3月4日、埼玉西武と広島のオープン戦。そこで埼玉西武の3番手として登板し、広島打線を完璧に抑えて1点リードを守り抜いた伊藤翔投手。彼は2017年ドラフト3位ルーキーで、まだ19歳だ。ただ、高卒ルーキーではない。現在に至るまでのその経歴は少し変わっている。
高卒で独立リーグを選択。そしてわずか1年でたどり着いた大舞台
千葉県の横芝敬愛高校で活躍した伊藤投手は、高卒でのプロ入りを志望したものの指名漏れとなり、四国アイランドリーグplusの徳島インディゴソックスに入団。独立リーグを自ら希望する高校生はめずらしいが、伊藤投手はわずか1年でその選択の正しさを証明してみせた。
高卒1年目から先発ローテーションを守り抜き、16試合でリーグ2位タイの8勝、防御率も同3位の2.18を記録する。年間総合優勝を懸けたチャンピオンシップでは、先発した2試合をいずれも完投し、うち1試合で完封勝利を決めている。
チャンピオンシップ、グランドチャンピオンシップでともにMVPに選出され、年間MVPにも輝くと、この活躍は当然NPB界隈にも届き、2017年ドラフトで埼玉西武から3位指名。昨秋の失意を過去のものとし、わずか1年でNPBの舞台まで駆け上がってきた。
徳島から所沢へ。19歳のルーキーイヤーが楽しみでならない
伊藤投手の持ち味は、最速152キロの直球と切れ味抜群のスライダーだ。リラックスした表情はまだ高校を卒業したばかりの少年のあどけなさを残しているが、進んで課題と向き合い、試行錯誤を繰り返す意識の高さも評価を得ている。
キャンプでは、初日からブルペンで投球練習に励み、仕上がりの早さを見せた。終始「緊張した」と語っていたが、いざマウンドに上がるとそれを感じさせないほど堂々と振る舞う。大舞台で結果を出し続けてきた強心臓が、年齢不相応なマウンドさばきを支えている。
昨季、信濃グランセローズを破って独立リーグ日本一に輝いた徳島インディゴソックス。在籍していたのは短い期間だったとはいえ、伊藤投手はその原動力として、確かにチームに大きなものをもたらした。
埼玉西武への入団会見で「辻監督を日本一の監督にしたいと思います」と語った伊藤投手は、近い将来、徳島に続いて所沢にも栄冠をもたらす存在となれるだけの素質を秘めているはずだ。
同会見で、「投げっぷりの良さがセールスポイントです。開幕一軍を今の一番の目標としてがんばっていきたいと思います」と語った通り、現在は開幕一軍に向けてアピールを続けている最中。ハングリー精神あふれる快速右腕は、これからも自らの力と強い意志でもって、夢への道を頼もしく切り開いていくことだろう。
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