバンク 28/76…36.84%
6位:北海道日本ハム 22/64…34.38%

 最も高くなったのは楽天で、2位が千葉ロッテ。それぞれ昨季はシーズン順位が最下位、5位と低迷していたが、得点力の向上でひっくり返せる試合が増えたことが、成績の向上とAクラス争いにもつながったと言えるか。逆に、昨季は3位に入っていた北海道日本ハムは逆転勝利の割合がリーグ最下位とかなり少なくなっており、逆転勝利の数、および割合は、チーム成績ともある程度シンクロしている。

 そんななかで、リーグ2位の福岡ソフトバンクは逆転勝利の割合ではリーグ5位と、逆転勝利数(4位)からさらに順位を下げてしまっている。裏を返せば投手力を活かした先行逃げ切りの形が確立されていたとも言えそうだが、優勝争いは最後まで熾烈を極めただけに、終盤に試合をひっくり返す展開が少なかったのは痛かったか。

豪快な試合が持ち味のリーグ王者

 次に、今季のパ・リーグにおける逆転負け数のチーム別ランキングを見ていきたい。

1位:埼玉西武…36敗
2位:オリックス…32敗
3位:千葉ロッテ…30敗
4位:楽天…25敗
5位:福岡ソフトバンク…24敗
6位:北海道日本ハム…22敗

 逆転勝ち数がリーグ最多だった埼玉西武は、逆転負けの数でも同じくリーグ最多に。チーム防御率はリーグ最下位と投手陣は今季も安定感を欠き、特に前半戦は平井克典投手と増田達至投手に負担が集中。後半戦には平良海馬投手の台頭と小川龍也投手の復調もあって持ち直したが、シーズントータルで痛い逆転負けが多かったのは確かだった。

 オリックスはリリーフ防御率4.31とリーグ唯一の4点台で、こちらも試合終盤の締めくくりに苦慮していた。千葉ロッテはリリーフ防御率3.66とそこまで悪くはなかったが、8回を任せるセットアッパーが最後まで定まらず。逆転負け数の多さが、リーグトップのリリーフ防御率3.08を記録した楽天とのAクラス争いでも明暗を分けるかたちとなった。

 福岡ソフトバンクはリリーフ防御率3.28と故障者が続出する中でもブルペンを安定させており、逆転負けの数はリーグで2番目に少なかった。北海道日本ハムもリリーフ防御率3.52とまずまずで、逆転負けはリーグ最少。苦戦を強いられたシーズンにあって、投手陣は意地を見せている。

 勝利数の項と同様に、逆転負けがチームの全敗戦数の中でどの程度の割合を占めているのかについても紹介する。

1位:埼玉西武 36/61…59.02%
2位:オリックス 32/74…43.24%
3位:千葉ロッテ 30/70…42.86%
4位:福岡ソフトバンク 24/61…39.34%
5位:楽天 25/68…36.76%
6位:北海道日本ハム 22/72…30.56%

 埼玉西武は全敗戦の6割近くが逆転負けとなっており、チームとしての傾向が端的に表れている。オリックスと千葉ロッテも4割以上となっているが、福岡ソフトバンクも全体の負け数が少ないこともあって4割近い数字に。とりわけ夏場は酷暑もあってか各球団のリリーフ陣が不安定になる場面があり、各チームともに手痛い逆転負けを喫するケースは少なからず存在した。

 そんな中で、やはり北海道日本ハムの数値の少なさは目を引くところ。今季は得点力不足に悩まされたこともあり、そもそも先制できたケースが多くなかったという見方もできるかもしれないが、厳しいコンディションの中でもリードした試合の多くを勝ちに結びつけるという、投手陣の踏ん張りが見て取れる結果となった。

チーム総得点・総失点でも対照的な結果を示した1位チームと2位チーム

 参考として、チーム総得点と総失点のランキングも以下に紹介していきたい。

チーム得点数
1位:埼玉西武…755得点
2位:千葉ロッテ…642得点
3位:楽天…607得点
4位:福岡ソフトバンク…578得点
5位:北海道日本ハム…555得点
6位:オリックス…530得点

チーム失点数
1位:埼玉西武…688失点
2位:オリックス…628失点
3位:千葉ロッテ…611失点
4位:北海道日本ハム…580失点
5位:楽天…577失点
6位:福岡ソフトバンク…556失点

 逆転勝ち、逆転負けともにリーグ最多の埼玉西武は、チーム総得点と総失点でもそれぞれ最多。乱打戦が多くなったことが、逆転試合の増加にもつながったと考えるのが自然だろう。一方、福岡ソフトバンクは失点がリーグ最少と投手陣が奮闘したものの、得点はリーグ4位とやや伸び悩んだ。埼玉西武とは対照的に、総合的にはある程度ロースコアとなる試合が多くなっていたと考えられる。

 北海道日本ハムは逆転勝利数、逆転負け数がともにリーグ最少だったが、得点数はリーグ5位、失点数は同4位と、先述の埼玉西武ほど極端な結果にはならず。しかし、得点数2位、失点数3位という千葉ロッテの得点経過の激しさ、得点数3位、失点数5位の楽天の安定感といった要素は、それぞれチーム別の逆転試合の傾向にも反映されていると言えそうだ。

逆転勝ち、逆転負けの数字にも各球団の傾向が表れている

 埼玉西武はリーグ最多失点の投手陣を強力打線がカバーし、21年ぶりとなるリーグ連覇の快挙を達成。逆転勝ち・逆転負けがともにリーグ最多と、その戦いぶりは派手さにあふれていた。その埼玉西武と最後までもつれる優勝争いを演じた福岡ソフトバンクはリーグ最少の失点数を誇り、逆転勝ち・逆転負けともに少なかった。Aクラス争いを制した3位の楽天は、逆転勝ちが多く逆転負けは少ないという、理想的な傾向を示していた。

 以上のように、逆転試合の勝敗数にもそれぞれのチームの特色が出ていると言えそうだ。10月5日から始まる「2019 パーソル クライマックスシリーズ パ」においても、シーズン同様の鮮やかな逆転劇が生まれるのかどうか。先述した各球団の傾向を頭に入れたうえで、観戦してみてはいかがだろうか。

記事提供:

パ・リーグ インサイト 望月遼太

この記事をシェア

  • X
  • Facebook
  • LINE