“スタジアムで現金は使えません” 楽天生命パーク宮城はボールパークの理想形となるか

パ・リーグ インサイト

2019.4.18(木) 14:25

キャッシュレスでの支払いの様子(C)PLM
キャッシュレスでの支払いの様子(C)PLM

利用者からは好評。ポイントは「日常からキャッシュレスに慣れているか」

 東北楽天ゴールデンイーグルスが、楽天生命パーク宮城で今季から始めた「キャッシュレススタジアム」。昨年まで、現金での支払いが7割だったスタジアムでの購買が、全面現金使用不可、楽天Edy、または楽天ペイ、クレジットカード・デビットカードに限り使用ができるようになったというのは、過去の2回の記事でお伝えしてきた。

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 4月2日、雪が降る中での本拠地開幕戦となった楽天イーグルス対北海道日本ハム戦は、まさにこの「キャッシュレススタジアム」の幕開けでもあった。満員御礼となったこの日は、浅村栄斗選手の移籍後初ホームランを含む、3対1で楽天イーグルスの勝利にスタジアムは大いに沸いた。

 さて、試合開始4時間前の12:00。そんな試合展開になるとまだ知らないお客さんにとっては、初めての「キャッシュレススタジアム」体験である。賑わいを見せてきた場内では“キャッシュレス”“×現金”と描かれたポスター、看板を体の前後で挟んだ「サンドウィッチマン」が目立ち、常時アナウンスもされ、現金が使えないという周知は万全といった具合だ。さらに、楽天Edyのチャージ機を場内のいたるところに約100台設置し、「サンドウィッチマン」や球場スタッフは、残高確認リーダーを手にし、残高切れを未然に防ぐために声を張っていた。

「楽天キャッシュレスデスク」の様子(C)PLM
「楽天キャッシュレスデスク」の様子(C)PLM

 また、「楽天キャッシュレスデスク」は、電子マネーに関する利用者の質問や問い合わせに答える窓口として機能。あらゆる状況を想定していることがうかがえる。

 飲食店の店員は念入りに準備を進めてきたことをアピール。
「スタッフ全員が研修を行いこの日に備えてきました。お客様をレジでお待たせることがないのが良い点だと思います」。締めの作業で現金を扱わないことも利点なのだという。ビールの売り子も細かい小銭を扱わなくて済み、利用者側としてもビールを飲むたびに小銭が増えていく……ということがなくなるのは嬉しい。

アプリ決済の楽天ペイは、店員が支払い画面を確認する。(C)PLM
アプリ決済の楽天ペイは、店員が支払い画面を確認する。(C)PLM

 利用者の反応は概ね好評だった。年に15回以上は楽天生命パーク宮城での観戦を楽しんでいるという夫婦は、アプリ決済の楽天ペイに初挑戦。
「これまでは現金で払っていましたが、キャッシュレスに切り替わったことで特段不便とは思いません。むしろ、ついに! と思いました。これからは球場もキャッシュレスが普通になるんだろうなと思いました。(他の球場でも取り入れる流れは来る?)それは間違いなく来ると思います」

 この日ファンクラブ「TEAM EAGLES」に入会した親子も、入会金の支払いに楽天ペイを利用。
「母と祖父母と来たのですが、祖父母は少し戸惑っていたようでした。でも、慣れれば大丈夫そうです」と20代女性が話すと、「携帯をかざすだけ。現金を持たなくてもいいのはいいですね。何よりも決済が早くて待たないのがいいです」とお母様も気に入った様子だった。
 
 お子さんと友人と来場していた20代の女性は、楽天Edyを利用。飲食とICカード入れを購入していた。「これを機にと思って、岸孝之投手の光るICパスケースを買いました。買うまでの流れがスムーズでしたね」
チームショップの担当者に、キャッシュレスに伴う関連商品の売れ行きについてうかがうと、開幕戦から発売のもの含め、カードホルダーなどのアクセサリーはよく売れていて、一部の選手の商品は売り切れになるほど好評だったという。

 中学生の姪と観戦に来ていた60代の男性。二人ともカードホルダーを首から下げており、「TEAM EAGLES」の会員証と楽天Edyカードをセットで持ち歩く姿は、多くの楽天イーグルスファンに見られた。

この日の来場者プレゼントだった15周年記念デザイン楽天Edyをカードホルダーに入れて持つ10代の女性(右)。(C)PLM
この日の来場者プレゼントだった15周年記念デザイン楽天Edyをカードホルダーに入れて持つ10代の女性(右)。(C)PLM

 ビジター側である北海道日本ハムファンはどう感じていたのだろうか。札幌市から応援に駆けつけた40代の日本ハムファンの男性は、「Edyはずっとコンビニなどでも使っていたから抵抗はありませんでしたね。(現金が全面的に使用不可と聞いて)特に困ったことはありませんでした」と話した。

楽天Edyにチャージする人々の様子(C)PLM
楽天Edyにチャージする人々の様子(C)PLM

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 楽天野球団経営企画室の江副翠氏は、先のJリーグ・ヴィッセル神戸の開幕戦(ノエビアスタジアム)で行われたキャッシュレススタジアムの実証実験を踏まえて、改善した点が2つあったのだと話す。

「ヴィッセル神戸戦でのフィードバックを受けて、サンドウィッチマンの人数を増やし、周知を徹底しました。そして、スタッフ教育の時間を増やしました。速やかに会計を済ませ、待機する人を減らすことがキャッシュレス化の目的のひとつでもあるので、スタッフのスムーズな応対の重要さをあらためて感じ、スケジュールを組み直してスタッフ向けの研修に充てました。例えば、決済端末の操作方法から、レジで現金を持ってレジまでいらしたお客様にどのような対応をするか、などです」

楽天生命パーク宮城はボールパークの理想形となるか(C)PLM
楽天生命パーク宮城はボールパークの理想形となるか(C)PLM

「サンドウィッチマン」などによる周知徹底やEdyカードプレゼントといった施策、サポートデスクの設置などの甲斐あって、開幕戦では、現金使用不可に対する大きなトラブルは発生しなかったのだという。

 行動・購買データの活用方法や、ファンがよりメリットを感じられるようなキャンペーンの検討、ネットワーク障害が発生したときの対応など、ユーザーが増えるにつれて見えてくる課題もあると予想されるが、老若男女、ホーム・ビジターのファン、誰が訪れても安心して使用できるキャッシュレススタジアムになっていくことを願いたい。そして、キャッシュレスの波が押し寄せている昨今にあって、スタジアムのキャッシュレス化は、12球団で当然の光景になる日もそう遠いことではないのかもしれない。

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