今年6月まで現役メジャーの31歳キューバ人「とてもいいチャンス」
レギュラーシーズンは残すところ40試合あまり。ここから大きな巻き返しを狙う千葉ロッテが、シーズン中の大型補強に踏み切った。今年6月22日までメジャーでプレーしていた強肩俊足の外野手、レオニス・マーティンを獲得。戦力アップに加え、チーム内での競争や意識が活性化する効果が期待される。
7月26日の本拠地・楽天戦でNPBデビューを果たしたマーティンは、翌日には決勝2ランとなる初ホームランで勝利に貢献。さらに、同日夜のスポーツニュースを賑わせたのが、5回に魅せた強肩だ。2死二塁から守る右翼で打球を捕ると、そのままノーバウンドで本塁へ送球。二塁から一気に本塁を狙った渡邊佳明を刺した鬼肩は、本拠地ファンをどよめかせた。
2009年には、“赤い稲妻”の異名を執るキューバ代表選手として第2回WBCにも出場した31歳は、なぜNPB入りを選んだのか。メジャー9年で通算126盗塁、58本塁打、打率.244の成績を残したマーティンが、「Full-Count」の独占インタビューで新天地千葉ロッテで戦う意気込みを明かした。
――今季はメジャーで開幕を迎えましたが、今はここ日本で千葉ロッテのユニホームを着ています。こういう展開になると想像していましたか?
「全然していなかったよ(笑)。人生はどう転ぶか分からないね。でも、今は千葉ロッテの一員として戦えることを誇りに感じているよ」
――千葉ロッテと契約することになった経緯を教えて下さい。
「そもそも、いつかは日本でプレーしてみたいと思っていたんだ。キューバ人選手が何人もNPBでプレーしているように、キューバと日本の野球はとても縁が深いからね。もちろん、長くメジャーで活躍できるに越したことはないけれど、残念ながら6月下旬にインディアンスとは契約解除となってしまった。さぁ移籍先を考えよう、となった時、僕の代理人が『NPB球団にも声を掛けようと思うけど、どうかな?』と言うから、『もちろん!』って答えたんだよ。とてもいいチャンスだと思ったから。そこからトントン拍子に話が進んだんだ」
入団直後に披露した強肩が話題に「本当に?(笑) うれしいね!」
――NPBや千葉ロッテに関する情報は、事前に手に入れていましたか?
「福岡ソフトバンクにいるデスパイネやミランダとは、たまに連絡を取っていて、日本の野球について話を聞いたことはあったね。レンジャーズ時代には上原(浩治)、建山(義紀)、ダルビッシュ(有)とチームメートだったし、マリナーズでは岩隈(久志)ともプレーしたこともある。デスパイネに『もしかしたら日本でプレーすることになるかもしれない』と伝えた時には、少し驚いたみたいだけど喜んでくれたよ」
――昨年は7月31日タイガースからインディアンスにトレードされた直後、予期せぬ細菌感染症に罹り、入院生活を余儀なくされました。生命が脅かされる、文字通り“絶体絶命”のピンチから見事なカムバックでしたね。
「一時は命が危ないって言われたんだけど、何とかそれを乗り越えて、退院することができた。ドクターから運動していいという許可が出た後は、絶対にもう一度メジャーでプレーするんだって決意して、猛トレーニングを重ねたんだ。自分はやれるっていうことを証明できたと思う。今は身体に何の問題もなくプレーに集中できているよ」
――千葉ロッテでは、ここまで8試合に出場して3本塁打11打点1盗塁、打率.318の活躍です(8月5日現在)。早くも勝利に貢献しています。
「チームが強力なサポート体制を敷いてくれるおかげで、新しい環境にスムーズに順応できていると思う。チームメートも喜んで迎え入れてくれて、いろいろ手助けしてくれる。井口(資仁)監督をはじめコーチもよく声を掛けてくれるし、僕のやりやすいように調整させてもらっているんだ。ここまでホームランが3本出ているのはラッキーだけど(笑)、自分の長所はスピードと守備。勝利に貢献してファンを喜ばせたいね」
――ファンはすでに、その強肩の虜になっていると思いますよ。本塁への超ナイススローは何度もテレビで紹介されていました。
「本当に?(笑) うれしいね! 肩の強さは、間違いなく僕の武器。少しでも投手を助けるプレーができるように頑張るよ」
日本の猛暑もなんのその「キューバの方がもっと湿気があって重い暑さだった」
――千葉ロッテの熱狂的ファンが真後ろの右翼席から応援してくれています。
「初めて応援を体感した時は、その迫力にビックリしたよ! 思わず動画を撮ってしまったくらい(笑)。メジャーの応援と違って、日本の応援は大きなパッションを感じる。中でも千葉ロッテファンは“アツい”って聞いているから頼もしい限りだね」
――食事や言葉などの生活面も少しずつ落ち着いてきましたか?
「2010年に世界大学野球選手権に参加するため、キューバ代表として来日したことがあるんだ。長い滞在ではなかったけど、日本の社会や環境がどんな感じか知っていたので、ここまで問題なくできていると思う。ただ、もう少しで家族がアメリカに帰ってしまうので寂しくなるな……(笑)。とはいえ、シーズンは残り2か月もないから、チームがプレーオフに進出できるように全力を尽くすよ」
――来日早々、日本はキューバに負けない猛暑です。
「確かに暑いけど、テキサス(レンジャーズ本拠地)の猛暑も経験しているし、キューバの方がもっと湿気があって重い暑さだったんだ。ここ(ZOZOマリン)は夜になれば風が吹くから、まだまだ大丈夫(笑)。寒いより暑い方がいいからね」
――すっかり日本に馴染んでいるようで何よりです。さて、来年の話をするのは早いですが、長く千葉ロッテでプレーすることも視野に入れていますか?
「もちろん。今年、僕がどれだけチームに貢献できるかによるだろうけど、来年以降も選択肢の1つとして前向きに考えたいね。今は千葉ロッテがプレーオフに出場できるように、1つでも順位が上げられるように頑張ります!」
○レオニス・マーティン
1888年3月6日、キューバ生まれ
走攻守3拍子揃った外野手としてキューバ国内リーグで活躍し、2009年の第2回WBCにはキューバ代表入りを果たす。2010年に日本で開催された第5回世界大学野球選手権ではキューバ代表として優勝に貢献。その直後に亡命し、2011年に米レンジャーズと5年1500万ドル(約15億9900万円)の契約を結んだ。レンジャーズの正中堅手として活躍した後、マリナーズ、カブス、タイガース、インディアンスと渡り歩き、今年7月14日に千葉ロッテが獲得を発表した。
(佐藤直子 / Naoko Sato)
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