埼玉西武の栗山巧選手が、「5番・指名打者」として出場した2019年8月31日の福岡ソフトバンク戦で通算1807本目となる安打を放ち、石毛宏典氏が保持していた球団の最多安打記録を更新した。ライオンズ一筋18年目を迎えたベテランが打ち立てた金字塔を記念して、栗山選手がこれまで放ってきたヒットの数々を、データの側面から振り返っていきたい。
全安打の1/3以上を、ひとつの打順が占める結果に
まずは、栗山選手が放った安打の内訳を、1番から9番までの打順ごとに見ていきたい。スタメン時打順別の安打数を記した図は下記の通りだ。
最多安打を獲得した2008年から4年間務めた2番打者としての数字が最多で、665本と実に全ヒットの1/3以上を稼ぎ出している。2番目に多いのが1番打者としての出場で、350本の安打を記録。それに僅差で続くのが335本のヒットを放った3番打者で、20代中盤から後半という脂の乗った時期に多くを過ごした打順が上位を占める結果となった。
上図のように、栗山選手は全ての打順で先発出場を経験している。しかし、4番打者としては8試合でわずか6安打と、打順別では最も少ない数字に。8番と9番でも10本ずつという結果だが、ベテランの域に差し掛かってから任されることが増えた5番、6番、7番では堅実にヒットを積み重ねており、若き日とはまた違ったかたちでチームに貢献し続けている。
年齢、あるいは役割によって打球方向も変化?
次に、栗山選手が安打を放った打球方向を見ていきたい。打球方向を記した図は下記の通りだ。
左翼473本、中堅508本、右翼464本と、引っ張りや流し打ちに偏ることなくヒットを打ち分けていることがわかる。左中間(99本)と右中間(108本)の安打数の差がわずか9本というのも特徴的だ。また、栗山選手は高い打撃技術に加えて一定以上の脚力も備えており、通算155本の内野安打も記録している。
年度別でも3方向にまんべんなく打ち分けているシーズンが多いが、144試合中94試合で2番を務めた2010年(左翼50本、中堅61本、右翼31本)と、1番が84試合、2番が48試合だった2011年(左翼55本、中堅42本、右翼38本)には、流し打ちの傾向が強くなっていた。
それに対して、2018年は左翼14本、中堅20本、右翼29本。2019年は左翼10本、中堅26本、右翼39本と、30代中盤から後半を迎え、5番や7番を任されることが増えたここ2年は引っ張りが増加。年齢面に加えて、与えられた役割の変化が打球方向にも表れている可能性はありそうだ。
ライオンズ一筋の栗山選手、ホーム球場との相性は?
最後に、球場別の打撃成績を見ていきたい。球場別の安打数を示した図は下記の通り。
本拠地・メットライフドームでは857試合で865安打と1試合で1安打を上回るペースでヒットを記録しており、通算打率も.290を上回っている。一つのチームで長年プレーし続けるにあたって、本拠地に強いことが安定してヒットを積み重ねていく上で重要なものとなったことは疑いようがないところだろう。
他球団の本拠地の中では楽天生命パーク宮城での成績が目を引く。メットライフドーム以外では球場別で最多となる151安打を記録。試合数(135試合)を大きく上回る数字を記録しており、とりわけ相性の良い球場と言えそうだ。また、2019年8月11日に通算100本塁打を達成した地でもあるZOZOマリンスタジアムでも多くのヒットを積み重ね、153試合で150本の安打を記録している。
そして、地方球場での成績が優れているのも栗山選手の持ち味の一つ。埼玉西武の試合が毎年3試合開催されている県営大宮球場では29試合で24安打と今一つだが、それ以外の地方球場では合計73試合で85安打と抜群の数字を記録。県営大宮を含めた地方開催試合を合計した安打数は100本を超えており、年に数回の野球観戦を心待ちにしているファンの印象に残る活躍を見せ続けている。
優れたバットコントロールと、幾度となく窮地を救った勝負強さで、長年にわたってチームを支えてきた生え抜き野手の偉業は、多くのファンにとっても感慨深いものとなったことだろう。ここからは栗山選手が放つヒットの一本一本が、球団記録を更新する安打となっていく。2008年と2018年のリーグ優勝にそれぞれ貢献した頼れるベテランは、これからもその打撃センスを武器にチームに貢献し続けてくれることだろう。
※データは2019年8月31日記録達成時時点のもの
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