絶対的エース・千賀滉大投手を筆頭に、正捕手・甲斐拓也選手、大竹耕太郎投手など、数え切れないほどの選手が育成登録から一軍の中心選手へと羽ばたいていった福岡ソフトバンク。今季もその伝統は損なわれることなく、数多くの選手がファーム本拠地・タマスタ筑後でアピールを続けている。今回は、そんな中でも特に光り輝く3選手を紹介したい。

オスカー・コラス／外野手

　まず1人目は、キューバ生まれの20歳・コラス選手だ。2017年より育成選手として福岡ソフトバンクの一員となると、1年目は野手と投手の「二刀流」に挑戦した。ただ、昨季からは野手に専念してファームで55試合に出場。まだまだ粗削りな部分こそあったが、打率.212、7本塁打と成長の兆しは見せていた。

　日本球界3年目となる今季は開幕からアピールに成功。7月9日試合終了時点で49試合に出場、リーグ3位の打率.301を記録し、9本塁打を放って長打率も5割を超えるなど、持ち味のパンチ力も存分に発揮している。5月にはウエスタン・リーグの月間MVPを獲得し、翌6月には念願の支配下登録を勝ち取った。

　現在、福岡ソフトバンクの一軍ではデスパイネ選手・グラシアル選手・モイネロ投手・ミランダ投手の4人のキューバ出身選手が活躍を見せている。ただ、7月末ごろから主軸のグラシアル選手が母国の代表に参加するために帰国の予定。チームのピンチを救うべく、勢いに乗るコラス選手が一軍の舞台に立つ可能性は十分だ。

田城飛翔（たしろ・つばさ）／外野手

　2人目は、プロ3年目の育成・田城飛翔選手だ。八戸学院光星高校の主軸として高校3年生で出場した夏の甲子園では、バックスクリーンに本塁打を叩き込んだ。この活躍もあり、福岡ソフトバンクから育成5位指名を受けてプロの世界へ。1年目こそプロの壁にはじき返されたものの、昨季は実力の片鱗を見せ始めた。三軍でチーム最多の85試合に出場し、打率.281と非公式試合ながらも十分と言える結果を残した。

　主戦場をファームへとステップアップさせた今季は、7月9日の試合終了時点でチーム最多の68試合に出場し、主に5番打者として活躍を続けている。特に4月は猛烈な勢いで安打を重ね、驚異の月間打率.407を記録。文句なしで3・4月度の月間MVPを獲得した。以降はやや勢いを落としたものの、打率.318はリーグトップの好成績だ。

　三軍から駆け上がってきた田城選手にとって、いよいよ一軍の舞台を射程圏内に収めなくてはならない時が近づいている。今季は、共にファームで研鑽を積んできた周東佑京選手が支配下登録され、早くも結果を出した。田城選手も、現在の好成績からさらにもう一段階ギアを上げてもらいたい。

増田珠（ますだ・しゅう）／内野手

　最後は、将来の主軸候補筆頭・増田珠選手だ。横浜高校時代の活躍を知るファンは多いだろう。3年夏には神奈川県大会新記録の4試合連続本塁打を含む、計5本塁打の活躍で母校を甲子園に導いた。同世代には、北海道日本ハム・清宮幸太郎選手、千葉ロッテ・安田尚憲選手がおり、「高校ビッグ3」としての呼び声も高かった。

　プロ1年目の昨季は、三軍で田城選手に次ぐチーム2位の82試合に出場。打率.309と早くもスケールの違いを見せつけていた。今季はファームで66試合に出場し、打率.291、4本塁打（7月9日終了時点）と結果を残している。一方、守備では7失策とまだまだ発展途上な部分はある。しかしながら、一塁手、二塁手、三塁手、左翼手といったように複数のポジションを守り、日々自分の活躍の舞台を模索している。

　清宮選手、安田選手はそれぞれ一軍の舞台を経験。同世代ということで言えば、東京ヤクルト・村上宗隆選手が高卒2年目としては25年ぶりとなる20号本塁打も記録した。何かと話題に上がることが多い同世代の野手達。成長過程は十人十色であることは言うまでもないが、増田選手もライバルたちに負けてはいられない。

ファーム公式戦で「推し選手」発見の可能性も……？

　当然、期待できるのはここに挙げた3選手だけではない。ファームの試合は、「一軍へ行く！」というハングリー精神で満ち溢れている。調整中の主力選手をチェックする際には、合わせて新進気鋭の若手選手にも注目して欲しい。ある特定の分野で抜きん出た能力を持つ選手や、自分好みのプレイスタイルを持った選手に気づくことがあるかもしれない。そうした経験を積み重ね、自分の「推し選手」を密かにつくってみる。すると、その選手が一軍で輝きを放った時、何とも言えないような感慨深い気持ちになること間違いなしだ。

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文・吉田貴