前シーズンの反省や、退団選手の穴埋めを念頭に行われるオフシーズンの補強に比べ、シーズン途中の補強はレギュラーシーズンを戦い続けるうえで浮き彫りとなった課題、もしくはケガ人のカバーといった、いわば不測の事態への緊急対応といった側面がより強いものとなってくる。
昨季は開幕前の駆け込みトレード(阪神・榎田大樹投手と埼玉西武・岡本洋介投手)に始まり、シーズン中のトレードも6件成立した。そして、今季は7件と昨季を上回るペースで開幕後のトレードが行われ、多くの選手が新天地での飛躍を期している最中だ。
前半戦が終わった今、あらためて昨季途中のトレードで移籍した選手たちの成績を確認してみると、新たなチームやリーグの環境により適応し、貴重な戦力として活躍している選手が存在することに気づかされる。そこで、今回はそれらの選手の現状について紹介していきたい。
(昨季の成績は移籍後のもののみを掲載。今季の成績は8月1日の試合終了時点)
福岡ソフトバンク:市川友也選手(←北海道日本ハム)
昨季成績:25試合 2本塁打 5打点 打率.167
今季成績:一軍出場なし
開幕直後に捕手陣に故障者が続出したことにより、緊急補強としてシーズン開幕直後に金銭トレードで移籍。新天地でも5月から7月初旬まで控え捕手としてチームを支えたが、8月4日の試合を最後に一軍での試合出場からは遠ざかった。今季もここまで二軍では打率.313と好成績を残しているが、まだ一軍での試合出場は果たせていない。
オリックス:白崎浩之選手(←横浜DeNA)
昨季成績:30試合 1本塁打 9打点 打率.239
今季成績:18試合 1本塁打 4打点 打率.212
白崎選手は移籍後に打撃で結果を残し、8月には12試合で打率.300と好調をアピール。8月12日には移籍後初本塁打を放って存在感を示したが、9月の再昇格後は7試合で打率.158と振るわず、最終的には年間打率も.239にとどまった。2019年は二軍で打率.281と一定の数字を記録しているものの、一軍では18試合で打率.212と確実性に課題を残している。
オリックス:高城俊人選手(←横浜DeNA)
昨季成績:一軍出場なし
今季成績:5試合 0本塁打 0打点 打率.182
高城選手は2018年の移籍後は一軍出場が1試合もなく、一軍メンバー入りを勝ち取った今春のキャンプでは初日に肉離れで離脱を強いられた。苦難を乗り越え、今季の5月に移籍後初出場を果たして5試合に出場したが、その後は再び二軍での調整が続いている。二軍でも打率.130と打撃面で結果を残せず、元中日・松井雅人選手の加入も向かい風か。
横浜DeNA:伊藤光選手(←オリックス)
昨季成績:47試合 1本塁打 11打点 打率.195
今季成績:76試合 8本塁打 27打点 打率.261
移籍直後からさっそく主力捕手の座を手中に収め、打撃面では苦しんだものの復活の足掛かりを掴んだ。今季は開幕から正捕手としてマスクを被っており、かつてベストナインに輝いた打棒も復活。キャリアハイ(5本:2017年)を更新する8本塁打を記録し、故障離脱を強いられるまで扇の要としてチームを引っ張っていた。
横浜DeNA・赤間謙投手(←オリックス)
昨季成績:一軍出場なし
今季成績:6試合 0勝0敗 防御率5.19
赤間投手は移籍後に二軍で12試合に登板し、防御率1.72と好投。しかし、一軍での登板機会は一度も訪れなかった。今季も二軍では24試合で1勝2セーブ、防御率1.11と引き続き安定感のある投球を続けており、一軍でも6試合に登板。そこでは結果を残せなかったが、今後も二軍で安定感のある投球を続けて再びチャンスを待ちたいところだ。
埼玉西武:小川龍也投手(←中日)
昨季成績:15試合 1勝0敗4ホールド 防御率1.59
今季成績:29試合 0勝1敗5ホールド1セーブ 防御率3.50
泣き所だったリリーフ陣の補強の一環としての期待に応え、復活を果たしてブルペンに厚みをもたらしてチームのリーグ優勝にも貢献。今季も開幕から奮闘していたが、直近4試合中3試合で失点を喫した6月21日の阪神戦を最後に、1カ月以上の二軍調整を余儀なくされた。とはいえ、今季も防御率3点台と一定の成績を残しており、貴重な左腕として活躍している。
福岡ソフトバンク:美間優槻選手(←広島)
昨季成績:一軍出場なし
今季成績:15試合 1本塁打 1打点 打率.091
2018年途中に、同じく若手の内野手である曽根選手とのトレードで福岡ソフトバンクに移籍したが、移籍後は一度も一軍出場を果たせなかった。2019年は二軍で好調を維持して一軍昇格の切符を勝ち取り、4月21日にはプロ入り初本塁打を記録。だが、15試合で打率.091と確実性に課題を残したこともあり、一軍定着には至っていない。
広島:曽根海成選手(←福岡ソフトバンク)
昨季成績:11試合 0本塁打2打点 打率.278
今季成績:47試合 0本塁打2打点 打率.190
移籍後は一軍で11試合に出場し、打率.278という成績を記録。古巣・福岡ソフトバンクとの日本シリーズにも出場し、2打席に立っていずれも犠打を決めた。今季は開幕から一軍に帯同し、代走・守備固めを中心に47試合に出場。5月3日の巨人戦では代走として好走塁を見せてお立ち台にも上がるなど、スーパーサブとして奮闘している。
千葉ロッテ:岡大海選手(←北海道日本ハム)
昨季成績:51試合 3本塁打13打点 打率.204
今季成績:63試合 3本塁打5打点 打率.206
荻野貴司選手のケガを受け、その代役として加入。28試合で打率.154と絶不調だった移籍前からやや成績を向上させたが、通年での打率は1割台にとどまった。それでも、年間12盗塁を決めた走力と広い守備範囲を活かしてチームに貢献すると、荻野貴選手が復帰した今季も、スタメン、代走、守備固めと幅広い起用に応え、多くの出場機会を得ている。
北海道日本ハム:藤岡貴裕投手(←千葉ロッテ)
昨季成績:4試合 0勝2敗 防御率6.52
今季成績:2試合 0勝0敗 防御率15.00
藤岡投手は移籍後の8月16日、古巣の千葉ロッテを相手に移籍後初登板初先発のマウンドに。しかし、この試合で4回1/3を5失点と“恩返し”は果たせず、中継ぎとしても結果を残せなかった。今季も2試合で防御率15.00と苦戦は続き、6月26日に鍵谷陽平投手とともに、吉川光夫投手、宇佐見真吾選手とのトレードで巨人へと移籍することになった。
福岡ソフトバンク:松田遼馬投手(←阪神)
昨季成績:2試合 0勝0敗 防御率6.00
今季成績:35試合 2勝1敗3ホールド 防御率2.68
松田遼投手は2018年途中に福岡ソフトバンクに移籍したものの、登板はわずか2試合と結果を残せず。だが、今季は開幕から多くの登板機会を得ると、13試合連続で無失点という快投を見せて首脳陣の期待に応える。その後も時にはイニング跨ぎも厭わずに登板を重ね、安定した投球でブルペンに厚みをもたらす存在となっている。
阪神:飯田優也投手(←福岡ソフトバンク)
昨季成績:1試合 0勝0敗 防御率12.00
今季成績:3試合 1勝0敗 防御率10.80
飯田投手は2018年は移籍後1試合に登板して防御率12.00、2019年はここまで3試合で防御率10.80と、かつては一軍でも2年続けて30試合以上に登板し、防御率3点台と実績を残した左腕としては不本意な結果が続いている。しかし、二軍では29試合で3勝2敗3セーブ、防御率2.67と好投を見せており、巻き返しの機会を伺っている最中だ。
このように、伊藤光選手、曽根海成選手、岡大海選手、松田遼馬投手といった面々が昨季よりも活躍の場を広げており、小川龍也投手も成績は落としながらも一定の活躍を見せていた。高城選手や藤岡選手のように移籍後は苦しんでいる選手もいるが、今季プロ初本塁打を放った25歳の美間優槻選手のように、将来性に期待できる選手も少なからず存在している。
必要とされて新たなチームへと向かうトレード移籍は、選手本人にとっても飛躍に向けた大きなチャンスとなりうる。移籍2年目の躍進を見せている選手たちと同様に、今季のシーズン途中移籍組も、今季、あるいは来季以降に新天地で貴重な戦力となる可能性は十分だ。
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