最も効率よく四球を選ぶ選手は? パの四球率と出塁率上位・下位10人を紹介

パ・リーグ インサイト 望月遼太

2019.9.4(水) 12:00

北海道日本ハム・近藤健介選手(C)パーソル パ・リーグTV
北海道日本ハム・近藤健介選手(C)パーソル パ・リーグTV

四球一つを選ぶのに必要な打席数を示す「四球率」

 「四球率」という指標がある。四球を一つ選ぶのに必要な打席数を表すこの指標は、「四球÷打席数」という明快な式で求められる。その値が高ければ、すなわちそれだけ効率よく四球を選んでいるということになる。

 単打も四死球も一つの塁を得るという点では同じ、というセイバーメトリクス的な価値観が広まってきたこともあり、四球の価値は徐々に高まりをみせつつある。そこで、今回はパ・リーグにおける四球率、および出塁率のランキングを確認し、各球団の主力打者がどの程度のペースでフォアボールを選んでいるのかを確認していきたい。(成績は9月2日現在)

他の選手を大きく引き離し、1位に輝いたのは……

 まずは、パ・リーグ内で四球率が高い選手たちの顔ぶれを確認していきたい。ランキング上位10人は以下の通りだ。

1位:近藤健介選手(北海道日本ハム) 四球率.178 三振率.135 打率.304
2位:ブラッシュ選手(楽天) 四球率.156 三振率.301 打率.262
3位:浅村栄斗選手(楽天) 四球率.143 三振率.262 打率.265
4位:吉田正尚選手(オリックス) 四球率.138 三振率.117 打率.326
5位:西川遥輝選手(北海道日本ハム) 四球率.137 三振率.168 打率.282
6位:井上晴哉選手(千葉ロッテ) 四球率.136 三振率.191 打率.249
7位:山川穂高選手(埼玉西武) 四球率.132 三振率.239 打率.252
8位:森友哉選手(埼玉西武) 四球率.127 三振率.162 打率.336
9位:デスパイネ選手(福岡ソフトバンク) 四球率.126 三振率.215 打率.271
10位:秋山翔吾選手(埼玉西武) 四球率.118 三振率.152 打率.309

 近藤選手が他の選手たちに大きな差をつけ、リーグトップの数値を記録している。投手の1打席あたりの平均投球数でも規定打席到達者の中ではリーグ最多であり、じっくりと球を見極めるタイプの選手であることが数字からも読み取れる。しかし、その一方で三振率は下から9番目(リーグ22位)。多くの球数を投げさせながら簡単には三振しないところも、優れた選球眼を持つことの証明といえるか。

 ブラッシュ選手は四球率がリーグ2位ながら、三振率はリーグトップ。同僚の浅村選手も四球率がリーグ3位、三振数がリーグ2位と、それぞれ三振を恐れずに際どいボールを見極めている。四球率7位、三振率4位の山川選手も、同じ傾向を示していると言えそうだ。デスパイネ選手も同じくリーグを代表する大砲の1人だが、先述の3人に比べれば四球率、三振数ともにやや低く、積極性とコンタクト力の高さというやや異なる特性が見えてくる。

 吉田正選手は四球率トップ10の選手の中では三振率が最も低く(リーグ25位)、近藤選手と同様に優れた選球眼を持っていると言えよう。他にも西川選手、井上選手、森選手、秋山選手と三振率が1割台に収まっている選手は多く、打者としてのタイプも長距離砲からリードオフマンまでさまざま。必ずしも、フォアボールが多い打者はその代償として三振が増える、というわけではなさそうだ。

四球率の低さは積極性の裏返し?

 続けて、四球率が低い選手たちの顔ぶれについても見ていきたい。規定打席到達者の中で、四球率が少ない順に10人を抽出したランキングは以下の通りだ。

30位:大田泰示選手(北海道日本ハム) 四球率.051 三振率.188 打率.288
29位:内川聖一選手(福岡ソフトバンク) 四球率.056 三振率.093 打率.258
28位:松田宣浩選手(福岡ソフトバンク) 四球率.058 三振率.198 打率.265
27位:源田壮亮選手(埼玉西武) 四球率.067 三振率.105 打率.286
26位:荻野貴司選手(千葉ロッテ) 四球率.071 三振率.104 打率.308
25位:鈴木大地選手(千葉ロッテ) 四球率.089 三振率.126 打率.299
24位:銀次選手(楽天) 四球率.090 三振率.100 打率.309
23位:ウィーラー選手(楽天) 四球率.0915 三振率.204 打率.239
22位:渡邉諒選手(北海道日本ハム) 四球率.0916 三振率.215 打率.272
21位:中村奨吾選手(千葉ロッテ)四球率.0917 三振率.168 打率.234

 大田選手は四球率トップの近藤選手とは同僚で、任されている打順も近いが、四球率ではそれぞれリーグ首位と最下位という対照的な結果に。近藤選手と大田選手の間には四球率.127と大きな差が生じており、打者としてのタイプの違いが表れている。三振率は.188とそこまで高いわけではないが、選んだ四球の数は113試合で26個。積極的な打撃が大田選手の魅力のひとつでもあるが、選球眼にはやや課題を残していると言えるか。

 四球の数が大田選手と同じ26個となっている内川聖一選手は、リーグで唯一三振率が.100を下回っている打者でもある。同僚の松田選手も四球率はほぼ同じ値で、両選手の積極性がうかがえるところ。荻野貴選手と鈴木選手も今季はチームで1・2番を組むケースが多かったが、四球率に関しては両者ともに低い。しかし、出塁率は揃って高い値を記録しており、チャンスメーカーとしての役割はきっちりとこなしていたといえそうだ。

 源田選手、荻野貴選手、銀次選手、鈴木選手の4人は三振率が.100台前半という優れた値を残しており、ここで取り上げた10選手中7人が三振率.100台となっている。残る3選手も.200台前半にとどまっており、四球が少ない打者は概ね三振も少ない傾向にあると言えそうだ。四球率上位10人は必ずしも三振が多いわけではなかったことを考えると、四球が少なければ三振も少ない、という命題のほうがより真に近いともいえそうだ。

四球率が低くとも、出塁率では高い値を記録している選手も

 ここからは視点を変え、四球率ではなく出塁率でランキングを作成した場合にはどのような結果になるのかを見ていきたい。パ・リーグの規定打席到達者内におけるトップ10の顔ぶれは以下の通り。

1位:近藤健介選手(北海道日本ハム) 出塁率.426 打率.304
2位:吉田正尚選手(オリックス)出塁率.422 打率.326
3位:森友哉選手(埼玉西武) 出塁率.419 打率.336
4位:ブラッシュ選手(楽天) 出塁率.399 打率.262
5位:秋山翔吾選手(埼玉西武) 出塁率.395 打率.309
6位:西川遥輝選手(北海道日本ハム) 出塁率.384 打率.282
7位:銀次選手(楽天)出塁率.3767 打率.309
8位:鈴木大地選手(千葉ロッテ)出塁率.3766 打率.299
9位:浅村栄斗選手(楽天)出塁率.371 打率.265
10位:茂木栄五郎選手(楽天)出塁率.370 打率.295

 四球率に続き、出塁率においても近藤選手がリーグトップに立っている。それに加えて吉田正選手、森選手、ブラッシュ選手、秋山選手、西川選手、浅村選手もランクインし、四球率でトップ10に入っていた選手7人が、こちらのランキングにおいても同じく上位に名を連ねている。

 そんな中で、四球率では下から10人に入っていた銀次選手と鈴木選手が、出塁率に題材を変えると一転してトップ10にランクインするところは興味深いポイントだ。また、四球率ではリーグ17位(.101)だった茂木選手も出塁率では高い数値を記録しており、リードオフマンとしての優れた資質を示している。

 出塁率は原理としては打率に四球と死球を上乗せするかたちで計算が行われるため、打率の高い打者が出塁率でも高い数値を残しがちだ。打撃好調の銀次選手、鈴木選手、茂木選手が優れた値を記録したのはそういった点も背景にありそうだが、それでも10人中7人が四球率の高い選手で占められているのもまた興味深いところだ。

四球率がリーグで一番低かった大田選手も、出塁率では……

 最後に、四球率の時と同様に、パ・リーグの規定打席到達者の中から出塁率が少ない順に10人を抽出したランキングも見ていきたい。

30位:内川聖一選手(福岡ソフトバンク)出塁率.299 打率.258
29位:松田宣浩選手(福岡ソフトバンク)出塁率.310 打率.265
28位:ウィーラー選手(楽天)出塁率.318 打率.239
27位:中村奨吾選手(千葉ロッテ)出塁率.321 打率.234
26位:金子侑司選手(埼玉西武)出塁率.326 打率.251
25位:大田泰示選手(北海道日本ハム)出塁率.328 打率.288
24位:栗山巧選手(埼玉西武)出塁率.3325 打率.245
22位:レアード選手(千葉ロッテ)出塁率.3333 打率.245
22位:中田翔選手(北海道日本ハム)出塁率.3333 打率.243
21位:源田壮亮選手(埼玉西武) 出塁率.335 打率.286

 大田選手は四球率のランキングでは最下位だったが、対象が出塁率になると25位まで順位を上げている。四球率で29位だった内川選手が入れ替わって30位となり、同28位だった松田選手も29位となっている。28位のウィーラー選手(四球率23位)、27位の中村選手(同21位)も四球率は高くなかったが、四球率はリーグ18位の.096だった金子侑選手と、同15位の.103だったレアード選手の2人が、出塁率ではやや順位を落としている。

 傾向としては、やはり打撃不振で打率が低い選手たちが、出塁率に関してもリーグ下位に位置しているケースが多くなっている。これに関しても出塁率が高い選手たちのケースと同様に、出塁率という数字が打率と密接に関係している以上は妥当な結果と言えるだろうか。

 しかし、トップ10に入った選手たちの場合とは異なり、四球率では上位10人以内に入っていた選手が、出塁率のランキングでは下から10人まで落ちる、といったケースは存在しなかった。当然ながら四球率の高さは出塁率にも直結してくるため、フォアボールを多く選んでいる選手は、四球が少ない選手よりもその働きが出塁率に反映されやすくなるということかもしれない。


 走者が塁に出ていなければ、本塁打を打たない限りはチームに点は入らない。四球を多く選べる選手は、それだけチームの得点率向上に貢献していると言えるだろう。打率や本塁打数に比べると取り上げられる機会は決して多くないものの、堅実に塁に出るタイプの選手が打席でどのように投手との駆け引きに勝ち、四球を選んでいるのかにも注目してみてはいかがだろうか。

記事提供:

パ・リーグ インサイト 望月遼太

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