「できたらいいな」が現実に。千賀滉大・甲斐拓也バッテリーが語った「ノーノー」への道のり

パ・リーグ インサイト

2019.9.6(金) 23:26

福岡ソフトバンクホークス・千賀滉大投手(C)パーソル パ・リーグTV
福岡ソフトバンクホークス・千賀滉大投手(C)パーソル パ・リーグTV

記録づくめの大仕事を成し遂げた黄金バッテリーは何を思う

 2019年9月6日、福岡ソフトバンクの千賀滉大投手が、ヤフオクドームで行われた対千葉ロッテ戦で、史上80人目、令和初のノーヒットノーランを達成。チームでは前身の南海時代の1943年5月26日、大和戦での別所昭氏以来76年ぶり、育成出身者では初と記録づくめの大仕事を、リーグ優勝争いの真っ只中で成し遂げてみせた。

 チームは4連勝中の一方で、自身は3連敗中で今日の試合を迎えた千賀投手。「前回までと変えた部分は特にないです」と自然体でマウンドへ上がると、初回から150キロ台後半の直球を投げ込む。

「低めに狙って行ってあの高さに行ってしまうので、高めに放っているわけではないんですけど、高めでもしっかり抑えこめるようにと思っていました」と、高めのボール球も降らせるほどの威力抜群のストレートで千葉ロッテ打線を圧倒。初回から毎回三振を奪い、5回を終えてヒット許さず。このあたりから球場のファンも「もしかしたら……」とにわかに浮き足立ち始めた。

 千賀投手自身、ノーヒットノーランが頭によぎったのも、この『5回』だったと言う。「四球を出してるんでそんな感覚はあんまりなくて」という実感ながら、「あ、ゼロだ。あと4イニングかって思って、全力で行って全部抑えようと思いました」

 その一方で「みんなはその話題を出さないようにしていて、笑いそうになっちゃって」とチームメイトは緊張していた様子。「2点差の試合なので、よく考えたら四球に一発で同点になる。逆に引き締まった試合だからこそできたんじゃないかなと思います。とにかく2対0で(終わらせよう)と。結果は最高の結果になりましたけど、僕は3連敗しているので、そこまで考えられる余裕はなかったです」
 
 バッテリーを組んだ甲斐選手が快挙を意識したのは『8回』。「もちろんそこ(ノーノー)はわかっていましたけど、8回が終わって意識をしました」場内の大きな期待を背負った千賀投手は最終回のマウンドへ向かう。

 9回表、先頭から連続四球を与えると、鈴木大地選手を併殺崩れに打ち取って1死1,3塁。続く中村奨吾選手をセカンドフライに仕留めると、打席には一発の可能性を持つ井上晴哉選手。甲斐選手は「9回に行く前に千賀と話をして『9番から始まるけど、仮にランナーで出て4番の井上さんまで回った時に、どうやっていこうか』という話をしていました。一番はチームが勝つことだから、と」とあらかじめ井上選手と対峙する際の意識を共有していたという。カウントは1ボール2ストライク。バッテリーが選んだのは伝家の宝刀で代名詞のフォークだった。井上選手のバットは空を切りゲームセット。パ・リーグでは2014年5月2日ロッテ戦、埼玉西武の岸孝之投手(現、楽天)以来5年ぶりの記録達成となった。

 ノーヒットノーランの経験は「初めてです」と話す千賀投手。「ファームのときに未遂はしたんですけど。いつかはやりたいなともちろん思っていました。でも、『できたらいいな』くらいにしか思わないことなんで本当に嬉しいです」

 甲斐選手も「経験ないです。ゲームセットになった瞬間にすごく感動しましたし、一緒に育成で入って頑張ってきた中でこういう結果が出て嬉しく思う」と喜んだ。千賀投手も甲斐選手に対して「いいリードをしてくれましたし、アホみたいなワンバンも止めてくれましたし。すごい感謝ですね」とバッテリーの信頼感も勝利の要因だった。

 斉藤和巳投手や和田毅投手といった球団が誇るエースたちもなし得なかったノーヒットノーラン。福岡ソフトバンクでは初めてだが「昨日勝った流れと運の差が出たのかな」と控えめに話したが、最後は「和田さんにプレッシャーをかけられたかな」とイタズラっぽく笑った。

 また、シーズン200三振も併せて記録した千賀投手は「(200三振は)一つの目標ではありましたけど、途中から『これは行けるな』と思っていました。今は三振にこだわらずに大事な試合が目の前に控えていますし、チームが勝てれば」と、チームの2年ぶりのリーグ優勝そしてその先にある日本シリーズ制覇という大きな目標に狙いを定めた。

文・菊地綾子

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