プロ初完封はあと一歩で幻となったが、それでも大きな1勝を手にした。福岡ソフトバンクの先発・千賀投手が3日、9回1失点の完投で12勝目(1敗)を挙げた。前夜、3連覇への優勝マジックが灯ったチーム。投打に集中力を発揮させ、マジックをきっちりと減らした。

中盤まで両軍無得点の投手戦。6回2死2塁、4番で主将の内川選手が右前に適時打を放って均衡を破ると、7回無死3塁で明石選手が右越適時三塁打。打球は本塁打になり得た当たりで、右翼手のペゲーロ選手が何とかグラブに当て、グラウンドに戻したような形で本塁打を防いだ。1点で凌げた格好の楽天だったが、投手陣が制球難に陥り、4四死球でこの回3失点。こうなれば福岡ソフトバンクのペースだ。8回にも3点を加えて勝利を決定付けた。

あとは千賀投手が無失点で試合を投げ切るか。今季、先発ローテで開花した右腕の初完封まであと1回だったが、ペレス選手、ウィーラー選手の中軸に連続四球。捕逸もあって1,3塁とされると、ペゲーロ選手の遊ゴロの間に1点が入ってしまった。「完封を狙っていたので…。またか、という感じです」。ヒーローインタビューに選ばれた千賀投手だったが、表情はどこか冴えなかった。

それでもマジック点灯翌日の試合で、完勝へ導いたのは大きい。「野手の皆さんがたくさん点を取ってくれた。ストライクゾーンに投げるだけでした」と打線に感謝した千賀投手。12勝1敗という安定感については「野手の方がたくさん点を取ってくれている。僕もそれに負けないように投げるだけです」と、静かに語った。

1日の試合で柳田選手が右手薬指を骨折し、離脱。この日もアクシデントが起きた。3回、一走として盗塁を成功させた細川選手が、右太もも裏を抑え、苦悶(くもん)の表情。足を引きずってベンチに戻り、そのまま代走が送られた。8月中盤以降、ほとんどの試合でスタメンマスクを被ってきた男の負傷となれば、福岡ソフトバンクにとってはまたも試練となる。

簡単な道のりではないと分かっているからこそ、選手たちは慢心なく次戦を見据える。「まだこれから厳しい戦いが続くけど、一つ一つ勝って、僕たちの野球をやっていければと思う」と千賀投手。最後のひと踏ん張りへ、全員野球で勝利をつかんでいくだけだ。